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海外での人材獲得に必要?

導入企業が増える株式報酬。そのサポート役である「Global Shares」とは

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会社からもらう“報酬”といえば「現金」が一般的だが、必ずしもそれだけではない。世の中には「株式報酬」という形で、自社の株を報酬にもらう制度もある。

あまり馴染みがない人も多いかもしれないが、海外企業ではメジャーな報酬手段となっている。日本でも株式報酬を導入する企業は増えており、Zホールディングス(ヤフー)や楽天が近年取り入れたことでも話題になった。

そんな株式報酬を企業が取り入れる際、役員や従業員に株を譲渡したり、その手続きを行ったりするシステムが必要。それらのサービスを提供しているのが、アイルランドに本社を置くGlobal Sharesだ。

2005年設立のフィンテック企業だが、特筆すべきは世界100カ国以上で業務展開していること。グローバル化が進む現代は、多くの企業が自国以外に子会社や支社を持つようになった。そんな中、海外の従業員に株式報酬を支払うにはさまざまなハードルがあるが、同社のサービスはそれを解決しているという。

何より面白いのは、同社の国境を超えて株式報酬を助ける仕組みが「グローバル時代の企業にとって、人材確保の重要な手立てになっている」ということ。一体どういう意味なのか。そもそも、株式報酬を導入する企業が増えているのはなぜなのか。Global Sharesのジョン・ミーハン氏に取材した。

株式報酬によって、企業の成長が従業員の「利益」になる

冒頭で述べたように、日本で株式報酬を導入する企業は増えている。しかし、なぜ現金ではなく株式を報酬とするのだろうか。そのメリットについて、ミーハン氏はこう解説する。

「株式報酬のメリットは、従業員と会社がともに成長を共有できることです。従業員が会社に貢献し、事業や業績が良くなれば、株価は上がります。その際、自社株を持っていれば、企業の成長は『株価の利益』となりますから。一方、事業の失敗や業績悪化も、株価が下がる形で自分に返ってきます。つまり、株式報酬によって従業員は責任感や当事者意識を持って仕事をするようになるのです」

株式報酬の仕組みは、役員への譲渡と従業員への譲渡で大きく分かれる。とはいえ、どちらも自社の株価が上がれば報酬が大きくなることに変わりはない。海外、特にアメリカ・シリコンバレーの企業では主流の報酬制度となっている。

一方、日本はどうだろうか。あまり馴染みのない言葉だが、決して普及していないわけではないようだ。

「たとえば従業員の株式報酬については、古くから日本企業の多くが『持株会』という制度をとっています。これは、従業員が自社株を購入するにあたって優遇したり、従業員で共同積み立てをしたりするもの。上場企業の約90%が導入しています。役員の株式報酬についても、2015年までは法律上難しかったのですが、それ以降は可能に。弊社の把握するところで導入企業は約800社にまで増えています」

加えて冒頭で述べたように、Zホールディングスや楽天といった大企業が新たな株式報酬の制度を設けた。まさに企業経営の手段として注目されているのだ。

Global Sharesは、こういった株式報酬をサポートするサービスを提供している。たとえば報酬として譲渡する株式の管理や、従業員が自分の保有する自社株の価値確認や売却などができるポータルサイト・モバイルアプリといったものだ。

資生堂や富士通も導入。海外の人材獲得にはこのサービスが必要

最大の特徴は、同社のサービスが世界100カ国以上に対応していること。その結果、たとえば日本の企業が海外に支社や子会社を持つ場合、そこで働く異国の従業員にも株式報酬を渡すことができる。

実はこの仕組みこそ、「グローバル時代」と言われる今、世界中の企業から求められていることだという。

「今や日本企業が外国に支社や子会社を持つことは珍しくありません。その際、株式報酬を渡すことは、役員や現地の従業員など、良い人材を獲得する上できわめて重要になります。なぜなら、欧米を中心に株式報酬を重視するビジネスパーソンは多く、特に役員クラスはそれが企業選定の大きな要素になります。仮に日本企業がアメリカ企業を買収した際、株式報酬制度の有無が人材獲得を左右する可能性さえあるのです」

たとえば資生堂や富士通は、Global Sharesのサービスを導入している企業のひとつ。海外事業を展開している両社だが、「現地の優秀な人材を確保する重要なツールとして、我々のシステムを活用しています」とミーハン氏は説明する。

「日本企業が外国の従業員に株式報酬を行うには、多数のハードルがあります。従業員は日本の居住者ではないため、税制をはじめとした現地の法律との調整、通貨の変換などコストや労力がかかるのです。何カ国にも展開する大企業が、ひとつひとつの国の制度に合わせて株式報酬をカスタマイズするのは容易ではありません。我々のシステムはそこをサポートしています」

グローバル化全盛の中で、ますます国を超えた株式報酬の必要性は増すだろう。ミーハン氏は「日本ではまだその仕組みを整えている企業が少ないので、今後サポートしていきたい」と話す。

従業員にとっては企業の成長を共有でき、企業としては人材獲得のポイントとなる株式報酬。そのサポートを世界で行うGlobal Sharesは、この領域における“国境”を限りなく無くしていく。

(取材・文/有井太郎)

※記事の内容は2020年9月現在の情報です

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