1年間に受け取ったお金と支払ったお金をチェック!
確定申告に必須!会社から渡される「源泉徴収票」ってどう見るの?
年末から年明けにかけて、会社から配布される源泉徴収票。よくわからないからと、ろくに見ずに捨ててしまう人もいるのでは? 実は、確定申告や住宅ローンを組む際に必要になる重要な書類だ。
では、源泉徴収票にはどんなことが記載されているのだろうか。税理士の中山慎吾さんに、源泉徴収票の見方を教えてもらった。
源泉徴収=給与から所得税が天引きされること
「そもそも源泉徴収とは、従業員の毎月の給与所得に応じて、会社が給与から所得税を差し引くことです。所得税は各自が申告して納税するものですが、給与所得者に関しては、給与を支払っている会社が計算し、天引きしてくれるので、多くの方は確定申告が不要となるのです」(中山さん・以下同)
源泉徴収票が配布されるタイミングは、「12月から翌年の1月に行われる年末調整の計算が完了した時」と「退職時」。年末調整後は1年間の給与や納めた所得税の額が記載され、退職時はその年の1月1日から退職日までの給与や納めた所得税の額が記載される。
「年末調整とは、会社が給与から差し引いた所得税と実際の納税額の差を1年の最後に確認し、差し引いた所得税が少ない場合は追加徴収、多い場合は還付することです。本来、税金の額は年収が確定してからでないと決まらないため、給与からは少し多めに所得税が差し引かれることがほとんど。12月支給の給与がそれ以前の月より若干多めの人が多いのは、年末調整で還付されているからなのです」
税理士が解説!「源泉徴収票」の見方
「源泉徴収票には、1年の間に会社から支払われた給与や賞与などの総額、所得税を導き出すために必要な課税所得(収入から健康保険や厚生年金といった社会保険料などを差し引いたもの)の額、所得税の決定額が記載されています。何がどの部分に記されているのか、紹介しましょう」
(1)支払金額
給与や賞与、各種手当などを含めた総支払額。1月から12月までの1年間の合計で、一般的に「年収」と呼ばれる。
(2)給与所得控除後の金額
「(1)支払金額」から年収に応じた給与所得控除が差し引かれた金額。一般的に「所得」と呼ばれる。所得税や住民税は所得の額で決まるため、給与所得控除で所得額が低くなると税負担が軽くなる。
給与所得控除とは経費に当たるもので、給与所得者の場合は年収によって金額が決まる。給与所得控除の額は、以下のようになっている。
「令和2年分から、年収850万円以下の方は、給与所得控除が一律10万円引き下げられました。その代わり、基礎控除が38万円から48万円に引き上げられたので、差し引きゼロで課税所得に影響はありません。ただ、年収が850万円を超える方は、一律で給与所得控除の上限が195万円に引き下げられたので、課税所得が増え、増税になるといえます。ちなみに、年収850万円を超えて『本人が特別障害者』『年齢23歳未満の扶養親族がいる』『同一生計配偶者または扶養親族が特別障害者』のいずれかに該当する方は、『所得金額調整控除』が適用され、課税所得が減ります」
(3)所得控除の額の合計額
給与所得控除以外の控除の額。毎月天引きされた社会保険料などの年間の合計と、年末調整で計算された所得控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除などが含まれる)を合わせた金額になっている。生命保険料控除、地震保険料控除など、会社に申請した控除が多いほど、この欄の金額は大きくなり、年末調整での還付額も増えることになる。
(4)源泉徴収税額
納める所得税の決定額。「(2)給与所得控除後の金額」から「(3)所得控除の額の合計額」を引いた金額が課税対象であり、それに所定の税率をかけた額が所得税の決定額となる。
課税所得ごとの所得税の税率は以下の通り。所得税は「課税される所得金額×所得税率-控除額」で計算できる(課税所得は1000円未満の端数金額切り捨て)。
(5)所得控除の裏付けとなる金額
配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、地震保険料控除など、個々によって異なる所得控除の内容が記載される。
確定申告をするなら必須の書類
「源泉徴収票は所轄税務署や従業員の住所地の役所などにも届けられるため、給与に関して税務署や役所に申告する必要はありません。ただ、医療費控除などで確定申告をする時や、住宅ローンを組む時、転職・再就職、賃貸契約などの際に、収入額や所得税の金額を証明する書類になるので、大事に保管しましょう」
ちなみに、源泉徴収票を紛失してしまったとしても、勤めている会社の経理部などに申請すれば、再発行してもらえる。退職時の源泉徴収票を再発行したい場合は、以前の勤務先に依頼しよう。再発行には、多少時間がかかると想定しておいた方がいいだろう。
毎年配られていても、扱い方がわからず放置してしまいがちな源泉徴収票。確定申告などの大事な局面だけでなく、ライフイベントでも必要な場面が出てくるうえに、年収などの個人情報が詰まっているため、慎重に扱った方が良さそうだ。
(有竹亮介/verb)
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中山慎吾
トランス税理士法人代表税理士。大学卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社、日本橋支店にて資産運用コンサルティング課に従事。その後、「お客様の資産形成を長期的にサポートするには、証券運用だけでなく、複合的なファイナンシャルプランニングを実践する業態を作り出す必要がある」という思いから2007年に個人向け資産運用コンサルティング会社を共同で創業。現在は、個人向けの税務を中心に顧客の資産形成をサポートしている。