『東証公式ガイド 精選例題でわかる株式取引ルール』発刊記念 特別企画(前編)

東証IT開発部が語る、いま「株式取引ルール」の書籍を出版する理由とは?

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東証は、2021年4月に『東証公式ガイド 精選例題でわかる株式取引ルール』を発刊し、証券・金融業界で早くも話題となっている。なぜいま東証が取引ルールの解説書を出すことになったのか、またこの書籍をどのように読み進めていったらよいのか、東証マネ部!編集部が執筆担当者にインタビューを実施した。

前編では、出版に至った経緯などについて聞いてみた。

――なぜ今このタイミングで改めて取引ルールの解説書を出したのでしょうか?

まえがきにも書いたのですが、この本の元となったドキュメントは、数年前から完成していたんです。ただ、それは社内の研修用の資料という位置づけだったので、対外的にお見せすることはありませんでした。

この本に書かれている内容は、証券会社の方から問い合わせを受けたらすべてお答えすることなんですが、逆に言えば、問い合わせを受けるまではあえて発信することはなかったんです。でも、隠すようなことではないわけで、だったらいっそのこと証券会社や広く投資家の皆さまに知っておいていただいたほうが、市場の透明性が高まるのではないかと考え、出版の話を進めてみることにしました。

出版に向けた作業は、ちょうど一年前くらいに始まりまして、一般の方に読んでいただくことを前提に、読みやすくなるように何度か校正重ねた結果、完成までに一年がかりとなりました。本当はもっと早くお届けできるとよかったのですが(笑)。

――こういった取引ルールは、未来永劫変わらないものなのでしょうか。

いえ、東証では、実際のマーケットの値動きなどをモニタリングしており、より良いマーケットのためにたびたびルールの見直しを行っています。直近だと、2018年に連続約定気配の制度の見直しを行いました。基本的に、マーケットは売り手と買い手が自由に取引できる場であるのですが、予期しない価格の急変動などによりマーケットが歪むことのないよう、定期的に取引のルールをメンテナンスしています。いまのルールも過去の経験から改善を重ねた結果ではありますが、これで完璧というわけではなく、今後も改善する点が出てくると考えています。

――取引ルールというと、規則で定めるイメージでいたのですが、なぜ編者がIT開発部なのでしょうか。

イメージどおり、東証市場の規則は株式部というビジネス部署が担当しています。私たちIT開発部は、その株式部からの要件(システムで実現したいこと)を受け、開発ベンダとともに、要件どおりのシステムを作り上げる部署です。細かな仕様に関するノウハウは、IT開発部のほうが蓄積しやすかった、ということかもしれません。

――もう少し、具体的に教えてもらえますか。

システムを作り上げるときには、様々な業務の流れを意識しながら、特殊な条件が重なったときでも、想定外のことが起こらないようにしなければなりません。そうしたことを考える能力は、一朝一夕に身に付けるのは難しいので、長年その業務に携わっていた人たちの熟練の業になりがちです。でも、IT開発部としては、新任の担当者であっても早期にそうした能力を身に付けて現場で活躍してほしいという思いがありました。

東証の売買システムである「arrowhead」は、大量の要件定義書や設計書がありますが、それらをすべて読もうとすると、膨大な時間がかかってしまい、新任の担当者がキャッチアップするまでのハードルが高かったんです。この本の元となった資料は、そんな現場のニーズにこたえるべく、「基本事項は抜け漏れなく」、「特殊なパターンも網羅し」、「出来る限り少ない分量で」をコンセプトに作り始めたんです。自分でも思っていた以上にうまくまとめることができたのかなと思っています(笑)。

――大量の要件定義書や資料を読むのは大変そうですね。”例題でわかる”とのことですが、例えばどんなものがあるのでしょうか?

例えば、例題2-01では、「価格優先の原則」を紹介しています。「安い値段の売り注文は、高い値段の売り注文に優先して取引が成立する原則です」と説明されても、具体的にどのようなシーンでその原則が適用されるのか、いまいちピンときませんよね。

そこで、例題では、100円の売り注文と102円の売り注文を比べてみて、どちらが先に取引成立となるのか、「板」という注文を集約したイメージ図を使って解説しています。このイメージ図を参考にすると、なるほど売り注文の場合は「板」の下に書かれている注文の方が優先順位が高いのか、とわかるようになっています。

――なるほど、IT開発部はそうしたドキュメントを必要としていたわけですね。

はい。実際にこの資料は、IT開発部の新任担当者の研修で使っていますし、あとは証券会社などのユーザ様からの問い合わせを受ける窓口の担当者の研修でも使っています。この本に書かれている内容が頭に入っていれば、ほぼ完ぺきにユーザ様からの問い合わせには回答することができるくらいに網羅性があると思っています。

ここまでは、出版に至った経緯が中心でしたが、後編では、「この本をどう活用すれば良い」や「そもそも株式投資って難しいの?」などについてお話します。

<後編へつづく>

(東証マネ部!編集部)

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