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AI・4Kを使った警備に不可欠

ALSOKが期待する「三種の神器」としての5G

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今年から提供がスタートした「5G」。この連載では、5Gがもたらす変化や可能性について、通信事業者などに取材してきた。

一方、5Gを「警備」に活用し、安全な社会を作ろうと取り組む企業がある。綜合警備保障(ALSOK)である。ホームセキュリティに代表される住宅や施設の“見守り警備”といったイメージの強いALSOKが、なぜ5Gを活用するのだろうか。同社の桑原英治氏(執行役員待遇 開発企画部 新規事業担当)に話を聞いた。 

なぜ、警備会社がAIやテクノロジー開発に力を入れるのか

警備会社とテクノロジーの組み合わせをイメージしにくい人もいるかもしれないが、ALSOKではAIを使った次世代の警備サービス開発に力を入れてきた。桑原氏は「ALSOKというと、所属するトップアスリートたちがビームを出すCMの印象が強いかもしれません。でも、AIを中心としたテクノロジー開発に力を入れる一面もあるのです」と笑顔で話す。

では、どうやってAIを警備に活用するのか。まずはその点を細かく説明したい。実はこの部分が、5Gに大きく関連するからだ。

「今まで施設やイベントの警備を行う際、警備員の目による監視が主となっていました。監視カメラもありますが、基本的には何か起きた後、証拠保全として事後に映像確認する形。しかし、人の目ですべてを見るのは限界がありますし、人手不足も深刻な状況です。そこでALSOKは、独自のAIを開発。監視カメラの映像をAIが常時監視し、危険やトラブルの可能性をいち早く予知・検出します。その情報をもとに警備員が動く体制を目指しています」

AIが警備員の「目」の役割をし、監視のカバー率を拡大。より早く危険を検知し警備員が駆けつけることで、事件の未然防止と被害の最小化を狙う。

もちろんこれらはプライバシーの問題があり、すぐに実用化が進むわけではない。しかし、AIの精度自体は、実用化できるレベルまで開発が進んでいる。

「たとえば監視カメラの映像から、AIが万引き犯の予知を行えます。一人一人の挙動や足取りを分析し、これから万引きするであろう人物を予測。店員にその情報を伝え、近くを巡回したり、場合によっては該当人物に声を掛けたりして防止します」

インターネット上には、万引き犯の犯行映像が多数出ている。その映像をAIに見せると、どの人物が万引きするか、実際に予知できるという。AIは万引きの膨大な映像を読み込み、その特徴を学習してこれを可能にした。

「AIの映像解析は“おもてなし”にも役立ちます。たとえば駅のターミナルや大型商業施設において、困っている方やうずくまっている方をいち早く検知。警備員に通知してサポートする実証実験も行っています」

新丸の内ビルディングで2018年1月に行った実証実験はその一例。たとえば雑踏の中でしゃがみこんだ人がいた場合、AIの検知によって警備員はすぐに駆けつけるだけでなく、AEDなどを持っていくことができる。

先述の通り、これらはプライバシーとの兼ね合いが問題となるが、一方で「今後、社会実装が必要になるサービス」と桑原氏。そう考える背景には、近年の警備業界における変化がある。

実は、家の中に入るなどの「侵入窃盗」は、2002年のピークから5分の1ほどに減っている。一方で、警察庁の公表データを見ると「ストーカー事案の相談等」は43%増、略取(りゃくしゅ)・誘拐に遭った子どもの数(13歳未満)は32%増となっている。そのほか、路上テロやサイバーテロなど「今までにない犯罪が増えている」という。

「これらの事件は起こってから対処するのでは遅く、いかに予兆をとらえて未然に防止するかが求められます。その中で、AIなどを使った最先端技術の活用は不可欠です」

頭脳のAI、目となる4K。それらをつなぐ神経が5G

では、AI技術にどう5Gが関わるのか。ポイントとなるのは、AIが分析する映像の“画質”である。

「監視カメラの映像が高画質であるほど、1台のカメラ映像で広範囲にAIが解析できます。たとえば2018年には、総務省の国プロにNTTドコモと参加し、東京スカイツリー®の340mにある展望デッキにカメラをつけて広域監視の実証実験を行いました。この際、4Kカメラと既設のHDカメラの映像をAIに解析させたのですが、4Kカメラ側ではAIが異常を検知していても、HDカメラは遠方の画像が粗くAIが検知できないケースがありました」

つまり、4Kの監視カメラを使えば、広域で正確なAI警備が実現する。とはいえ、4Kカメラの通信データは膨大。カメラを有線でつなげば問題ないが、街中では限界がある。かといって、今までの4G通信では容量が足りない。

そこで登場するのが5G。4Kの高精細映像を5Gの大容量通信でAIに届けるのだ。

「私たちは、AI・4K・5Gという3つの技術を『現代版・三種の神器』と考えています。人間で言えば、AIは頭脳、4Kは目、そしてそれをつなぐ神経が5Gです。3つのテクノロジーが揃ったこのタイミングは、警備のあり方も大きく進化するときではないでしょうか」

4Kの監視カメラがあれば、東京スカイツリー®のような高所から主要道路を映し、危険走行やスピード違反の車両も検知できるという。また、ある地点で大規模火災が起きた際、映像から周辺道路の交通量もAIが分析。その後の交通誘導を迅速に計画できる。それらを可能にするために、無くてはならない通信インフラが5Gなのだ。

さらに、5Gの特徴である“低遅延”も、警備で大きな効果を発揮するという。

「仮にAIが危険を検知しても、現状は、警備員に知らせるまでの時間は実測3秒ほどに。一方、5GのMEC(Mobile Edge Computing)を利用すれば、遅延が200ミリ秒ほどに短縮。より早く対応できます」

さらにもうひとつ、5Gが生みだす通信の“高信頼性”にも、桑原氏は期待を寄せる。カギとなるのが「ネットワークスライシング」という技術だ。

「人が多数集まる大規模イベントでは周波数の取り合いとなり、スマホの電波が入らなくなった経験のある人は多いでしょう。しかし5Gでは、ネットワークを分割できます。この技術があれば、他のネットワークと切り分けて我々の通信を確保することができ、警備の安全性も高まります」

警備は今後、AIやセンサーなどのIoT、あるいはドローンなど、テクノロジーの活用が進んでいくだろう。警備員も、さまざまな情報をウェアラブル端末やスマートグラスで表示しながら、より高度な警備を実現していくはずと桑原氏は考える。

「かつて『警備会社はノウハウを出してはいけない』と言うこともありましたが、もうそんな時代ではありません。スタートアップや海外企業など、さまざまな機関と異業種連携してオープンイノベーションを推進し、高度なテクノロジーを活用していきたいですね。その際の重要なインフラが5Gなのです」

テクノロジーを活用し、次世代の警備システムを築き上げるALSOK。未来の安全・安心を担うセキュリティの発展には、5Gが大きく関係している。

(取材・文/有井太郎)

※記事の内容は2020年11月現在の情報です

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