【日経記事でマネートレーニング7】相場ニュースを読む~解読・マーケット指標~
提供元:日本経済新聞社
このコーナーでは日経電子版の記事を読むことで資産形成力のアップを目指します。実際のニュースやコラムを引用し、初心者には難しく思えるような用語をかみくだき、疑問点を解消していきます。金融・経済ニュースをどれだけ読みこなせるかは投資のリテラシーそのものです。日々の情報にリアルタイムで動ける実践力を養いましょう。
7回目は相場ニュースを取り上げます。今回はあえて上級レベルの記事をとりあげました。初心者向けの本コーナーにあえて掲載した理由は、投資家のリテラシーとしてのゴールを知ってもらいたかったからです。たとえれば、資産形成スクールの「投資科」で、自分の偏差値がどれぐらいかを知ることは一定の動機付けになるということです。
私見ですが、サンプル記事内容は偏差値60~63程度の難易度でしょうか。難しい理由は株式市場を多面的に分析するために、いろいろなマーケット指標が紹介されているからです。割高・割安を示す指標やおかねの動きを意味する指標、市場心理の好悪のシグナル――じつに多彩です。
この程度の記事をすらすら読めれば、マーケットのリテラシーは間違いなく上級レベルです。そして複数の指標を読み込み、有機的につなげて相場全体を分析できるようになるともう卒業レベル。自分自身で相場を評価し、メディアの情報を批判的に咀嚼できるようにもなります。
「移動平均」は要するに投資家の平均買いコスト
前置きはこれぐらいにして早速、サンプル記事を読んでいきましょう。29日付けの日経の記事です。エッセンスを抜粋していますのでぜひ、日経電子版か朝刊の原文をご覧ください。
まず、アレルギーが出るとすれば「テクニカル分析」ということばでしょう。テクニカル分析といっても、実際はマネーの動きを意味する「需給分析」を伝えている場合が大半です。
たとえば25日移動平均は文字通り、過去25日間=1か月間の平均的な値動きです。おおざっぱに言うとこの1カ月で買った市場関係者の平均値といえます。もし、きょうの日経平均株価が25日移動平均を下回ると、短期の投資家が含み損を抱えている状態になった、とみなせるわけです。含み損を抱えると市場心理の悪化につながります。
逆に移動平均より上で維持できれば、売っている投資家の大半は「利食い」なのでハッピーな状況にあるわけですね。
25日移動平均は過去1カ月間の投資行動のおおざっぱな履歴であり、おおよその含み損益の分岐点というわけです。需給要因と表裏一体で、少なくとも「テクニカル」な分析ではありません。
騰落レシオ=需給、日経平均の予想PER=バリュエーション
ではひとつひとつみていきましょう。相場指標は意味を覚えるより、実践的な場面での使い方が大切になります。
①業種別日経平均=東証1部上場企業から500社を選び、36業種にふるいわけた日経平均。業種ごとの値動きがわかる
②テクニカル分析=上げ下げのリズムや値幅、市場心理などを基にした定量分析
③25日移動平均=過去25営業日の平均値で短期投資家の平均的な買いコスト。13(26)週移動平均は中長期投資家の含み損益分岐点
④騰落レシオ=全銘柄のうち値上がりしている銘柄数の比率。市場全体にまんべんなく投資マネーがゆきわたっているか、限定的なのかを示すサイン
⑤東証1部売買代金=東証1部上場企業の売買代金
⑥東証株価指数(TOPIX)=東証1部上場企業全体の値動きを示す指数
⑦浮動株比率=市場で流通され、一般投資家が売買できる株式が浮動株。発行している株式全体で、浮動株の占める割合が浮動株比率
⑧リバランス=主に機関投資家が一定の比率になるよう株式資産の過不足を調整する売買や投資行動
⑨日経平均の予想PER=日経平均株価をひとつの企業にみたてて予想1株利益を出し、日経平均株価を割った値
では、いつものようにあえてかみくだいて直した記事をみましょう。
騰落レシオは投資マネーが中小型株にまでいきわたっているかどうかをみる代表的な需給指標です。一方、日経平均の予想PERは日経平均株価が業績のトレンドと比べて割高なのか、割安なのかをみるバリュエーション指標です。
バリュエーション指標は3~5年単位の時間軸ですし、25日移動平均や騰落レシオは3~6カ月前後でみる短中期の時間軸です。
日本経済新聞に限らず、メディアでは記事の分量が多くなると幕の内弁当のようにいろいろな指標が詰め込んで伝えられます。丁寧に書かれているのはありがたいのですが、初心者はそれぞれの指標と指標の意味がつながらないので「わかったようでわからない状態」に陥ります。
(日本経済新聞社 コンテンツプロデューサー 田中彰一)