【日経記事でマネートレーニング9】相場ニュースを読む~債券と金利と利回り~

提供元:日本経済新聞社

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このコーナーでは日経電子版の記事を読むことで資産形成力のアップを目指します。実際のニュースやコラムを引用し、初心者には難しく思えるような用語をかみくだき、疑問点を解消していきます。金融・経済ニュースをどれだけ読みこなせるかは投資のリテラシーそのものです。日々の情報にリアルタイムで動ける実践力を養いましょう。

9回目は本シリーズで初めて「金利」を取り上げます。経済やマーケットを学ぶうえで、もっとも大切な要素の1つが金利です。そして、おそらく経済初心者や運用経験の浅い投資家にはとっつきにくい分野と思われます。

債券相場は上昇、利回りは低下といわれてわかりますか?金利と利回りってどう違うか説明できますか?金利の先高観と相場の先高観って正反対って知ってましたか?

30年以上前になりますが、筆者は「ボンド(債券)ディーリング」で記者デビューしました。取材に行っても「宇宙語」を話されているようでさっぱり理解できず毎日うろたえていました。しかし、金利を理解できるようになると「マクロ経済」がわかるようになり、株式相場や為替相場の全体像がつかめるようになります。グローバルマネーの潮流を読めるというスキルも養えます。

出発点は「金利と利回りと表面利率」の違い

本コラムが掲載される2021年は米国金利の動きが特に注目されている歴史的局面と思われ、毎日のように米国の金利に関する記事が載っています。ところが、記事がわかりにくいのです。

なぜでしょう?筆者なりに考えたところ「金利の話」と「債券の話」と「利回りの話」がごっちゃになって伝えられているためとみられます。「視点」や「基準」が異なるうえ、専門性が高い用語を使っているわけでもないので注釈がありません。まずはサンプル記事をみてみましょう。

ニューヨークから配信された場況の冒頭の一節で、本シリーズでもっとも短い3行の記事です。債券の記事で面食らうのは類似語が大量に登場する点です。似て非なる意味なので慣れないと読み解けません。債券は基本的に「億円」単位で売買する生命保険会社や投資信託会社などのプロのマーケットです。預貯金くらいしか金利になじみのない個人投資家には多彩な用語に触れる機会が少ないというのも理解を難しくしています。

この短文を分解してみると、なんと9つもクエスチョンが出てきました。つまずかずにさらさらと読めるという方は金融業界のひとなどに限られ、まったくわからないか、なんとなくは読めるが詳しく解説できないというひとが大半かなと思います。

「長期債≠1年超先の金利=長期金利≒10年物国債利回り」が公式

仮に定価(投資家向け希望小売価格?)100円で1%の債券があったとします。1年で1円もらえるわけです。ところが物価が上昇して1年で2%上がる環境だとします。すると債券で1%もらっても魅力がないし、実質的に機会損失といえます。債券は買われなくなるので価格が下がります。仮に100円→99円に下がったとしましょう。この債券の価値はどうなりますか?

債券は最後までもっていれば元本(この例では100円)で戻ってきます。これを償還といいます。つまり99円で買ったひとは1%の利子と償還時に1円の差益が手に入ります。

(1%+1円)÷投資額99円=2.02%

この2.02%を利回りといいます。債券の価格が下がったので利回りが上がった理屈がわかりますよね。2.02%は物価上昇率とほぼ同じになった点に注目してください。先行き景気が良くなって物価が上がるだろうという前提にたつと、いまの債券には魅力がないという結論にたどり着き、債券が程よく下がって利回りが適正な水準に上がる、という現象を生むのです。そしてこれこそが市場が出した長期金利の実勢といえるわけです。

ところで、「先行き」とはいつのことでしょうか。一般には1~2年程度先を指します。この1~2年先の金利を長期金利といいます。長期金利をどこで調べるかというと、米国や日本で取引されている期間10年の国債の売買結果で判断します。1年先だから1年先の債券、ではない点に注意が必要です。市場で取引された10年国債の値段を利回りに置き換えたものが長期金利です。ややこしいですね。

債券=利子のついた借金の証書。期間が決まっていてたとえば10年後に元本を返す債券なら10年債という。サンプル記事では米国が借金のため発行する債券が題材

長期債=元本が返ってくるまでの年月が一般に5年超~10年前後の債券。5年を中期債といったり、20~30年を超長期債と呼んだりもする

相場=金融商品(ここでは債券)の価値についての金額評価。利回りとは逆になる

④長期金利=1年を超える期間で貸し借りする金利。会計上も1年超か否かが目安

⑤指標=目安や基準とされやすい数値

表面利率=額面に対して支払われる利子。クーポンともいう。株式の配当に当たる。100円の借金証書があり、発行した国や会社が毎年1円払うといえば表面利率は1%

10年物=発行時に償還までの期間が10年の債券。実際に売買するときは発行から時間が経っているので償還までの残りの期間が9年9カ月とか9年半に縮んでいることも多い。そこで10年「物」という

利回り=債券の表面利率と価格と保有期間から算出した実勢金利。投資家からみるとリターン、運用収益になる

価格=債券の値段。物価上昇分より価値がないと下がる

では、いつものようにあえてかみくだいて直した記事をみましょう。

筆者は債券も株も為替も担当しましたが、奥が一番深いのは債券かなという印象です。経済政策や財政・金融政策と密接に絡むので、当然といえば当然ですが、金利が株式市場や海外金融商品にも大きな影響を与える点で個人投資家にとっても習熟しないといけない基本リテラシーかと考えます。次回も金利をテーマに取り上げます。

 

(日本経済新聞社 コンテンツプロデューサー 田中彰一)

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