とある市場の天然ゴム先物 01

「天然ゴム先物」は何歳?どこで取引しているの?

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天然ゴムの先物って何でしょう??

商品先物市場といえば昔の東京証券取引所の立会場のように、大勢のトレーダーが一堂に介して賑やかに売買をする場面を想像される方が多いのではないでしょうか。エディ・マーフィー出演の1983年の映画「大逆転(原題はTrading Places)」において、冷凍オレンジジュースの先物取引で最後に商品先物ブローカーの経営者をやり込める場面などが象徴的ですね。

とはいえ、最近の商品先物取引は株式などと同様にシステム上で行われており、こうしたトレーダーが集まって取引をする場はほとんどなくなっています。

Open Outcryと呼ばれる、商品先物取引の最前線。このようにブローカーやディーラーが実際に集まって取引をする場所は世界でも数少なくなった。
出典:CME Group

さて、この隔週連載のテーマは商品先物の一つである「天然ゴム先物」。日本では大阪取引所に上場されており、日本経済新聞の商品欄やゴム報知新聞NEXTで好評連載中のマーケットエッジ小菅氏の「マーケットアナリティクス」ではお馴染みの金融商品ではありますが、「商品先物」という言葉のとっつきにくさと相まってなかなか馴染みのない方も多いかもしれません。

「先物はあまり知らないし、取引する予定もないので別にいいや。」とブラウザを閉じようとされた方、ちょっとお待ち下さい!実は日本の天然ゴム先物は1952年に取引を開始してから70年近くもの歴史のある先物で、1988年に取引開始した日経225先物やTOPIX先物よりも35歳以上も先輩なのです!

ちなみに1952年はサンフランシスコ平和条約の発効やイギリスのエリザベス2世の即位があり、坂本龍一や中島みゆき、ロシアのプーチン大統領が生まれた年でもあります。なお鉄腕アトムの連載開始もこの年です。

天然ゴム先物の歴史はまさに戦後の日本の経済復興、発展と歩調を合わせており、特に日本企業の天然ゴムの安定的な調達に大きな貢献をしてきました。またその間に様々な歴史的なイベントが起こり、それに伴って相場が大きく動くなど数々のドラマも生まれてきました。この連載の中ではそうした浪漫溢れる相場の歴史もご紹介していきます。

東京商品取引所(TOCOM)でかつて行われていた天然ゴム先物の手振りによる売買の模様。2014年12月以降、システム上のみで売買されることとなった。
出典:TOCOM

天然ゴム先物を知ると何かいいことあるの?

さて、天然ゴムは主にタイヤなどの原料として使われますが、その価格は「タイヤメーカーなどの需要」、「タイやインドネシアといった生産国の供給状況」、「国内外の在庫状況」、「合成ゴムの原料である石油価格」などによって左右されます。

先物取引は将来時点の価格をあらかじめ取り決めて売買するものですので、先物の価格には現物の天然ゴム価格に加えて、先ほど述べたような天然ゴムの価格変動要因に対する市場参加者の見通しや期待なども含まれます。(天然ゴム先物の価格はこちらで確認することができます)

この先物価格の特性を生かして、例えばタイヤメーカーの株式を取引している投資家でしたら、先物を通じて将来の天然ゴム価格の見通しを分析することで、こうした企業の将来業績へのインパクトの予測に活用できるでしょう。

天然ゴムを取り扱う製造会社でしたら、天然ゴムの調達における将来価格の予測の参考にしたり、更には先物を使って原料価格の変動をヘッジしたりすることなどができます。また現在世界中で地政学的なリスクが高まっている中、天然ゴム先物を原材料調達のバックアップ・プランとすることで有事の際に備える、などといった活用法も考えられるかもしれません。

天然ゴム先物市場はどこにある?

商品先物の世界では、例えば金ではニューヨーク(COMEX)、非鉄金属ではロンドン(LME)、穀物ではシカゴ(CME)や中国(大連商品交易所)などが有名です。

それでは天然ゴムの先物は世界のどの国で取引されているかご存知でしょうか?

戦前に天然ゴム現物の価格決定の中心地であったロンドン?世界の金融経済の中心、ウォールストリートのあるニューヨーク?それとも天然ゴムの木の原産地であるブラジル?いえいえ、実は天然ゴムの先物市場は米国にも欧州にもありません。実はアジアの取引所がメインマーケットという非常に珍しい金融商品なのです。

現在、天然ゴム先物が取引されているのは、日本の大阪取引所、中国の上海期貨交易所とその子会社である上海国際エネルギー取引所、シンガポールのシンガポール取引所、そしてタイのタイ先物取引所などとなります。

先物として取引される天然ゴムは主にRSS(Ribbed Smoked Sheet:燻製シートゴム)とTSR(Technically Specified Rubber:技術的格付けゴム)の2種類ありますが、各取引所が取り扱っている天然ゴム先物は以下となります(RSSとTSRの製法の違いはこちら)。

出典:OSE, SHFE, INE, SGX, TFEX

これらのなかでも、特に大阪取引所のRSSゴム先物とシンガポール取引所のTSRゴム先物は、天然ゴム先物の代表的な価格指標として国際的にも広く認知されています。

各取引所の天然ゴム先物のもう少し詳しい歴史や特徴については、この連載のなかで改めてお伝えしていきますね。

天然ゴムの魅力

このように、天然ゴムは生産国がアジア、消費国の中心がアジア、先物が取引されているのもアジアと、まさにアジアがエコシステムの中心となっているユニークな商品です。

そもそも「ぐい~んと伸びて、もとの大きさに縮まる」というゴムの商品特性だけを考えても非常に面白いですよね。このあたりに興味のある方はぜひこちらのコラムもご覧下さいませ。こちらで言及されている「ゴムはなぜ伸びる?―500年前、コロンブスが伝えた「新」素材の衝撃」(伊藤眞義・著、東京理科大学・坊っちゃん選書)はゴムの仕組みが分かりやすく解説されていておススメです。

天然ゴムの先物についても、実体経済と強く結びついていることから様々な要因が価格に反映され、非常にダイナミックな動きをします。実は商品先物を昔から取引されている投資家の中には、天然ゴム先物の長年のファンという方も多いんです。

このように沢山の魅力が詰まった天然ゴム先物。その歴史や相場の小噺、活用法、さらには世界の新潮流など、今後楽しくお伝えしていければと思います。どうぞ次回もご期待下さいませ!

※次回の更新は11月10日(火)ごろの予定です。

 

(著者:大阪取引所 デリバティブ市場営業部 矢頭 憲介)
(東証マネ部!編集部)

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