「投資」だけじゃなく「転職」にも役立つって本当!?
経済ニュースでよく目にする「経済指標」ってなに?
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新聞や投資情報誌、ネットニュースなどで見かける「経済指標」。経済に影響を与えるデータであることはわかるものの、その内容や数値が表す意味を理解している人は少ないかもしれない。
投資に役立つ「経済指標」について、第一生命経済研究所 首席エコノミストの永濱利廣さんに聞いた。
お金の動きを数値化したデータ「経済指標」
「『経済指標』とは、内閣府や各省庁、日銀などの公的機関が公表しているデータのことで、世の中のお金や財産の動きを表したものです」(永濱さん・以下同)
「経済指標」とは1つのデータではなく、「GDP」「景気動向指数」「日銀短観」など、さまざまなデータの総称。そのなかに出てくる指数は、実測データもしくはアンケート調査をもとに算出し、導き出されている。
「生産量や売上などの実測データをまとめた指数は『ハードデータ』と呼ばれ、基本的にこれまでの経済活動の結果を見るもの。一方、経営者や労働者に『今の景気はどう感じますか?』といったアンケート調査を行って導き出す指数が『ソフトデータ』で、先行きを読む材料となるものが多いのです」
集計方法に加え、調査対象も多様なため、さまざまなデータが存在する。ところで、「経済指標」は、なぜ調査・発表されるのだろうか。
「国には、国民の生活を安定させ、豊かにしていくという使命があります。そのため、経済状況を一刻も早く把握しないといけません。国内の経済に関係する数値やマインドを調べ、政策対応の参考にし、裏づけとして公表しているのです」
「経済指標」は国の政策だけでなく、個人の投資にも生かせるとのこと。
「投資において、経済動向を知ることは必須。そのために有効活用できるのです。さらにいえば、投資は経済が動く前に行動することが肝心で、『経済指標』を予測していくことも非常に重要。機関投資家や資産運用会社も予測しながら動いていて、発表されたデータが予測から外れると、マーケットが動くという仕組みです。投資をするなら、『経済指標』は押さえるべきでしょう」
さまざまな指標を見て総合的に判断する“景気”
「経済指標」のなかには「景気動向指数」「景気ウォッチャー調査」などがあるが、“景気”とはどのように算出されているのだろうか。
「そもそも景気とは経済活動の状態を表す言葉で、経済はヒト・モノ・カネの3つの要素で形成されるものです。『景気がいい』といわれる状態は、ヒト・モノ・カネが活発に動いている時で、企業の業績が伸びやすく、株価も上がりやすい。『景気が悪い』という状態は、ヒト・モノ・カネの動きが停滞し、業績が悪くなるので、株価も下がりやすくなります」
「ヒト・モノ・カネ」は、それぞれに異なる動きをして、活動の度合いが必ずしも比例するわけではない。また、その動きの全体像は容易につかめるものではないため、さまざまなデータを見ていく必要があるという。
「景気とは、いろいろなデータを総合的に見て算出されるものなので、『このデータさえ見ておけばいい』というものではありません。『景気動向指数』は一定の基準になっていますが、ほかのデータも含めて総合的に判断し、この先の景気を見ていくので、エコノミストによって見通しが異なるのです」
「経済指標」は景気だけでなく、経済政策の先読みにも活用できる。
「先述したように、政府は『経済指標』を参考にして、政策を決めていきます。つまり、『経済指標』を把握していれば、政府や日銀がどう動くかも見えてくるのです。例えば、日銀がインフレ目標2%を掲げ、実際に物価が2%上昇したら、金融引き締めに動く可能性が高く、金利が上がることが予測できます。逆に物価が下がれば、金融緩和の流れになるだろうと先読みできるのです」
「経済指標」は住宅購入・就職活動にも役立つ!
「経済指標」を用いた先読みを、日常生活で生かすことはできるのだろうか。
「住宅の購入を検討しているのであれば、『経済指標』はチェックしておきたいところです。金利の水準や地価のデータ、物価の変動などを追うことで、買い時がわかるかもしれません。就職や転職の際にも活用できます。『日銀短観』を見ると、各企業の事業計画や採用計画が出ているので、伸びている業界、採用数を増やしている企業などが見えてきます」
「景気ウォッチャー調査」を見ると、好調な業界が把握できるとのこと。業績が伸びている業界に就職・転職できれば、収入アップにつながる可能性が高いといえるだろう。
「最初に話したように、『経済指標』は投資においても重要なツールです。最近は企業型確定拠出年金などで、社員自ら運用する形式をとっている企業もあります。投資内容は自分で決めなければいけないので、『経済指標』を参考に判断していくと、効率的に運用していけると思います」
「経済指標」は各省庁のホームページなどで閲覧できるが、もっと身近なところからも収集できる。
「新聞の経済面や投資情報誌、投資関連のニュースサイトには、世の中で重視されている『経済指標』が必ず出てきます。まずは、それらのデータを追いかけるところから始めると、データの見方に慣れるでしょう。重要な指標でイレギュラーな数字が出ると、株価や為替、金利が動くということもわかってくるはずです」
経済動向を知るうえで重要な「経済指標」。まずは、新聞やニュースサイトで出てきた指標や数値をチェックし、その意味を調べるところから始めてみてはいかがだろうか。
(有竹亮介/verb)
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永濱利廣
第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト。1995年4月に第一生命保険に入社し、1998年4月に日本経済研究センターに出向。2000年4月より第一生命経済研究所経済調査部に所属し、2016年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師なども務める。著書に『経済指標はこう読む』『エコノミストが教える経済指標の本当の使い方』など多数。