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ふるさとでの副業が増えていく?

テレワーク普及で起きつつある働き方・暮らし方の変化

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コロナ禍で一般化したテレワーク。その普及にともない、個人の働き方や生き方に変化の兆しが生まれている。

「リモートワークは、働く時間や住む場所の自由度を大きく上げました。それにより、働き方はもちろん、生き方そのものをデザインし直す人が増え始めています」。こう話すのは、リクルートキャリア HR統括編集長の藤井薫氏。同社のリサーチにも、すでにこの傾向が表れているようだ。

いったいどんな変化が見て取れるのか。藤井氏に「リモートワークがもたらす働き方、生き方の変化」について聞いた。

仕事の合間にサーフィン、多拠点生活……テレワークで働き方が多様化

多くの人がリモートワークに挑戦した2020年。リクルートキャリアの調査(2020年「新型コロナウイルス禍での仕事に関するアンケート」)によると、1度目の緊急事態宣言下でのリモートワーク経験は、全国で48.0%、東京都は71.1%に及んだ。

リモートワークになって「よかった」と答えた人は66.1%にのぼり、リクルート住まいカンパニーが行った調査(2020年「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態調査」)では、テレワーク継続意向を示した人が84%になったという。まさに、働き方の主流が変わりつつある。

画像提供/リクルートキャリア

こうしたテレワークの経験は、働く人の仕事選びや住まい選びにも変化を及ぼし始めているという。

「同調査によると、転職時の仕事選びにおいて『プライベートの時間を十分に確保できる』『働く時間を柔軟に変えられる』といった項目への関心が増していました。さらに、テレワークで職場と住まいの距離に制約が少なくなり、住居選びの意識にも変化が出ています。『SUUMO』の物件閲覧数を調査すると、コロナ以降は都心100キロ圏内の郊外の物件閲覧数が増加。神奈川県三浦市や逗子市、千葉県富津市や館山市などが当てはまります」

仕事選びや住まい選びから見て取れる意識の変化。その理由を藤井氏はこう分析する。

「テレワークにより、時間や場所に縛られない、自由度の高い暮らしを経験しました。出社によって仕事と暮らしがきっちり分かれていた頃と違い、テレワークは仕事と暮らしの時間や割合を自由度高く混ぜ合わせることができます。プライベートの重視や、住まい選びの変化はそのサイン。ライフスタイルをデザインし直そうという動きと言えます」

藤井氏は1つの具体例を紹介する。IT関連会社に勤務する20代後半の独身男性は、それまで都内で一人暮らししていたが、会社のフルテレワーク移行をきっかけに鎌倉の実家でしばらく生活。朝夕の仕事の合間に趣味のサーフィンをする生活を送った。その後も、都内の自宅を拠点としながら小田原や五島列島などでワーケーションを実践したという。

そのほか、テレワークをきっかけに念願の多拠点生活を送る人や、実家の田舎で過ごす時間を増やした人もいる。

「テレワークは働き方改革にとどまらず、暮らしや生活まで改革するもの。その意味で、テレワークの普及は暮らしと仕事を合わせた『クラシゴト改革』を起こすと考えています」

今までは出勤による時間と場所の制約があるため、仕事と生活のどちらかを選ぶ「トレードオフの関係になるケースが多かった」と藤井氏。しかし、テレワークで時間・場所の自由度が向上すると「生活と仕事の“どちらも”大切にする意識が強まるのでは」と展望する。

遠方から地方に貢献する「ふるさと副業」に注目が集まる

こういった変化は「副業」も促進していくと考えられる。出社の習慣が減れば、働く先を1社に限定する必要もなくなる。加えて、テレワークの一般化により、距離を超えてさまざまな企業・団体と仕事をしやすくなった。

「その結果、首都圏や海外に住む人が『ふるさとに恩返ししたい』『大好きな地方に貢献したい』と、距離を超えてテレワークで副業するケースは増えるはず。本業では得られないやりがい、金銭報酬とは違う関係報酬は大きな魅力です。今後、こういった“ふるさと副業”が加速するのではないでしょうか」

すでにこちらも事例が出ている。石川県にある「柚餅子総本家中浦屋」は、石川県輪島市の銘菓「丸柚餅子」を販売する創業110年の老舗和菓子屋。ECマーチャンダイジングやデジタルマーケティングの必要性から、副業で関わってくれる人を探した。そうして東京在住の5名を採用し、新たな部署を立ち上げたという。

5名ともECマーチャンダイジングやデジタルマーケティング領域を本業にしており、オンライン会議を中心に業務を行っている。この出会いはリクルートキャリアの「サンカク」というサービスがきっかけだが、同様の事例は今後も増えていくだろう

今後、たとえコロナが終息しても、一度広まったテレワークは「消えないでしょう」と藤井氏。その中で予想するのは、働き方の“小口化”だという。

「音楽の世界を例にとると、昔はアルバム1枚丸々買って曲を聴いていたのが、今はアルバムの曲を1曲ずつダウンロードして、好きな組み合わせで編集できますよね。同様に、仕事も1社に勤務するだけでなく、複数の仕事を小口化して組み合わせて編集できるようになる。本業以外に『火曜日だけこの仕事』『夏場だけこの仕事』と、自分で仕事を編集できるようになっていくでしょう」

それにより、今までできなかった人生設計、仕事の選び方が可能になるだろう。コロナ禍は厳しい経験が多いが、この期間にもたらされたテレワークの普及は、私たちの人生をきっと豊かにしてくれるはずだ。

(取材・文/有井太郎)

※記事の内容は2021年2月現在の情報です

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