コロナウイルス感染予防のための離職なら「給付制限」なし!?

今こそ知っておきたい「失業保険」の受け取り方

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新型コロナウイルスの影響で、規模縮小や倒産を余儀なくされる会社が出てきている。この状況が長く続けば、自身が勤めている会社も影響を受けて、失業してしまうこともないとは言い切れないだろう。

万が一仕事を失った場合に、頼れる存在が「失業保険」。離職している一定期間、給付金が受け取れる制度だ。ただ、実際に離職するまで、その存在を知らない人も多いのでは。そこで、ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんに、「失業保険」受給の条件と申請方法を聞いた。

「会社都合」の離職であれば給付金はすぐ支払われる

「『失業保険』の正式名称は『雇用保険』、受け取れる給付金のことは基本手当といいます。会社に雇用されている時に給与から天引きされている雇用保険料が、基本手当につながるものです」(川部さん・以下同)

そもそも「雇用保険」は、会社と31日以上働く契約を交わし、週20時間以上勤務している人が加入できる保険。原則として、12カ月以上(※)雇用保険料を支払っていれば、失業時に基本手当を受け取ることができる。
※「会社都合」の離職の場合は、6カ月以上雇用保険料を支払っていれば基本手当を受け取れる。

「基本手当の受給タイミングには、離職した理由が関係します。会社の倒産やリストラなど『会社都合』の場合は、離職後すぐに給付されます。しかし、『転職したい』など『自己都合』で離職した場合は、給付制限という期間が設けられ、離職してからの原則2カ月間は給付されません」

給付制限は、2020年10月1日から「2カ月」になった。ただし、5年間のうちに3回以上自己都合で離職した場合、3回目以降は「3カ月」となる。また、制度変更前の2020年9月31日以前に自己都合で退職している場合、給付制限は「3カ月」。

給付制限に関して、新型コロナウイルスの影響による「自己都合」の離職であれば、例外的に扱われるとのこと。

「例えば、職場でコロナウイルスの感染者が発生した、あるいは同居している家族に基礎疾患がある方がいるなど、感染・重症化防止の理由で自己都合退職した場合は『特定理由離職者』となり、給付制限なしで、すぐに基本手当を受給できるようになっています」

「特定理由離職者」となるケース
(1)同居の家族が新型コロナウイルス感染症に感染したことなどにより、看護または介護が必要となったことから自己都合離職した場合

(2)本人の職場で感染者が発生したこと、または本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること、妊娠中であることもしくは高齢であることを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した場合

(3)新型コロナウイルス感染症の影響で子(※)の養育が必要となったことから自己都合離職した場合
※小学校、義務教育学校(小学校課程のみ)、特別支援学校(高校まで)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る

「離職票」を持ってハローワークで申請

基本手当の受給手続きは、ハローワークで行う。最初のステップは、会社から受け取った「離職票」を持っていき、求職申し込みの手続きを行うこと。

「会社は『離職票』を渡す義務はないので、辞める日に自動的にもらえるわけではありません。退職する際に、『できれば早めに離職票が欲しい』と伝えましょう。辞めた会社に出向くか郵送で受け取れますが、『離職票』の発行は基本的に2~3週間かかります。『離職票』が手に入ったら、なるべく早めにハローワークに行きましょう」

求職申し込みをした後、7日間の待機期間を経て、ハローワークでの雇用保険説明会に参加すると、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が渡される。その後、求職活動を行い、説明会にて渡されたこれらの書類に記入して提出することで、基本手当が受け取れるようになる。

「待機期間の7日間は、ハローワークが受給資格などを調査する期間です。そのため、この間にアルバイトをするのはNG。収入があるとみなされると、待機期間が延びる場合があります」

「基本手当の額」「給付期間」は個々人で異なる

雇用保険説明会の後、4週に一度の失業認定日が来るごとに、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を提出し、失業の認定を受けることで基本手当を受給できる。認定日は4週ごとの同じ曜日に設定され、失業の実態と最低2回の求職の実績が認められると、数日後に基本手当が振り込まれるという流れ。

「基本手当の額は、直前まで働いていた会社で直近6カ月間に支払われていた給与の50~80%程度。賃金が低かった人ほど、率が高くなります。また、基本手当の額は上限が定められています」

基本手当日額の上限額(2020年8月1日時点)

受給できる期間は、離職した理由や年齢によって異なり、最短で90日、最長で360日と定められている。

「会社都合」で離職した人、特定理由離職者の給付日数

「自己都合」で離職した人の給付日数

障がい者などの就職困難者の給付日数

「年齢が高い人ほど基本手当を長く受給できるのは、新たな就職先を見つけにくくなるからです。また、『自己都合』で離職した場合は、日数が短くなります」

もし失業したとしても、給与の半額以上を受け取ることができる。「失業保険」の存在を知っているだけで、いざという時に不安を感じすぎずにすむだろう。
(有竹亮介/verb)

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