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90日で100万人を突破

PayPayで疑似投資を体験できる「ボーナス運用」

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決済アプリ「PayPay」に、今年4月から新しいサービスが追加された。「ボーナス運用」である。

近年増えているポイント運用のサービスで、PayPayの特典やキャンペーンで付与されるポイント「PayPayボーナス」を、実際の投資さながらに運用できる。結果次第ではポイントを増やすことも可能。サービス開始(2020年4月15日)から90日で運用者数100万人を突破した話題の新サービスだ。

提供・開発したのは、フィンテックベンチャーのOne Tap BUY(※今秋以降PayPay証券へ商号変更予定)。同社は、1000円から株式を買えるアプリを2016年にローンチ。長くサービス提供・運用してきた。従来の株式投資では、金額指定(1000円単位)の少額取引は難しかったが、それをテクノロジーで実現。今でこそ少額投資アプリが増えているが、まさにその流れを作った先駆者と言える。

実はボーナス運用にも、同社が培ってきた“少額投資の技術”が生かされているという。開発に携わったOne Tap BUYのマーケティング部門に所属する松葉俊二氏、鈴木将平氏に聞いた。

1円単位での運用こそ、One Tap BUYの真骨頂

PayPayボーナスは、特典やキャンペーンで付与されるポイント。「円」単位で表されるように、実際の決済にも使える。そして、このポイントで投資を疑似体験できるのがボーナス運用だ。

手順としては、保有するボーナスを2種類の運用コースから選んで運用する。コースは、値上がり・値下がりが大きいチャレンジコース(短期運用向け)と、大きな変動の少ないスタンダードコース(長期運用向け)。なおチャレンジコースは、アメリカを代表する複数企業の株価に連動しているが、実際の株価の3倍変動する。変化が起きやすく「短いスパンで結果を求める人に向いている」(松葉氏)とのこと。現状は「チャレンジコースを選ぶ人が多い」と言う。

大きな特徴は、1円から運用できること。同社のサービスに似た設計のポイント運用サービスは各種あるが、1ポイント単位で運用 できるものは少ない。また、運用成績もリアルタイムで更新され、24時間いつでも運用ポイントを追加したり、反対に運用額を引き出す(交換)ことができる。

1円からの取引、そしてリアルタイムでの即時取引は、まさにこのサービスの“こだわり”でもある。

「ユーザーの中には、数百円の少額でPayPayボーナスを保有されている方がたくさんいます。だからこそ、1円単位で運用 を行えることが重要でした。また、あくまで投資の疑似体験サービスなので、たとえわずか数円の値上がりでも、その瞬間に引き出せる体験を実現したいと考えていました。それがリアルタイム性、即時取引につながっています」(鈴木氏)

1円単位の取引は「One Tap BUYのサービスで培った技術があったからこそ実現できた」と松葉氏は説明する。

「One Tap BUYは、ある銘柄を1株・2株といった“株数単位”で購入するのではなく、1000円分・2000円分という“金額単位”で購入できます。すべての株を1000円単位で買うということは、1000円で割り切れない“1株未満”の株を保有・管理することを意味します。その技術を今回のサービスに応用できたからこそ、1円単位の取引が可能になりました」

たとえば1株2000円の銘柄を1000円分購入する場合、0.5株買うことになる。One Tap BUYは金額を基準に購入するからこそ、こういった1株未満の取引が当たり前に発生している。複雑な管理ができる同社のシステムにより、今回のサービスでも1円単位での少額取引を行えるのだ。

フィンテックの役割は「お金という“血液”の循環を良くすること」

このサービスが生まれた背景には、PayPayの掲げる「スーパーアプリ」構想も関連している。スーパーアプリとは、1つのアプリに生活で必要なさまざまなサービス・機能を備えたもの。中国の「WeChat」や「Alipay」、シンガポールの「Grab」などがその代表だ。

PayPayも多機能化を進めており、「PayPayフリマ」や「PayPayモール」といったショッピング機能、DiDiと連携してのタクシー配車機能などが付加されている。金融・投資分野のサービスも強化していくと発表しており、そのひとつとして“ポイント運用”が入ったのだろう。

「One Tap BUYとしても、創業から『投資のハードルを下げる』という目的を持ってここまで来ました。今回のサービスは、その目的に合致したものと言えます。加えて、キャッシュレス決済が普及し、社会的にもポイントの価値は高まりました。PayPayと私たちの思想、そして社会の動向という3つが合致して今回のサービスになったと思います」(松葉氏)

ちなみに、One Tap BUYはソフトバンクの子会社でもあった。その関係性も、当然ながらこの座組みが生まれた理由として大きいだろう。さらに同社は、今後ソフトバンクとみずほ証券の共同経営体制に移行するとともに、「PayPay証券」へと商号を変更する予定である。金融・投資分野でどのような動きを起こすのか、ますます楽しみだ。

冒頭で述べた通り、ボーナス運用は100万運用者を突破した。鈴木氏は「うれしい結果ではありますが、一方でまだ伸び代もあると思います」と話す。これをきっかけに、コース追加や個別企業への投資を望む声が上がるなど「投資に興味を持つようなサービスにしたい」と意気込む。

松葉氏も、投資のスタートアップ企業として自分たちが目指す役割を口にする。

「弊社代表の内山昌秋がよく口にする言葉ですが、お金やそれに代わるポイントは、金融における『血液』であり、証券会社や銀行は『血管』です。私たちフィンテック企業は、血液を循環良く回すのが役割。新しいテクノロジーやサービスで、そのフロントランナーとなっていきたいですね」

着々と利用者が増えるボーナス運用。決済アプリからスーパーアプリへ、PayPayが変化する中で、このサービスはどう成長していくのか。投資の世界に風穴をあける可能性も期待できる。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2020年8月の情報です

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