収入減で保険料が支払えない場合は「免除」の手続きがマスト!

「年金保険料未納」が自分や家族に与える負の影響

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厚生労働省の発表によると、2018年度の国民年金保険料の納付率は68.1%。なんと30%以上の年金保険料が、年度内に納められていないのだ。

未納のままであれば、老後に年金を受け取れないおそれがあるが、ただ受け取れないだけでは済まなそうだ。ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんに、国民年金保険料未納のデメリットについて聞いた。

年金受給の条件は「10年以上の年金保険料納付」

「そもそも国民年金保険料の未納が起こる可能性がある人は、20歳以上60歳未満の個人事業主やフリーランス、フリーター、学生が当てはまる第1号被保険者です。第2号被保険者となる給与所得者は、年金保険料が給与から天引きされるため、未納は起こりません。また、第3号被保険者となる専業主婦(夫)など、一定の収入範囲内の人も年金保険料の負担がないので、未納はあり得ないのです」(川部さん・以下同)

第1号保険者は給与天引きなどがないため、自分で年金保険料を納めることになる。その手続きを忘れる、または意図的に無視することで、未納が発生するのだ。未納を続ければ、将来の年金額が減り、最悪の場合は支給されなくなる。

「国民年金から支払われる老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間欠かさず支払うと満額支給され、未納の月があると、その分支給額が減ります。また、現在は10年以上支払うことが、老齢基礎年金受給の条件になっています。つまり、9年間年金保険料を支払っても、31年間未納を続けたら、老後の年金は0円です」

ちなみに、令和2年度の老齢基礎年金の満額は年額78万1700円(月額6万5141円)。決しておろそかにはできない額だ。

年金保険料未納が「ペナルティ」につながるケースも

未納を起こすことで、ただ老齢基礎年金が受け取れないだけでなく、ペナルティを科されることもあるという。

「年間の所得が300万円以上ある人が、7カ月間未納を続けると、滞納した年金保険料分の財産を差し押さえられることがあります。年間1万数千件以上の差し押さえが発生しているようです」

未納が続くと、すぐに差し押さえられるというわけではない。最初は封書やはがきで年金保険料支払いの案内が届き、無視し続けると特別催告状、最終催告状が届く。さらに未納を続けることで督促状が届き、日本年金機構が未納者の財産を調査したうえで、差し押さえになるという段階を踏む。

さらに、現役世代にとって、年金保険料の未納はかなり大きなデメリットにつながるとのこと。

「年金というと老後にもらえるものというイメージが強いのですが、保険的な役割も担っています。病気やケガで障害が残った場合に給付される『障害年金』、原則18歳(年度末まで)以下の子どもがいる状態で亡くなった場合に家族に給付される『遺族年金』も、年金保険料未納の状態だと支払われません」

国民年金は老後だけのものではなく、現役の間も恩恵を受ける可能性があるものなのだ。いざという時に、自分や家族を支えるお金になり得る。

保険料を支払えない場合は「免除」の手続きが必須

「『どうせもらえないから』という理由で未納を続けるのは、もったいない。年金は世代間扶養という仕組みで成り立っているので、現役世代が0人にならない限り、破綻しません。少子高齢化が進んで支給額が下がる、もしくは支給開始年齢が上がる可能性はありますが、年金が受け取れなくなることはないでしょう。ただ、収入の関係で、どうしても年金保険料を納められない人もいると思います。その場合は“未納”にせず、“免除”の手続きを行いましょう」

収入が少ない、安定しないという事情がある場合、役所の国保年金課など、該当する部署に申請することで、年金保険料を免除してもらえる制度がある。被保険者自身・世帯主・配偶者の前年の所得に応じて、「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」という4段階で、年金保険料を免除してもらえる可能性がある。

「未納と免除は大違いで、免除の場合は年金保険料を支払った期間としてはカウントされますし、障害年金や遺族年金の権利につながる可能性があります。極端な例ではありますが、40年間ずっと免除だった人は、老齢基礎年金を受け取れるのです。免除の場合、年金額はかなり減りますが、収入が少ないがために年金保険料を支払えない人は、手続きを行うべきです」

場合によっては、年金額には反映されないものの、期間にはカウントされる「保険料納付猶予制度」が利用できることもある。この制度も、障害年金や遺族年金の権利につながる可能性がある。

「免除や猶予の手続きを行ってから10年以内であれば、年金保険料を追納することもできます。3年以上前の年金保険料を追納する場合は加算額が上乗せされますが、年金を満額受け取りたければ、追納しましょう」

老後だけでなく、現役の内にもお世話になることがあるかもしれない年金。年金保険料はしっかり納めておきたいが、どうしても捻出できない場合は、免除の手続きをお忘れなく。
(有竹亮介/verb)

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