100万円不正利用されても支払わなくて済むらしい…?
知っておきたいクレジットカード“不正利用”時の対処法
6月まで行われていた「キャッシュレス・ポイント還元」や9月から始まる「マイナポイント」を受け、キャッシュレス決済を使い始めている人も多いだろう。
決済方法の1つであるクレジットカードは、利用頻度が高くなれば不正利用されるリスクも上がるのではないかと、不安を感じている人もいるかもしれない。そこで、万が一不正利用された場合の対処法を、ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんに教えてもらった。
クレカそのものを盗まれたら「カード会社」「警察」に連絡
「クレジットカードの不正利用は、大きく2つに分けられます。1つは、カードそのものが盗まれるケース。もう1つは、カードの情報だけが盗まれるケースです」(川部さん・以下同)
川部さんはかつて、クレジットカード自体を盗まれた経験があるそう。
「車の中にバッグを置いたまま駐車場にとめて、その場を一瞬離れたんです。その間に車上荒らしにあって、バッグごと盗まれたことがありました。すぐにクレジットカード会社に連絡したのですが、既にクレジットカードは使われていたんです」
犯人は川部さんのクレジットカードを使い、高速道路に乗っていたことがわかった。高速道路料金は、サイン不要でクレジットカード払いができることを、犯人はわかっていたのだろう。この料金は、川部さんが支払わなければいけなかったのだろうか。
「カードが盗まれて、まずするべきことは、カード会社と警察への連絡です。盗まれたことに気づいたらすぐに電話し、カード会社にはクレジットカードの利用を止めてもらいましょう。そして、警察に被害届を出します。早い段階でこの過程を踏むことで、不正利用分のお金を支払わずに済みます」
川部さんもすぐに連絡し、不正利用が発覚したため、高速道路料金は支払わずに済んだという。
「クレジットカードは、不正利用発生時の補償があります。カード会社に連絡し、不正利用されたことが証明できれば、いくら使われていたとしても支払いは発生しません。盗まれた場合に取り戻すことが困難な現金よりも、安心といえるかもしれませんね」
不正利用をカード会社が知らせてくれることも
ネットショッピングが当たり前のものになった今、カードそのものよりも情報が盗まれるケースの方が多いような気がする。
「フィッシング詐欺や架空のショッピングサイトの利用に気をつけて、情報を盗まれないようにすることが大前提です。ただし、気をつけていても情報が盗まれてしまうことはあります。以前、コンビニで他人のクレジットカードを見た犯人が、番号を暗記して不正利用したという事件がありました。このケースだと、防ぎようがないですよね」
では、知らないうちに情報だけを盗まれた場合、不正利用を防ぐ手段はないのだろうか。
「あまりにもイレギュラーな利用が発覚した場合は、カード会社から電話で連絡が来ます。例えば、『毎月の支払いは10万円程度なのですが、昨晩海外で50万円使われています。不正利用ではないですか?』といった連絡のようです。身に覚えのない利用であれば、その場でカードを停止し、不正利用分も補償されます」
カード会社から連絡が来るのであれば、そこまで心配する必要はなさそうだが、なかにはカード会社も気づかないケースがあるという。
「小さな金額での不正利用だと、カード会社も気づかないことがあります。知らず知らずのうちにクレジットカードが使われていることを避けるため、カード会社のホームページやアプリなどで、マメに利用履歴をチェックするクセをつけましょう」
履歴を頻繁にチェックすることで、不正利用があった場合に気づきやすくなる。記憶にない利用履歴を見つけた際には、カード会社に連絡しよう。
「『この支払いは、どこで使ったものでしょうか?』と聞けば、利用した店舗や購入したものについて教えてくれます。不正利用であれば、その場で支払いを止めてくれることもありますし、被害届が必要になることもあります。補償してもらえるかは、カード会社に聞いてみましょう」
「暗証番号=誕生日」は補償の対象外!?
カードそのものの盗難にせよ、情報の流出にせよ、不正利用時に補償されることに違いはない。ただし、例外もあるようだ。
「カード保有者自身に過失があった場合、補償されないケースもあるようです。例えば、カードの裏面に名前を書いていないと、盗んだ人が署名できてしまうため、過失とみなされやすいようです。また、暗証番号を誕生日などに設定しているのもNG。財布を盗まれて、その中にクレジットカードと免許証が入っていれば、暗証番号を解かれやすくなってしまうからです」
補償期間を過ぎていた場合、補償されないこともある。一般的に、補償期間は盗難や不正利用から60日以内。早めの動き出しが肝心といえそうだ。
「家族や恋人にこっそり使われていたという事例もあるようですが、補償されない可能性があります。身内であっても、クレジットカードを預けたり暗証番号を教えたりすることは、避けた方がいいかもしれません」
基本的には、不正利用があったとしても補償されるクレジットカード。日頃からできる対策をしつつ、いざという時のためにカード会社の電話番号はスマホなどにメモしておこう。
(有竹亮介/verb)
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川部紀子
FP・社労士事務所川部商店代表、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。日本生命保険相互会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・プランニングに携わる。2004年、30歳の時に起業。個人レクチャー・講演の受講者は3万人を超えた。著書に『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる! お金の貯め方・増やし方』など。