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“店舗提示型”の課題をなくす

さまざまな決済サービスを使用できる統一QRコード「JPQR」とは

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ここ数年で盛り上がってきた「キャッシュレス決済」。9月1日からはマイナポイントもスタートし、所定の手続きをしてキャッシュレス決済を利用すると、利用金額の25%相当のポイントがもらえる(一人当たり上限5000円)。

そんな中、キャッシュレス決済のひとつである“QRコード決済”においても、ある取り組みが行われている。統一コードの「JPQR」普及事業だ。

QRコード決済の中には、店舗がQRコードを提示し、ユーザーがスマホなどで読み取って決済する「店舗提示型」がある。しかし、決済サービスが乱立する昨今、店舗は新たなサービスを導入するたびに、QRコードを追加で提示しなければならず煩雑だった。そこで統一のQRコードを作り、ひとつ提示するだけで多数のサービスに対応できるようにした。この統一コードがJPQRである。

総務省では、昨年度からJPQR普及事業をスタート。一連の取り組みについて、総務省の竹内史生氏(情報流通行政局 情報流通振興課)と、JPQRを策定したキャッシュレス推進協議会の福田好郎氏(事務局長/常務理事)に聞いた。

店舗はJPQRを通じて、複数の決済サービスを一括導入できる

店舗提示型のQRコード決済を導入する場合、店舗は新たな端末を用意する必要はない。指定のQRコードを掲示するだけであり、維持や導入コストは基本的にゼロだ。その“導入しやすさ”が魅力だったが、一方で課題が出てきた。

「サービスが乱立する中で、店舗はいくつものQRコードを掲示しなければならないケースが出てきました。サービスごとに専用のものを用意する必要があるためです。それを統一したのがJPQRで、ひとつのQRコードを掲示すれば、複数の決済サービスで使える形となりました」(総務省・竹内氏)

すでに19の決済サービスがJPQRに対応(※9月16日時点)しており、市場でのシェアが高い大手どころの名前もそろっている。

ただし、店舗にJPQRが掲示されていても、一般消費者は19の決済サービスすべてを使えるとは限らない。どの決済サービスに対応するかは、店舗ごとで変わる。

「店舗がJPQRを申し込む際、導入を希望する決済サービスを選びます。複数のサービスを一括で申し込むことも可能で、その後、各決済事業者で審査して導入となります。このため、JPQRの導入店舗でも、どのサービスが使えるかはお店ごと異なります」

各店舗で導入している決済サービスは、掲示しているJPQRの下に示す形が一般的。ユーザーはその表示を見て、自分の持つアプリなどがその店舗で対応しているか確認すればいい。

総務省 統一QR「JPQR」普及事業事務局より提供

なお、店舗が新たに決済サービスを導入する際、これまでは各サービスにそれぞれ申し込んでいた。しかし、JPQRでは一括で行えるので手間が省ける。また、店舗が決済履歴を確認する際、JPQRの売上管理画面なら、導入している複数の決済サービス履歴をまとめて閲覧・管理できる。これらも店舗にとっては魅力だ。

顧客データを分析し、店舗改善や新サービスへとつなげる「基盤」

統一コードのJPQRを策定したのは、キャッシュレス推進協議会。福田氏は、策定のプロセスをこう振り返る。

「JPQRの規格は、グローバルスタンダードに合わせたものとなっています。ちょうどアジア諸国でQRコードを統一化する話が出ており、その規格や技術をベースにしました」

こうしてJPQRができると、総務省による取り組みがスタート。2019年には5県(岩手県、長野県、栃木県、和歌山県、福岡県)で重点的に普及し始めた。

「2020年には全国での普及事業をスタートしました。昨年・今年の累計で1万4千店の店舗に導入いただいています。店舗のジャンルとしては、小売業が多いですね」(竹内氏)

また、福田氏も「店舗提示型はコストを抑えられるので、中小規模の個人店などで普及が進んでいくのではないか」と話す。

総務省 統一QR「JPQR」普及事業事務局より提供

なお、これまでは決済サービス事業者が店舗にキャッシュレス決済の導入を“営業”し、エリアや店舗数を拡大していった。一方、JPQRが普及していくと、各事業者の店舗営業は少なくなるかもしれない。JPQRを導入した店舗は、そこから各決済サービスに申し込む流れとなるからだ。

福田氏は、それが「決済サービス競争の流れを変える可能性もある」と話す。

「JPQRが広まるほど、決済サービスごとの普及エリアや店舗数の差は小さくなるかもしれません。これらの差別化は難しくなるので、事業者はどのように自分たちの“色”を出していくか。そういった動きも見ていきたいですね」

もちろん、JPQRが普及することはキャッシュレス決済の利用者アップにもつながるだろう。日本政府は、2025年までにキャッシュレス決済比率40%を目標に掲げている。2019年は26.8%(経済産業省)とのことで、「40%達成を目指し、マイナポイントとともに普及させていきたい」と竹内氏は話す。

総務省 統一QR「JPQR」普及事業事務局より提供

また福田氏は、キャッシュレス決済の導入がもたらす今後の可能性についても触れる。

「キャッシュレス決済は、お金の受け渡しなどの手間を減らすだけでなく、店舗がこれからより良いサービスを生み出す基盤になります。キャッシュレス決済にすれば、購買履歴やお客さまの情報をデータで分析できるようになり、それをもとに、店舗は新しいサービスや商品を考えられる。その基盤を整備する意味で、JPQRを導入する店舗が増えればいいですね」

顧客の深いデータを分析することで、店舗の改善や新サービスにつなげる。それこそが、キャッシュレス決済の価値と言える。特に資金の少ない個人店などは、低コストでデータ利活用ができるかがカギ。その意味で、JPQRは重要な役割を担っている。

(取材・文/有井太郎)

※記事の内容は2020年10月現在の情報です

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