1年に一度“買い付けしていない”口座に限り切り替え可能
「NISA」&「つみたてNISA」切り替えHow to
「NISA」と「つみたてNISA」は、1人につきどちらか1つの口座しか利用できない。ただし、1年に一度だけ切り替えることができるという特性がある。また、金融機関の変更も可能だ。
運用を開始してから、「『NISA』より長く運用できる『つみたてNISA』に変更したい」「もっと手数料の低い金融機関に変えたい」と感じるようであれば、切り替えを検討してもいいだろう。そこで、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんに、「NISA」「つみたてNISA」の切り替え方法を聞いた。
同じ金融機関内での切り替えなら手続きは簡単
「『NISA』から『つみたてNISA』、または『つみたてNISA』から『NISA』への切り替えは可能で、切り替えた後も非課税期間内であれば口座や資産を保有し続けることができます」(山中さん・以下同)
投資商品の買い付けは、どちらか1つの口座でしかできない。しかし、切り替え以前に買い付けた商品は、「NISA」なら最長5年間、「つみたてNISA」なら最長20年間、非課税のまま保有し続けることができる。切り替えたからといってすぐに売却しなければならないわけではなく、値上がりのタイミングを待つことができるのだ。
「切り替えの方法は金融機関によって異なりますが、基本的に同じ金融機関内での切り替えであれば、届け出をすればOK。切り替えと同時に金融機関も変える場合は、もともと口座を開設していた金融機関への届け出が最優先です」
●同じ金融機関内で切り替える場合
公式サイトやコールセンターで切り替えの旨を伝えると、変更届出書が郵送されてくる。必要事項を記入して返送すれば、手続き完了。ネット証券の場合は、オンライン上で完結することが多い。
●金融機関を乗り換えて切り替える場合
A社からB社に切り替える場合、まずA社に切り替えの旨を伝えると、金融商品取引業者等変更届出書が郵送されてくる。必要事項を記入して返送すると、非課税管理勘定廃止通知書が発行される。その後、B社に非課税管理勘定廃止通知書と非課税口座開設届出書をあわせて提出すれば、手続き完了。
A社で保有していた商品を売却し、もともとの口座を廃止していい場合は、A社にその旨を伝えると金融商品取引業者等変更届出書ではなく非課税口座廃止届出書が郵送されてくる。必要事項を記入して返送してからの流れは、上記と同様だ。
「過去に『NISA』口座を開設したことを忘れて『つみたてNISA』口座を開設しようとしたところ、『既に口座があります』と言われてしまい、切り替えに時間がかかったケースがあります。思い立ったタイミングで運用を始められないこともあり得るので、心配な方は現在口座を開設している証券会社に確認しましょう」
ちなみに、制度を切り替える際、もともとの口座やそれまでに買い付けた商品を保有し続けることはできるが、その商品を新設した口座に移行することはできない。「NISA」と「つみたてNISA」ではそもそも制度が異なり、金融機関によって取り扱い商品も異なるため、切り替えて口座を新設する場合は、改めて商品を選ぶことになる。
切り替えの条件は「買い付けしていないこと」
1年に一度切り替えは可能だが、どのような状況でも自由にできるわけではないという。
「『NISA』『つみたてNISA』は1月1日~12月31日を1年とカウントし、その間に一度でも買い付けを行うと、その年は切り替えができなくなります。例えば、『つみたてNISA』で毎月20日に積立する設定にしていて、1月20日に積立が実行されたら、翌年まで切り替えられないのです」
また、一度も買い付けしていなかったとしても、10月に入ってしまうと年内の切り替えができなくなってしまう。切り替えを行う場合は、計画的な届け出が重要といえるだろう。
「1月に切り替えると、非課税投資枠をフル活用しやすくなります。そのためには、翌年開始に向けて10月頃に動き出すといいでしょう。書類のやり取りに時間がかかることを考慮すると、秋口に動き出すことで年内の非課税投資枠をフル活用しながら、ちょうど年が変わるタイミングで切り替えられると思いますよ」
金融機関を乗り換えると「ロールオーバー」できない
金融機関を乗り換える場合には、1つデメリットが生じることも、覚えておいた方がいいだろう。
「非課税期間の途中にA社の『NISA』からB社の『NISA』へ乗り換えることもできますが、A社でのロールオーバーができなくなるというデメリットがあります」
ロールオーバーとは、「NISA」で一度だけ利用できる制度。5年間保有してきた金融商品を、同じ金融機関内の新たな「NISA」口座に移行し、さらに5年間運用できるというもの。仮に含み益が出て年間120万円を超えたとしても、全額ロールオーバーして運用を継続できる。もしA社で保有している商品が長期保有前提のものや、今後値上がりが期待できるものだとすると、乗り換えずにロールオーバーする方がいい結果につながるかもしれないが、金融機関を変更していた場合、それができなくなる。金融機関の変更は慎重に判断したいところだ。
「NISA」「つみたてNISA」ともに非課税期間の途中でも切り替えられるが、切り替えれば既に保有している商品の積立を継続できなくなるという側面もある。検討している人は、本当に必要かじっくり考えてみよう。
(有竹亮介/verb)
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山中伸枝
心とお財布を幸せにする専門家、ファイナンシャルプランナー(CFP(R))。米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」講演、ライフプラン相談、執筆など多数。