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【海外フィンテック最前線】「TransferWise」を使ってみた

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日本取引所グループ(JPX)では、世界各国の金融動向を調査し、かつ世界のマネーを呼び込むため、海外にも支店・駐在員事務所を設立している。金融都市の代表格ともいえるロンドンでも、約30年前から現地駐在員が投資家との対話や、金融動向について調査を継続するべく、日々様々なステークホルダーと接して現地の最新動向を集めている。ロンドンでは既存のグローバル金融機関だけではなく、いわゆるフィンテック企業も次々に誕生しており、まさに金融都市の名にふさわしいエコシステムができあがっている。

そのため、今回の記事ではJPXロンドン駐在員事務所の社員N氏を通じて、ロンドン発の有名なフィンテック企業について紹介していきたい。

(以下、N氏)

ロンドンにはいくつもの画期的なフィンテック企業があるが、その中でも「TransferWise」の提供するサービスについては、海外で働く人間から見てとても面白く便利なサービスだと感じたことため、そのサービスの一部についてご紹介したい。

【企業及びサービス概要】

TransferWiseは2011年に設立された英国発のフィンテック企業である。海外送金に特化したサービスを運営しており、「海外送金をより安く、公正で、よりシンプルにすること」をミッションとしている。具体的には、「ネットでかんたんに海外送金」できるサービスを提供しており、図表1のとおり、TransferWiseのサービスを利用することで、ウェブサイト上で全ての送金手続きを進めることができるため、自宅のPCから海外送金を「かんたんに」処理することができる。

図表1:TransferWiseのウェブサイト(20年9月28日付)

(TransferWiseのウェブサイトから抜粋)

TranferWiseのウェブサイトでも説明されているとおり、私個人としては送金の仕組みがとてもユニークだと感じている。具体的な仕組みとしては、TransferWiseは世界各国に銀行口座を有しており、図表2のとおり、例えば英国ポンドの銀行口座から日本円の銀行口座に海外送金したい場合は、TranferWiseが用意する「英国ポンド用の銀行口座」に対して入金することで、TransferWiseが一定の為替レートにもとづき、同社の「日本円用の銀行口座」から、利用者の日本円用の銀行口座に入金される。そのため、TransferWiseの言葉を借りると、「実際には国をまたいだ送金はしていない」こととなる。

図表2:TranferWiseの送金仕組み

(TransferWiseのウェブサイトにもとづき筆者作成)

【サービスの利用メリット】

TransferWiseのサービスに関するメリットをまとめると、以下3点に集約されるだろう。なお、以降の【使ってみよう】で、サービス利用にあわせて、どういったタイミングで私がサービスの利点を感じたのかもお伝えしていく。

(1)手続きが速い(数分から十数分で完了)
(2)分かりやすい(ユーザーインターフェースが使いやすく、手続きで迷うことが無い)
(3)透明性が担保されている(為替レートや手数料が分かりやすい)

※その他、同社のウェブサイトでは手数料の安さなどのメリットも記載されている

(1)手続きが速い:
私個人が感じたTransferWiseのサービスにおける最大のメリットは、何よりも「速さ」である。通常、銀行間送金の場合は、手続きから入金までに数日要することがあるが、当サービスでは翌営業日までに入金が完了すると公表しており、私個人の体験ではなんと数分から十数分の間で手続きから入金まで完了した。かつ、ウェブサイト上で全ての手続きが完了するため、銀行窓口に行く時間も考慮すると、相当な時間を節約することができる。

(2)分かりやすい:
また、TransferWiseの海外送金用の手続きウェブサイトは、非常に使いやすく、情報の入力や手続きで迷うことはほとんどなく、ストレスフリーで手続きを進めることができる。

(3)透明性が担保されている:
さらには、後ほど写真でも紹介するが、海外送金に掛かる手数料や、為替レート等が非常にわかりやすく可視化されているため、どの程度の金額送金で手数料はいくらになるのか、また手続きする時点で、為替レートはどうなっているのかを瞬時に読み取ることができ、海外送金に関する分かりにくいコストへの心配がない。

