2021年1月の保険料改定で負担増の地域も

地震大国・日本に住んでいたら「地震保険」に入っておくべき?

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東日本大震災から10年経った今も、大きな地震がたびたび発生している。気象庁は、駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界を震源地とする南海トラフ地震発生の切迫性が高まっていると発表している。

日本においては、いつ、どこで大地震が起きてもおかしくない。万が一被災して、自宅が倒壊してしまうリスクがないとはいえないだろう。そこで思い浮かぶのが、地震保険。損害保険料率算出機構によると、地震保険の世帯加入率は30%前後のようだが、一体どのようなものなのだろうか。

2021年1月に保険料が改定されたばかりの地震保険について、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんに、補償の内容や保険金支払いの仕組みを聞いた。

保険料は「構造」と「都道府県」で決まる

「地震保険料は、『建物の構造』と『住んでいる都道府県』という2つの要素で決定します。保険会社に関係なく一律で決まっていて、その額が2021年1月に改定されました。保険料が上がったところも、下がったところもあります」(氏家さん・以下同)

年間の地震保険料例
地震保険期間1年・地震保険金額1000万円あたり・割引適用なしの場合(表内の▲はマイナスを意味する)
損害保険料率算出機構「地震保険料基準料率 届出のご案内」をもとに作成

※火災保険の構造級別が「H構造(経過措置)」または「3級(経過措置)」の場合は、ロ構造よりも保険料負担が軽減される場合がある。

「イ構造」は主に鉄骨・コンクリート造の建物、「ロ構造」は主に木造の建物を指す。つまり、木造の建物の方が保険料が高くなるのだ。

「地震の頻度が高い場所や今後大きな地震が起こると予想される場所は、保険料が高くなる傾向にあります。今後、大きな地震での被害が予想される千葉県、東京都、神奈川県、静岡県は上がっていますよね」

表の価格は、1000万円の補償をつけた場合の年間保険料。例えば、東京の自宅に2000万円の補償をつけた場合、年間保険料は5万5000円(2万7500円×2)、月額に換算すると4600円程度。

「地震保険料は決して手頃なものではないので、長期契約をすることで、保険料が多少抑えられるようになっています。その割引額を計算するために用いる長期係数も、2021年1月に見直されました」

長期係数の見直し
損害保険料率算出機構「地震保険料基準料率 届出のご案内」をもとに作成

地震保険は「火災保険」に付帯する特約

そもそも、なぜ地震保険料は、保険会社に関係なく一律になっているのだろうか。

「大地震の被害は広範囲に及ぶため、民間の保険会社だけではカバーしきれないことが想定されます。そのため、地震保険は保険会社と国が共同で提供し、補償額が莫大になった場合、政府の予算でまかなわれる設計になっているのです。国の事業でもあるので、保険会社が違っても保険料は変わりません」

ちなみに、地震保険は単体で加入するものではなく、火災保険の特約として付帯するもの。火災保険に加入していなければ、地震保険にも入れないのだ。

「実は、地震が原因で生じた火災による被害は、火災保険の補償対象にはなりません。地震保険を付帯していないと、カバーされないのです。既に火災保険に加入している場合は、地震保険を付帯しているか確認してみてください。火災保険の加入を考えているのであれば、地震保険もあわせて検討しましょう」

保険金額の決め手は「建物・家財の損害具合」

国の予算が用いられると聞くと、手厚い補償が期待できそうだが、補償額は火災保険よりも少なく設定されているという。

「地震保険で補償される保険金は、付帯する火災保険金額の30~50%で、建物は5000万円、家財は1000万円が上限です。これは広範囲に被害を及ぼす地震が起こった際に、なるべく多くの家庭を支えるための措置といえます。また、建物や家財の損害の程度によって、支払われる保険金額が変わります」

支払われる保険金の額
損害保険料率算出機構「地震保険基準料率」をもとに作成

保険金は、被災後に保険会社の調査員によって建物や家財の状態がチェックされ、診断が出されてから支払われる。

「過去の震災の例を見ると、被災してから1カ月以内には保険金が出ている人が多いようです。注意すべきは、壊れた建物や家財をすぐに撤去してしまわないこと。建物や家財がなければ、損害の程度を診断してもらえないからです。調査員が来る前に撤去する場合は、地震や津波、火災などの危険がなくなってから、被災直後の様子を細かく撮影しましょう。写真が損害の証拠になります」

火災保険に加えて地震保険も付帯するとなると、月々の保険料はそれなりにかかってしまうだろう。「多少コストはかかるものの、加入するに越したことはない」と、氏家さんは話す。

「もし、住宅ローンを支払っている間に被災したら、自宅が損壊したとしても、ローンは払い続けなければいけません。さらに、被災後の住宅の家賃も支払うとなれば、負担はかなり大きくなります。壊れた家具や家電を買い直すなど、生活再建にもお金がかかるので、地震保険は入っておいた方が安心です」

いつ発生するかわからない地震に備えて、加入しておきたい地震保険。まずは、現在加入している火災保険に付帯しているか、確認するところから始めよう。
(有竹亮介/verb)

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