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7月からは手数料の完全無償化

最大手「CAMPFIRE」が取り組んだ、コロナ禍のサポートプログラム

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コロナ禍により、店舗やイベント関係者が打撃を受ける中、それらの“支援”としてクラウドファンディングが注目を浴びた。代表的な存在の1つが「CAMPFIRE」だろう。国内最大のクラウドファンディングとして知られるが、コロナ以降は支援額が大きく増加し、20年5月は前年同月比5.9倍の40億円に。さらに注目を集めることとなった。

この気運を後押ししたのが、同社で2月末からスタートした「新型コロナウイルスサポートプログラム」。コロナの影響で経営に大きな支障をきたした事業者に対し、サービス手数料を12%→0%へ。プログラムは当初の予定から大幅に延長され、7月以降は決済手数料も5%→0%となった(総額最大3億円まで適用)。こちらは、KDDI社の協力によるという。※7/31でエントリー受付終了

こういった動きの中で、CAMPFIREではどんな支援が生まれたのか。また、コロナ以降において、クラウドファンディングはどんな存在となっていくのか。CAMPFIRE事業責任者の篠原陽子氏に聞いた。

総支援額70億円。1日100近い申し込みも……

新型コロナウイルスサポートプログラムは、2月末から始まり、7月末時点で約3000件のプロジェクト、61万人以上の支援者が関わり、総支援額は70億円にのぼった。まだ掲載されていないプロジェクトを含めると、エントリー総数は5700件ほどになるという。

多くの反響が出たこのプログラムは、どう生まれたのだろうか。篠原氏がその経緯を振り返る。

「1月中旬からSNSなどで、お店やアーティストの支援を希望する声が多くなりました。社内でも、CAMPFIREによって『支援したい』という意見が増加。2月に入ると、営業自粛やイベント中止が相次いだ様子を見た瞬間に『やろう』と決めてスタートしました」

もともとCAMPFIREは、アーティストやアートなど「ポップカルチャーの利用者が多かった」と言う。そうした人たちが真っ先に打撃を受ける中、少しでも力になればと始めた試みだった。

当初は3月末までの予定だったが、むしろそこから感染は拡大。同プログラムも延長した。プロジェクトの応募は殺到し、特に緊急事態宣言後は、1日の応募数が20件から100件ペースへと増えた。

7月以降も再延長に踏み切り、ここからはKDDIの協力で決済手数料も0%に。篠原氏は「手数料の“完全無償化”を実現できたことで、新しい資金調達の方法としてさらに広がってほしい」と話す。

「サポートプログラムの開始以降、多数の応募をいただく中で、スピード感をもって支援できた点は良かったと思っています。また、総数は増えたものの、各プロジェクトに担当者をつける姿勢は変えず、きめ細かなサポートを一貫してきました」

CAMPFIREによれば、クラウドファンディングの認知度は全体の7割ほどとのことだが、資金調達の経験者は「6%あまり」と篠原氏。全体で見ればまだまだ少ない。しかしコロナ禍においては、確実に裾野が広がっている。なかには、インターネットに詳しくない老舗の店主に対し、地域の人が申し込みを手伝うケースも多いという。

先払いチケットに地域一丸の取り組み。コロナ禍でのプロジェクト

具体的に、どのようなプログラムがこの期間で生まれたのだろうか。4月頃は休業やイベント中止に対する補填のプログラムが多かったが、それ以降は新しい流れが出ている。

「象徴的なのは、先払い型のチケットです。たとえば北九州市では『夏に行く券』として、8~11月に北九州市の参加店舗で使えるチケットを販売。好評につき2回行われ、トータル1億4500万円以上の支援額となりました」

コロナが落ち着いた頃、このチケットを手に来てもらう。そのスタイルが受けており、1人1万円ほど支援するケースも多かったという。

そのほか、地域の事業者が力を合わせたプログラムも出ている。「♯おうちで飛騨牛」は、JAひだが主体となった取り組み。ブランド和牛の飛騨牛も、外食市場や観光業の縮小で厳しい状況にある。大切に育てた飛騨牛の“行き場がない”という事態からこのプロジェクトが生まれた。JAひだと、同地域の精肉店および約60の畜産農家が参加しており、1億円以上の支援が集まった。

そのほか、CAMPFIREとして新しい取り組みとなったのが、ヘアサロン支援プログラム「こんどきってね」だ。

「コロナの影響で経営に支障をきたしたヘアサロンが、同じく先払いチケットの支援プロジェクトを立てられるのですが、特徴的なのは、協賛企業により、調達額に上乗せ支援(調達金額の10%、100万円まで)が加わることです」

企業が横断スポンサーとなり、特定業種のプロジェクトを支援する枠組みは「これまで少なかった」とのこと。今後も「同様の形が他業種で広がるといい」と話す。さらにこの取り組みでは、雑誌『ar』や『WWD BEAUTY』も参加。まさに業界全体が一丸となった形だ。

繰り返しにはなるが、この機会に初めてクラウドファンディングに触れた人は多いだろう。新しい支援の形、その意義に気づいた人も少なくないはずだ。

篠原氏は、この方法が広まることで「お金の価値観も変わっていくのでは」と言う。

「今までは、お金を支払い、対価として何かをもらうのが一般的でした。クラウドファンディングは、対価以上に応援や期待の意味を込めてお金を支払っています。もしこの市場が広がれば、結果的にお金の価値観が変わっていくのではないでしょうか。支援としてのお金がもっと流れる社会になると思います」

コロナ禍により、クラウドファンディングの意義は明確になった。この動きが浸透すると、お金の使い方、存在意義も更新されていくかもしれない。CAMPFIREが広げたクラウドファンディングの裾野は、お金の価値観が転換していく前線でもある。

(取材・文/有井太郎)

※記事の内容は2020年8月現在の情報です

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