【使ってみよう】

それでは、実際に当サービスを使った海外送金の流れを紹介していこう。

手順1 同社専用の個人アカウントを作成(無料)
手順2 1で作ったアカウントでログイン
手順3 「送金する」ボタンを押す
手順4 どの通貨間で送金するのか指定[図表3]
例:英国ポンドを英国の現地銀行口座から、日本の銀行に「日本円」として振込む際には、送金元の通貨をGBP(英国ポンド)として送金先をJPY(日本円)に設定

この時、メリット(3)でもお伝えのとおり、すでに当該送金に関する手数料が提示されており、同時に、為替レートを確認することできる。今回の例でみると、100GBPを送金する際、手数料が2.63GBP かかり、為替レートは1GBPあたり135.873円。結果として日本の口座に13,230円入金されるということが即時に、かつ容易に理解することができる。

図表3:送金手続きページ(1)

(TransferWiseのウェブサイトから抜粋)

金額について問題ない場合には、「Continue(送金手続きへ)」のボタンを押すことで、手続きを進めることができる。その後、送金先の日本円口座情報(口座名義人、銀行、支店、口座種別、口座番号など)を登録することで、図表3で設定された金額(日本円)が日本の口座に振り込まれる手続きが完了する。

図表4:送金手続きページ(2)

(TransferWiseのウェブサイトから抜粋)

冒頭のとおり、Tranferwiseの仕組みとして、利用者はあくまで現地の銀行口座に入金することで、TransferWiseの口座を通じて、送金先の銀行口座にお金が入金されることとなる。

今回のケースであれば、TransferWiseの英国ポンド用銀行口座に、100GBP入金することが必要である。入金方法についても実は複数手段があり、自身で直接TransferWiseに入金する方法もあれば、自動引き落としの設定、さらにはクレジットカード・デビットカードを利用して当該口座に入金することも可能となっている。加えて、図表5の下段のとおり、英国以外の銀行口座から入金することもできる。なお、入金方法により、手数料が変動するため注意したい。

図表5:送金手続きページ(3)

(TransferWiseのウェブサイトから抜粋)

そして、送金に関する詳細情報の入力が完了すると、(銀行振込みを選択した場合、)最後に図表6のとおり、TransferWiseの銀行口座が表示される。指定された期限までに、記載された金額(今回の場合は、100GBP)を当口座に入金することで、送金先として設定された日本円の銀行口座に、事前に確定している日本円が入金される(今回の場合は、13,230円)。

なお、日本円の入金に関しては、図表1のとおり、翌日の日付までの入金と表示されているが、私自身の経験では、平日に手続きしたこともあるためか、英国ポンドの入金後、数分後には日本円が日本円用の銀行口座に入金されていた。

図表6:送金手続きページ(4)

(TransferWiseのウェブサイトから抜粋)

【まとめ】

TransferWiseの利用規約を確認すると、一定の事由により同社のサービスを通じて送金ができなくなった場合は、利用者側が責任を負うとのことなので、その点は利用前に理解しておく必要があるだろう。

しかし、通常の銀行間送金の場合には、送金完了までに数日間要しており、また送金手続きを行っている時点では為替レートが確定しておらず、さらには手数料も高額であるケースもあり、そういった手続きと比較すると、効率性・透明性・価格性の観点からTransferWiseのサービスは非常に使いやすいと感じた。

最後に、当サービスの開発背景に関して同社のウェブサイトを見てみると、創業者であるKristo Kaarmann氏及びTaavet Hinrikus氏はともにエストニア出身である。お二人はTransferWiseを創設する以前、勤務先の都合等により、Taavet氏は給与をユーロで受け取りつつ生活のために英国ポンドを必要としていた一方で、Kristo氏は英国ポンドで給与を受け取りつつ生活にはユーロを必要としていた、2人は今までに多くのお金を海外送金で使ってしまっていた(おそらく手数料などで)ことから、TransferWiseの送金の仕組みを思いつき、サービスを開発したとされている。

そのため、当該サービスは創業者本人たちのニーズから生み出されたものであり、非常に使い勝手がよく、ユーザー側の視点に立ったサービスだと感じている。

現在、引き続き新型コロナウイルスの影響で海外渡航も一定程度制限されており、かつ海外口座にお金を送金する機会も多くあるわけではないかもしれないが、使ってみると新しいフィンテックの形に出会えるだろう。

(東証マネ部!編集部)
(作成協力:JPXロンドン駐在員事務所)

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