改正されたばかりの「労災保険」「雇用保険」をチェック!

副業中にケガしたら「休業補償」は副業の給与分だけ?

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“働き方改革”によって副業・兼業が促進されていることもあり、ダブルワークをしようと考えている人も増えているのではないだろうか。この夏、副業・兼業に関係する改正法が施行された。

法改正によって変更となった制度の1つは、仕事中や通勤中のケガ・病気・死亡に対して保険給付が行われる「労災保険」。もう1つは、離職時に保険給付が行われる「雇用保険」だ。具体的な変更点について、ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんに聞いた。

本業と副業の給与額を合算して「休業補償」を算出

「これまでは、A社とB社でダブルワークをしていてA社の業務中にケガをしたら、休業中に支払われる給付金『休業補償給付』はA社の給与額だけをもとに計算されていました。しかし、2020年9月1日に『労災保険法』の改正が施行されたことで、どちらでケガをしたとしても、A社とB社の給与額を合算して算出されることになったのです」(川部さん・以下同)

例えば、A社の月収が25万円、B社の月収が10万円で、A社の業務中にケガをした場合、これまではA社の25万円をもとに「休業補償給付」の額が決まっていた。しかし、今後は合算した月収35万円をもとに算出される。つまり、給付額が上がるというわけだ。

「『労災保険』は保険料の個人負担ゼロの保険なので、法改正が行われたからといって、負担が増すことはありません。働き手にとっては、いざという時にさらに頼りになる制度になったといえるでしょう」

「労災保険」の保険料は全額会社負担だが、もともとそこまで高いものではなく、保険料が上がる予定もないそう。会社にとっても、マイナスの変更というわけではないようだ。

合算した「残業時間」が労災認定の基準に

「『労災保険法』の改正によって、給与だけでなく労働時間も合算されることになりました。労働時間が『労災保険』において重要な理由は、病気を発症した場合に、長時間労働によるものか判断する基準になるからです」

これまでは1つの会社での発症前1カ月の残業時間が100時間を超えていると、長時間労働と健康障害の因果関係が認められやすいとして、労災認定につながる基準とされていた。

しかし、法改正により、発症前1カ月のA社とB社それぞれの残業時間を合わせて100時間を超えている場合、長時間労働と健康障害の因果関係が認められやすくなったのだ。

「労災認定されれば、労働者自身の医療費の自己負担が0円になります。また、万が一障がい状態となった場合や亡くなった場合の給付もあるので、今回の法改正で範囲が広がったことは、家族にとってもプラスといえるでしょう」

労災認定の範囲が広がったことで、業務や通勤がきっかけでケガや病気をした際に、副業・兼業をしていても補償されやすくなったという利点がある。

「ただし、『労災保険』の給付額や補償範囲が広がったからといって、労災認定される保障はありませんし、無理に副業の時間を増やして、体を痛めてしまっては元も子もありません。法改正の内容は知っておいた方がいいですが、働きすぎは禁物ですよ」

月80時間以上働けば副業も「雇用保険」の対象

離職時に基本手当(通称、失業保険)が受け取れる「雇用保険」に関する「雇用保険法」は、2020年8月1日に改正法が施行された。

「法改正によって、基本手当受給の条件が変わりました。『原則として、12カ月以上雇用保険料を支払っていること』という受給条件があるのですが、これまでは1社につき1カ月間に11日以上働いていなければ認められませんでした。しかし、この8月からは、1社につき1カ月間に80時間以上働いていれば認められることになったのです」

各種条件を満たせば、11日以上働いていなかったとしても、「8時間×10日」など、月80時間の労働で、離職時に基本手当を受け取れるというわけだ。

「8月に施行されたばかりなので、まだ実例は見たことがありませんが、この改正によって、ダブルワークなどで労働日数の少なかった方でも、失業等給付を受け取りやすくなるでしょう」

制度改正によって、ダブルワークをすることに安心がプラスされたと感じる人も多いのでは。副業を検討する場合は、健康に配慮しながら、補償内容を確認して働く日数や時間を決めよう。
(有竹亮介/verb)

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