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3万円超えの日経平均株価はバブルなのか?~最高値をつけた1989年末時との違いは~

提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント

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2021年に入り、米国を始めとした主要国の株価が過去最高値を更新する中で、2月16日、日経平均株価は30年半ぶりに3万円の大台を回復しました。昨年からのコロナ禍で、実体経済の回復が十分進まない中での急ピッチな株価回復(図2)には、「バブル」なのではとの見方も散見されます。そこで、1989年のバブル当時と現在の日経平均株価の状況を確認しつつ、今後の見通しを探ってみます。

1989年12月末、日経平均38,915円の背景

1989年当時の株価上昇の背景を見てみましょう。

1985年の「プラザ合意」をきっかけに大幅な円高・米ドル安が進行し、輸出が大打撃を受けた日本は深刻な不況に陥りました。政府は積極財政に方針を転換、日銀は大幅な利下げを敢行しました。こうした中、株式は「トリプルメリット」や「ウォーターフロント」といった「テーマ」物色によって上昇傾向を強めていきました。

「トリプルメリット」とは「円高、金利安、原油安によるコスト低下」を指し、業績改善が期待された電力やガスなどの銘柄が買われました。また「ウォーターフロント」とは、再開発プロジェクトにより地価が高騰した東京湾岸地域のことで、同地域に土地を保有する造船、ガス、鉄鋼などの銘柄が買われました。株価は割高と言われましたが、このような「市場テーマ」が株価上昇の原動力となり、株価をさらに押し上げていきました。

日銀は、地価高騰に対する国民の不満が急速に高まる中、1989年5月以降、金融引き締めに転換し、3度に渡り公定歩合を引き上げました。一方、株価は1989年末まで上昇を続けました。1990年に入り、当時の大蔵省は土地の総量規制を導入するなど、世論を背景に明確な「バブル(=悪玉)つぶし」の政策を断行しました。これにより金利は急上昇、その後のバブル崩壊につながりました。

現在の日銀はマイナス金利政策を導入し、長期金利を0%程度に抑制する政策を取っています。また、ETF(上場投資信託)の購入などは株価を下支えする政策と見られ、「民間バブル」潰しに積極的に動いたとされる1989年当時とは政策の方向性が全く異なると言えそうです。

バリュエーションの差は歴然

1989年当時と現在とでは、株価のバリュエーションが大きく異なります。3月16日時点の東証第1部の予想PER※1は、約25倍ですが、1989年12月末には60倍を超えていました。同じくPBR※2についても、現在は約1.4倍であるのに対し、1989年末には5倍を超えていました。もっとも単独決算、連結決算などの違いはありますが、当時のバリュエーションが非常に高水準だったと言えます。

これらの高バリュエーションを補完する「Qレシオ」という言葉も生まれました。企業が保有する土地や建物、有価証券などの資産を時価評価で企業価値を算出、これを「実質純資産」として株価と比較します。土地や有価証券の価値が上がっていれば、その含み益を加味して株価を算出するとの考え方です。さらには、将来の値上がりまで織り込んで株価を正当化するといった手法まで編み出されました。

※1:PER(株価収益率) = 株価 ÷ 1株当たり純利益
※2:PBR(株価純資産倍率) = 株価 ÷ 1株当たり純資産額

「1989年の日経平均」と「2021年の日経平均」

日経平均株価(以下、日経平均)は東証第1部上場銘柄の中から選出された225銘柄で構成されており、当初は225銘柄の単純平均が使われていました。構成銘柄の入れ替えについては、1980年代までは上場廃止銘柄のみでしたが、1991年から流動性を勘案した銘柄入れ替えルールが適用となりました。その結果、「1989年の日経平均」と「2021年の日経平均」の構成銘柄では、概ね3分の2以上の銘柄が入れ替わっています。

また、現在は日経平均の構成銘柄上位3社(ファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、東京エレクトロン)で構成比率の約1/4を占めており、これら個別株の動きが大きく反映されます。このことから、単純な指数比較が意味を成すかというのは議論の余地が残るところです。

ちなみに、東証第1部の時価総額上位銘柄を比べると、3月16日時点では、トヨタ自動車、ソフトバンクグループ、ソニーの順番ですが、1989年当時は、NTT、日本興業銀行(現・みずほFG)、住友銀行(現・三井住友FG)となっており、上位10銘柄のうち、6銘柄が銀行でした。

世界経済の正常化が進展すれば、過去最高値更新も視野に

1989年と現在とでは、株式市場を巡る時代背景や株価バリュエーションが大きく違いますが、株価上昇後の動きについては、当局の現状認識と今後の政策の方向性が重要であると考えられます。1989年当時は、地価や株価の大幅上昇が不公平感の象徴となり、公定歩合引き上げや土地の総量規制などバブル抑制策が実行され、その後の株式市場に影響を与えたとも言われています。

3月11日、米国では1.9兆ドルに及ぶ新型コロナウイルス対策のための「2021年米国救済計画法」が成立しました。米国を始め、引き続き多くの主要国では経済を立て直すために財政、金融の両面で支えるとみられます。日本でもコロナ・ワクチンの接種が始まり、コロナ禍の収束が期待されるものの、依然として実体経済の回復は道半ばとなっています。経済の回復が模索される中で、日銀の金融政策や政府の財政政策が進められています。

現在は、世界的に景気浮揚策が打たれており、株式市場にとっては安心材料になるものと考えられます。今後の株式市場は、コロナ後を見据えた景気、企業業績の回復を具体的に織り込みに行く展開が想定されます。順調な回復が現実的なものと受けとめられれば、日経平均株価の過去最高値更新も視野に入ると考えられます。

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(提供元:三井住友トラスト・アセットマネジメント)

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