東証ETFのキーパーソンに聞く

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独立系運用会社のシンプレクス・アセット・マネジメントがETFに乗り出した理由・前編

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独立系運用会社のなかで、国内トップクラスの運用資産額を誇るシンプレクス・アセット・マネジメント。機関投資家向けのヘッジファンドの運用をメインに行うかたわら、2009年8月から個人投資家もターゲットにETFの提供を開始し、2021年2月末現在、17本のETFを上場している。

シンプレクス・アセット・マネジメントにおいて、ETFビジネスを立ち上げ、現在も運営を担当しているのがディレクターの棟田響さん。前編では、部門立ち上げの経緯や当時の苦労を伺った。

監査法人から運用会社への転職


――ETFのお話を伺う前に、シンプレクスという会社について、教えていただけますか。

「シンプレクス・アセット・マネジメントは、1999年11月にソロモン・ブラザーズのトレーディングチームに所属していたメンバーによって創設された独立系運用会社です。当初は債券を中心としたヘッジファンドを運用していましたが、現在では日本株の運用をメインに行っており、それとは別軸でETFも運用しています」

――ETF事業は棟田さんが立ち上げたと伺ったのですが、入社はいつ頃だったのですか?

「私は2008年5月に中途入社しました。それまでは、新卒で監査法人に入り、監査やM&Aのアドバイザリーなどを5年ほど行っていました」

――もともと投資やETFに携わっていたわけではなかったのですね。

「大学に入った時期がドットコム・バブルで、株に興味を持ったこともあり、プライベートで投資の経験はあったのですが、仕事でETFなどに触れることはありませんでしたね。ただ、シンプレクス・アセット・マネジメントに入社した時には、ファンドマネージャーとしてアクティブ運用をしたいという思いがありました」

“独立系”だからこそチャンスが見込めたETF


――シンプレクス・アセット・マネジメント初のETF「WTI原油価格連動型上場投信(1671)」は2009年8月に上場されましたが、棟田さんの入社からそこまで時間が経っていないですよね。

「そうなんです。私が2008年に入社して、すぐにリーマンショックが起こりました。既存のビジネスの急成長が期待できない苦しい状況になってしまったので、会社全体で“新しいことにチャレンジしよう”という方針が掲げられました。社長はファンドの直販ビジネスに興味があったようですが、当時はなかなか厳しいという判断になりましたね。

そのなかで、当時20代だった私と同じく20代だったトレーダーの2人で目を付けたのがETFでした。まだラインアップが少ない時期で、これなら新規ビジネスとしてチャンスがあるのではないかと考えたんです」

――事業プランの1つとして、動き出したんですね。

「そうですね。当社が独立系運用会社であることも、ETFにチャンスがあると踏んだ理由の1つです。系列の販売会社があるわけではないので、個人投資家向けの投資信託を作っても、積極的に売ってもらえる窓口がないんですよね。

その点、ETFは上場さえすれば、棚に載せることができて、誰にでも買ってもらえます。販売会社によって売れ行きをコントロールされることがないので、我々でもいけると思ったというか、そこしかなかったんです」

――シンプレクスさんにとっては、ETFがもっとも個人投資家に届きやすいツールだったというわけですね。

「はい。ただ、私自身、金融の実務経験が浅く、会社としてもETFを扱うのは初めてだったので、勝手を知らないことも多く、すべてが手探りでした。通常業務を終業時間まで行い、それからETFについて調べていましたね。毎日、夜中まで(苦笑)。

2008年末くらいから動き出して、最初の1本目を上場したのが2009年8月だったので、1年かからずに上場できたことになります」

金融初心者がチャレンジした日本初の試み


――最初のETFに「原油」を選んだのは、なぜなのでしょう?

「当時のETFはTOPIXや日経などの日本株に加えて、業種別の銘柄も何種類か出ていて、中国や新興国の株価指数を追う商品も出ていました。でも、原油はなかったんです。

ちょうど2008年は原油の価格が上昇していて、ニュースでも毎日取り上げられていたので、なんでETFにないんだろう? って不思議に思っていました。原油のETFがあれば、自分もトレードしてみたいし、いいんじゃないかと」

――「自分もトレードしたい」というきっかけは、すごく自然ですね。

「そう思い描いたものの、その時点で先物に直接投資するETFってなかったんですよ。会社としてETF自体が初めての取組だし、原油に投資するETFは国内でも初めての試みということで、初めて尽くしで大変でした(苦笑)。

ETFを調べていくなかで、『コモディティに投資するETFは特例扱いになるため、金融庁の許可が必要』ということを知り、金融庁を何度も訪問する日々が始まりました。金融庁から『ライセンスが取れました』と連絡が来た時は、会社中の皆さんが拍手をして労ってくれましたね。いつの間にか、私たちの熱意が社内に伝わっていたんだなと、感動しました」

――社内にも頑張りが伝わるくらい、奔走していたのですね。「WTI原油価格連動型上場投信」を上場して、反響はいかがでした?

「今ほどの流動性はありませんでしたが、当時としては比較的売買されるETFになりましたね。当社としては、ETFを扱い始めたことで、東京証券取引所や大阪証券取引所などの公的な機関とのつながりができて、会社として次のステージに進めた感覚がありました。歴史が浅く、知名度もそれほど高くない会社でしたが、ETFの効果で認知が広がったように思います。それまでは、オフィスが新丸ビルにあるということが、信頼される一つの材料でしたから(笑)」

初めてETFを企画した時と同じように、「自分が投資したいかどうか」という軸で、新商品の開発を続けてきたという棟田さん。後編では、現在の日本のETF市場について、抱いている感触と展望を伺う。
(有竹亮介/verb)

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