東証ETFのキーパーソンに聞く

「半導体」のようにさまざまな商品に組み込まれているETF

“日本初のETF”を立ち上げた野村アセットマネジメントの歴史・後編

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日本にETF(上場投資信託)が誕生してから25年。その最初の1つが、野村アセットマネジメントの「日経300株価指数連動型上場投資信託(1319)」だ。

前回は、野村アセットマネジメント プロダクト・マネジメント二部の石渡寛利さんに、「日経300株価指数連動型上場投資信託」上場の歴史を伺った。

続く後編は、同社の機関投資家営業部ETFグループの奥山修さんに、野村のETFブランド「NEXT FUNDS」誕生の経緯とETFのこれからについて聞いた。

ブランドコンセプトは“その投資が、次の世界をつくる。”


――奥山さんは、もともとETFを担当されていたんですか?

「私は2008年に野村アセットマネジメントに中途で入社して、開発商品運用部に配属されたのです。新しい運用商品を作り、実際に運用する部署で、ETFも扱っていました。

ちょうど『NEXT FUNDS』のブランドが立ち上がったばかりの頃で、専用サイトの制作を進めていたところでした。上司から『入ったばっかりだけど、意見を言え』って言われたことを、今でも覚えてますね。」

――ETFを「NEXT FUNDS」というブランドでまとめるに至ったのは、どのような理由からなのでしょう?

「1つは、2000年代に入ってETFが急拡大していたアメリカで、ブランド化が進んでいたことが挙げられます。今はブラックロックのブランドですが、当時はバークレイズ・グローバル・インベスターズが『iシェアーズ』というブランドを立ち上げていました。我々もブランドを作り、育てていくことで、投資家の皆様に覚えていただきやすくなるのではないかと考えたのです。

もう1つは、制度が整備されて、多様な商品組成が可能になったことがあります。プロダクトマップを作り、株式だけではなく債券やコモディティ、日本の資産と海外の資産など、どの部分からETFの設定を進めていくかという議論が進むなかで、『ブランドを作って、まとめよう』という話になりました。」

――海外の流れやETFを取り巻く環境の変化から、ブランド化が進んだのですね。ところで、「NEXT FUNDS」の由来は?

「『Nomura EXchange Traded FUNDS』の略で、『次世代のファンド』のラインナップを展開していく、さらには『その投資が、次の世界をつくる』という意図を表しています。ロゴマークは『新しいファンドが生まれ、未来に向かって成長していく』というコンセプトを、新しいページをめくっていくようなデザインで表現しています」

ETFの強みを生かした「日経レバレッジ指数ETF」


――「NEXT FUNDS」の純資産総額推移を見ると、2012年頃から伸び率が上がっているようですが、きっかけとなった商品などはあったのですか?

「2012年4月に上場した『日経レバレッジ指数ETF(1570)』の存在が大きかったと思います。日経平均株価の日々の騰落率の2倍の指数に連動するETFです。先物取引に代表されるデリバティブ取引は、取引に際して収入要件や投資歴などの資格要件が厳しいのですが、ETFであれば普通の株式と同じなので、投資家の方も投資しやすかったのでしょう。

また、上場直後に安倍政権に変わり、アベノミクス効果で日本株が伸びていったことも、『日経レバレッジ指数ETF』が広く使われるようになったきっかけの一つだろうと考えられます」

――レバレッジをかけることで多少リスクに踏み込むものの、指数を追うETFのローリスクな部分や買いやすさはそのままで、評価されたのかもしれませんね。

「そうですね。1銘柄買うだけで分散投資ができる、日中も機動的に売買できる、といったETFのメリットを、より生かすことのできた商品といえるでしょう。

あと、2011年に東京証券取引所のインディカティブNAV(iNAV)が出てきて、ETFの価値がリアルタイムで算出されるようになったことで、取引が活発化し始めたことも関係していると思います。ETFが誕生してから、取り巻く環境は絶え間なく進化していて、そのたびに投資の利便性や透明性は高まっていますね」

ETFは投資における“半導体”のようなもの


――これまでの25年間で、野村アセットマネジメントでのETF利用者の比率は上がっているのでしょうか?

「市場の上げ下げによってブレが生じるので、一本調子ではありませんが、5年、10年といったタームで見れば確実に上がっています」

――ETFを購入している層の変化は感じますか?

「投資全般にいえることではありますが、高い年齢層の男性投資家が中心だったところから、徐々に若い層や女性にも広がり始めていると感じています。特に最近は、ネット証券を通じてETFを保有している方が増えていると思いますね。

ETFそのものに投資するだけでなく、資産を運用会社に預けて運用してもらうラップサービスにETFが組み込まれているケースもあります」

――意識せずにETFに投資している方も、増えてきているということですね。

「ETFって、“半導体”のようなものだと思います。普段は意識することが少ないですが、スマホやパソコン、さまざまな家電に半導体が入っているように、さまざまな金融商品の中身を見てみると、密かに『NEXT FUNDS』が組み込まれている。そういう時代が訪れ始めているんじゃないかと感じるのです。

最近はポイント投資も広がってきていますが、実はあの中身にもETFが使われていたりするんですよね。ETFは日本の株式市場になくてはならないものになりつつあるのではないでしょうか」

「投資入門編」として最適な商品・ETF

――現在のコロナ禍を経て、ETFは今後どのように進んでいきそうだと考えていますか?

「あくまで私個人の意見ですが、生活パターンが明らかに変わってきて、在宅で働く人も増えているなかで、通勤時間が短縮されて、隙間時間に投資を始めやすくなっていると思います。実際にアメリカでは、売買手数料無料の株取引アプリ『ロビンフッド』の利用者が増え、個別株の株価を動かすまでになっているのです。

『投資を始めてみよう』という気持ちが芽生えた時に、ETFは入門編として最適な商品ではないかと思うのです。指数なら毎日ニュースで追えますし、多くの銘柄に分散投資しているという意味で個別株投資に比べて相対的にリスクも低いので、選択肢の1つとして捉えてほしいですね」

――現在の状況で、急に消費を増やすことは難しいからこそ、投資することが社会でお金を回すきっかけになるかもしれないですよね。

「そう、投資ってお金が働いてくれるんですよ。自分は寝ていても、企業の人が頑張って業績を上げてくれたら、株価が上がって儲かるんです。もちろん自分が働いて稼ぐことも大切ですが、労働と投資を両立すると、将来のリスクを減らすことにつながります。また、例えば日本で働いて円で給料をもらっている方が、外国株に投資することで外貨建て資産を持てば、通貨も含めた分散投資になりますね。

そうした投資先として、品揃えが増えてきているETFは、いろいろな使い方ができるのではないでしょうか」

さまざまな人たちの努力によって、発展してきたETF。現在は銘柄も増え、状況や要望によって選択できるようになってきている。投資の選択肢の1つとして、取り入れてみよう。
(有竹亮介/verb)

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