“手軽なのに手厚い”が投資家にとっての最大の魅力

最近よく見かける「直販投信」そのメリット・デメリットとは?

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投資家から集めたお金をまとめ、運用のプロが株式や債券などに投資するパッケージ商品「投資信託」。ほとんどの投資信託が証券会社や銀行、郵便局などの販売会社を通して販売されているが、昨今、投資信託の運用会社が直接投資家に販売する「直販投信」が増加傾向にある。

そこで、直販投信のメリット・デメリットについて、投資信託に詳しいファイナンシャルプランナー・大地恒一郎さんに聞いた。

直販投信活性化の背景に独立系運用会社の努力あり

かつて投資信託運用会社に勤めていた経験のある大地さんによると、直販投信は1990年代後半に一度注目されたとのこと。

「1994年には既に『受益証券等の直接募集等に関する規則』が制定されていて、1997年頃から野村・大和・日興といった大手の運用会社が直販担当部署を設け、直販専用ファンドを作りました。ただ、運用会社が販売会社の役割も担おうとすると、クリアしなければならないレギュレーションが多く、残高もあまり増えなかったことから、次第に直販から撤退することとなったのです」(大地さん・以下同)

では、なぜ今また直販投信が増え始めているのだろうか。その背景には、インターネットの普及があるという。

「リーマンショックの後から、世界的にネット証券や独立系運用会社が立ち上げられる流れが生まれました。また、インターネットの普及によって個人投資家、特に若い世代がオンライン上で投資信託を購入するようになったため、直販投信への注目度が高まっているのだと考えられます。1990年代の直販投信は電話でのやり取りが中心でしたが、現在の直販投信はネットありきの商品です」

ネット上で手軽にやり取りできるだけでなく、販売会社を通さない直販投信はほとんどがノーロード(手数料無料)というところも魅力といえるだろう。ただ、それだけが注目度を高めた理由ではないようだ。

「独立系運用会社のさわかみ投信や鎌倉投信、レオス・キャピタルワークス、コモンズ投信などは、各会社で特徴的な運用方針を打ち出しており、パフォーマンスの良好な商品が多いといったところが評価されているように感じます。直販投信のファンになった方が『ほかの独立系運用会社はどうなんだろう?』と調べ出したことで、直販投信が活性化し始めているのかもしれません」

販売会社を挟まない直販投信は「手続きがラク」

盛り上がりを見せ始めている直販投信だが、受益者となる投資家にとってのメリットはほかにあるのだろうか。

「現在は独立系運用会社だけでなく、三菱UFJ国際投信と三井住友DSアセットマネジメントも直販を始めています。すべてに共通したメリットとして、販売会社を挟まずに運用会社と直接やり取りができ、手続きもネットやスマホなどで完結する場合があり、比較的簡略化されているという点が挙げられます」

ノーロードかつ手続きが簡便となれば、投資に対するハードルがかなり下がるだろう。また、独立系運用会社の場合、取り扱う直販投信が1~2本と限られていることも1つのメリット。

「何百本もの投資信託を扱う大手運用会社では、1つの投資信託に注力することが難しく、月一で発行されるマンスリーレポートもフォーマット化されていることがほとんどです。一方、独立系運用会社では1~2本の投資信託に注力できるため、マンスリーレポートをはじめとした受益者向けの情報提供が手厚い場合もあるといえます」

直販投信を購入するたびに「口座」が増える可能性大

逆に、独立系運用会社が扱う直販投信は数が限られていることが、デメリットとなってしまう場合もあるそう。

「保有している直販投信とは別の資産クラスに興味を持ち、別の商品を買うとなったら、別の運用会社や販売会社で新たに口座を作らなければいけません。保有する銘柄が増えれば、口座が増えることにつながるので、複数の銘柄を保有したいと考えている人は、例えば数多くの投資信託を扱う販売会社を利用する方が効率的かもしれません」

「口座の管理が苦手」「口座が増えると面倒」と感じる人も、複数の直販投信を保有することは避けた方がいいかもしれない。

とはいえ、パフォーマンスの良好な商品が多く、手数料や手続きの面でもメリットのある直販投信。投資の1つの形として、選択肢に入れてみてはいかがだろうか。
(有竹亮介/verb)

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