課税タイミングは「売却時に利益が発生していた時」
税率20%以上!? 投資で得た利益にかかる「税金」のキホン
投資を始める際に気になることは、「どのくらい利益が出るのか」という部分ではないだろうか。予測などを見ていると、楽しみになってくるもの。
しかし、その利益、すべてが手に入るわけではないようだ。「投資で得たお金も、給与などの収入と同じように所得税・住民税がかかります」と教えてくれたのは、大和総研主任研究員の是枝俊吾さん。
投資で得た利益には、どの程度の税金がかかるのか、教えてもらった。
投資で得た利益に課せられる税率は20.315%
「原則として、株式投資で得た利益や配当金、預貯金の利子、投資信託の分配金には、20.315%の税金が課されます。その内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です」(是枝さん・以下同)
例えば、100万円で始めた株式投資が、105万円に増えたとする。利益となる5万円に対して税金が課されるため、税額1万157円が差し引かれ、3万9843円が手元に残る。
「20.315%の税率は、結構大きいですよね。給与所得者の場合、給与にかかる所得税・住民税を合わせて20%以下で済んでいる方が多いと思うので、給与以上に税金が引かれると考えた方がいいと思います。利益を予測する際も、約2割は引かれると考えておきましょう」
税金が発生するのが「金融商品の売却時」
投資で得た利益に20.315%の税金が課されることはわかったが、どのタイミングで税金は引かれるのだろうか。
「配当金や分配金が支払われる場合は、口座に振り込まれるタイミングで課税されます。基本的には、自動的に20.315%差し引かれた状態で振り込まれるので、確定申告をする必要はありません」
もう1つ、課税されるタイミングは、株式やETF、投資信託の売却時に、利益が発生していた場合。金融商品を売り、利益が確定して初めて税金がかかる。どれだけ値上がりしても、売るまで税金はかからないのだ。
「例えば、100万円で買った株式を、105万円で売った場合に、利益の5万円が課税対象になります。この売却益にかかる税金は、自分で計算し、確定申告で納めなければいけません」
金融商品を購入した金額、売却した金額を把握したうえで計算しなければいけない。特に積み立てで投資を行っていると、ややこしい手続きになってしまう。
「個人での納税は手間がかかるので、現在は証券会社や銀行が納税の手続きを代行してくれる『特定口座(源泉徴収あり)』という取引口座があります。売却時に得た利益や損益を計算し、税金を差し引いた状態でお金を振り込んでくれるので、投資初心者におすすめです。自動的に納税できるため、納め漏れの心配もなくなります」
一部のネット証券では、「特定口座(源泉徴収あり)」がデフォルトの状態になっていることもあるが、証券会社や銀行で口座を開設する時にはきちんと確認した方がいいだろう。
「原則として投資で得た利益は課税されますが、1つだけ例外があります。投資信託の特別分配金は非課税です。特別分配金は元本払戻金とも呼ばれ、投資信託の基準価額が購入した時の価額を下回った場合に支払われるもの。投資家にとっては元本の一部が払い戻されたに過ぎないため、課税されません」
外貨預金で得た利益は「確定申告」の必要あり
やや応用編にはなるが、外国証券で運用した場合も税金の仕組みは変わらないのだろうか。
「国内の証券会社や銀行を通じて取り引きを行えば、国内の投資と変わらず、利益に対して20.315%の税金が課せられます。もし、外国で既に配当金や分配金に税金がかかっている場合は、国内の税金が減額される外国税額控除制度があるので、活用するといいでしょう。ただし、確定申告が必要なので忘れないように注意が必要です」
預貯金の金利はかなり低いものの、預貯金で発生した利子にも課税される。では、外貨預金の利子も課税対象となるのだろうか。
「もちろん利子には課税されます。ただ、国内の預貯金と同じように、口座に振り込まれる際に自動的に税額が差し引かれます。外貨預金で注意すべきは、外貨を円やほかの外貨に換える時。そのタイミングで得た利益は雑所得となり、確定申告をする必要があります(※)。自動的に計算してくれる仕組みはないので、忘れずに申告しましょう」
(※)年収2,000万円以下の給与所得者で、給与所得および退職所得以外の、為替差益を含めた所得が年間20万円以下の場合は申告不要(ただし、複数の会社から給与を得ていないことが条件)。
国内での株式やETF、投資信託での投資であれば、ほとんどの場合、自動的に税金を計算してくれる仕組みがあるようだ。納め漏れの心配はないが、そもそも税率20.315%は大きな負担。税金がかかることはしっかり念頭に置いておこう。
(有竹亮介/verb)
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是枝俊悟
大和総研 金融調査部 主任研究員。専門分野は税制、社会保険制度、会計制度、金融商品取引法。証券税制を中心とした金融制度や税財政の調査・分析を行うほか、女性と男性の働き方や子育てへの関わり方についても、ライフワークとして情報発信を行う。