投資信託のトレンドが分かる!
2020年10月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2020年10月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「資金流入超が継続も、流入額は減少」
10月の資金流出入動向は流入超が継続したものの、前月対比では流入額が減少した。
資金流入では、継続して流入超となっている外国株式に最も資金が集まったが、前月対比では流入額は減少した。
資金流出では、国内株式や、海外債券カテゴリー(外国債券、エマージング債券、ハイイールド債券)が前月に引き続き流出超となった。また、前月まで流入超となっていた複合資産が、当月は流出超に転じた。
個別ファンドで当月の資金流入額が大きかったのは、「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(ヘッジなし)」(AM-One)(約680億円)が資金流入1位となった。2位は「デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド」(日興)(約610億円)、次いで3位には「テトラ・エクイティ」(三井住友DS)(約440億円)がランクインした。資金流入上位10ファンドのうち、9ファンドが「外国株式型」となった。
(図表1)主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
2.投信市場のパフォーマンス動向
「エマージング株式がリターン首位」
10月の金融市場は、月中旬にかけては全体として比較的落ち着いた値動きの中で一進一退という流れが継続したが、最終週に入ると米国主導でややリスクオフの展開となった。
株式市場は、先進国株式を中心に下落した。米国の追加財政出動への期待から月初は堅調に推移したが、次第に早期妥結が困難との見通しが強まった。加えて、欧米で新型コロナウイルスが急速に感染再拡大していることが嫌気され、最終週には調整色が強まった。
債券市場は、米国は下落、欧州は上昇となった。米国では、バイデン候補の優勢が伝わり大規模な追加財政支出が大統領選後に行われる可能性が織り込まれたことで、金利が上昇(債券価格は下落)した。一方、欧州では追加の金融緩和への期待から金利は低下(債券価格は上昇)した。
為替市場は、米ドル・円、ユーロ・円ともに円高となった。米ドル・円は、大統領選を前にした不透明感から円高米ドル安となった。ユーロ・円は、ユーロ圏の新型コロナウイルス感染拡大を受け外出制限等が再度実施されたことや、ECB(欧州中央銀行)が追加の金融緩和を示唆したことで円高ユーロ安となった。
これらを背景に、10月の投信市場では、エマージング株式のみプラスとなった。新興国では、依然として新型コロナウイルスの感染拡大が継続しているが、新規感染者数の増加に歯止めがかかりつつあることや、それに伴い経済活動が再開しつつあることが好感された。
他方で、エマージング株式を除くすべてのカテゴリーのリターンがマイナスとなった。国内株式や外国株式、不動産投信は、米財政政策の早期妥結が困難とみられたことや、欧米で新型コロナウイルスの新規感染者数が急速に増加傾向となったことが嫌気された。海外債券カテゴリー(外国債券、エマージング債券、ハイイールド債券)は、米国金利の上昇や幅広い通貨に対する円高の進行などがマイナスに影響した。
個別ファンドの1ヵ月リターンでは、中国関連の株式ファンドやフィンテック関連のテーマ型ファンドが上位に多くランクインした。
(図表2)パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「新規設定本数は増加したが、設定額は減少」
当月の新規設定は34本と前月(21本)から増加したが、設定額は約620億円と前月(約1,340億円)からほぼ半減した。当月は3ファンドが設定額100億円超となったが、いずれも200億円には届かず、多額の資金を集めるには至らなかった。
設定額首位は、「野村環境リーダーズ戦略ファンド B」(野村)(約170億円)、次いで同ファンドの為替ヘッジありコースである「野村環境リーダーズ戦略ファンド A」(野村)(約167億円)、3位に「米国株式デイリートレンド戦略ファンド」(三井住友トラスト)(約110億円)となった。
(図表3)新規設定金額、設定本数の推移
最後に、10月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
(図表4)資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)