使い分けのポイントは「引き出しの自由度」と「運用期間の長さ」

FP直伝!「iDeCo」&「つみたてNISA」併用のコツ

TAGS.


「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」は、どちらも投資で得た利益に課税されず、中長期的に運用できる制度。似たような制度のように感じる「iDeCo」と「つみたてNISA」だが、実は併用が可能だ。

では、どのように使い分けたらいいのだろうか。それぞれの制度の特徴と併用のコツを、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんに教えてもらった。

「iDeCo」と「NISA」の大きな違いは資金の引き出し自由度

「制度を使い始める前に、それぞれの特徴を押さえておきましょう。2つの制度の大きな違いは、資金の引き出し自由度だといえます」(山中さん・以下同)

iDeCo
60歳になるまで原則拠出した資金を引き出せないが、金融商品の売買はいつでもできる。配分変更(毎月の掛金の配分を変更すること)やスイッチング(※1)が可能で、その際の手数料は発生しない(※2)。

※1 利益を確保する場合、または価格が上下することによって崩れてしまったポートフォリオを当初の状態に戻す場合(リバランス)に、保有商品の一部を売却して別の商品を購入すること
※2 信託財産留保額が設定されている投資信託の売却の際は、その手数料が差し引かれる

つみたてNISA
運用途中で金融商品の銘柄変更はできるものの、「つみたてNISA」の口座内で売却した資金でほかの金融商品を購入することはできない。

「それぞれの制度内容から考えると、『つみたてNISA』では分散投資の効果がある投資信託を1本または数本持ち、『iDeCo』ではインデックス型の投資信託を複数持って投資先を組み合わせるなど、自分なりのポートフォリオを作るという使い分けが考えられるでしょう」

“投資期間の長さ”も重要なポイント

制度の特徴以外にも、使い分けのポイントとなる部分があるという。

「制度を利用できる期間も、重要なポイントです。30歳の人であれば、『つみたてNISA』は最大20年、『iDeCo』は30年積立できるので、『iDeCo』の方が長くなります。片や50歳の人だと、『つみたてNISA』の方が長くなりますよね。そして、長期で運用できるものの方が、多少値下がりしても値上がりのチャンスを待てるので、リスクを取りやすくなるといえます」

例えば、10年しか積立できない「iDeCo」ではリスクを抑えるため、債券を含むバランスファンドを用い、20年運用できる「つみたてNISA」では、リスクはあるものの成長が見込める新興国の投資信託を組み込むといった判断もあり得る。

「『つみたてNISA』の非課税期間は何歳でも最大20年と変わりませんが、『iDeCo』の非課税で運用できる期間は最長70歳になるまで(※3)と、人によって年数が異なります。自分の年齢と投資できる期間、投資の目的を総合的に捉えると、効率的な運用手法が見えてくるでしょう」

※3 現行の「iDeCo」の加入対象年齢(掛金拠出可能な年齢)は60歳まで、運用のみ可能な年齢は70歳まで。ただし、2022年5月以降は加入対象年齢が65歳まで、運用のみ可能な年齢が75歳までになる予定

掛金は“優先順位”が高い方を多めに設定

それぞれの拠出額は“優先順位”という軸で判断すると、バランスを取りやすくなるそう。

「現在30代で、自分の老後のために『iDeCo』、子どもの教育資金のために『つみたてNISA』を活用している人であれば、教育資金の方が使う時期が早く優先順位が高いので、『つみたてNISA』の拠出額を多くする方が、目標を達成しやすくなります。先にゴールが近づく方の力配分を多めにしましょう」

共働きの夫婦であれば、税制優遇メリットが大きい「iDeCo」は2人それぞれ加入することを検討したいところだが、あまり余裕がないということであれば、「iDeCo」と「つみたてNISA」で分担する方法もある。

「夫婦で分担する場合は、年収が高い方が『iDeCo』、年収が少ない方が『つみたてNISA』を担当するといいでしょう。『iDeCo』は掛金が全額所得控除になり、年収が高い人の方が税負担の軽減につながりやすいからです」

「企業型DC」を使う場合は商品ラインアップをチェック

「企業型DC(企業型確定拠出年金)」と「つみたてNISA」を併用する場合は、特に「企業型DC」の商品ラインアップに注意が必要。

「『企業型DC』は投資できる金融商品が絞られていることが多く、希望の商品を選べるとは限りません。『企業型DC』で足りない部分を『つみたてNISA』で補うように商品を選ぶと、効率的かつ安定的な運用ができます。例えば、『企業型DC』に先進国中心の投資信託しかないのなら、『つみたてNISA』では新興国の銘柄を選び、投資先を分散させるようなイメージです」

「iDeCo・企業型DC」と「つみたてNISA」の併用におけるコツを紹介してもらったが、山中さんは「もっとも大事なことは、きちんと資産形成につなげていくこと」と話す。

「『非課税だから使う』のではなく、『ライフイベントに合わせてお金が準備できるから使う』という意識を持つことが重要です。目標の金額を達成するために、『iDeCo』『つみたてNISA』という制度自体がマッチするか、また選んだ金融商品が適切か、しっかり考えましょう」

税制優遇メリットを活かして効率的な資産形成が期待できる「iDeCo」と「つみたてNISA」。改めてそれぞれの特徴をチェックし、投資の目的や目標金額にマッチするか考えてみよう。
(有竹亮介/verb)

用語解説

"※必須" indicates required fields

設問1※必須
現在、株式等(投信、ETF、REIT等も含む)に投資経験はありますか?
設問2※必須
この記事は参考になりましたか?
記事のご感想や今後読みたい記事のご要望などをお寄せください。
(200文字以内)

This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

注目キーワード