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技術の力で打ち破れ!!「マイナス46%」の壁

CO2排出削減に寄与するアンモニア燃料に注目

提供元:ちばぎん証券

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CO2など温室効果ガス排出削減に向けた新たな国際枠組みとして2015年12月に採択されたパリ協定。2020年から実施段階に入り1年余が経過しました。トランプ政権下の米国が離脱を表明するなど、波乱含みの幕開けでしたが、気候変動問題を主要政策に掲げるバイデン大統領の登場もあり機運は高まってきたように感じられます。

「Afterコロナ」の経済活性化が世界共通の課題となるなか、主要国がこぞって環境対策への重点投資で成長路線への回帰を目指す「グリーン・リカバリー」を標榜していることも後押しとなるでしょう。

パリ協定は、「世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃までに抑える努力をする」という目標を掲げています。目標達成には今世紀半ばまでに脱炭素社会を実現することが必要とされ、日本を含む多くの国が2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると宣言しています。

4月22日、23日にバイデン大統領の呼びかけで開催された気候変動問題に関する首脳会議。欧米の先進国は相次いで温室効果ガスの新たな削減目標を発表しましたが、日本も重要な通過点と位置付けられる30年度の排出量を13年度比「マイナス46%」にすると表明しました。これまでの目標が13年度比マイナス26%でしたので極めて高い目標ということができるでしょう。

果たして達成は可能なのでしょうか。

わが国で排出されるCO2は、発電所を中心とする電力部門によるものが約4割(以下運輸2割、産業3割、民生約1割)。したがって脱炭素社会の実現には電力部門の排出量削減が大前提となります。ただ足下の状況は発電量の7割以上が火力発電で、風力や太陽光など再生可能エネルギーは18%。原子力は6%程度にとどまっています。

再生可能エネルギーを最大限導入する努力を続けることは当然です。ただ2030年という期限の下、自然条件やコストなどの制約から再エネですべて代替することは難しく、一定程度火力発電は使わざるを得ないとの前提に立つのが現実的でしょう。CO2の排出を抑制しつつ火力発電を使い続ける、その手段として今注目されているのがアンモニア燃料です。

アンモニアは既存の火力発電所で石炭などに混ぜて使うことができます。燃焼時にCO2を出さないため、燃料にアンモニアを混ぜた分だけCO2の排出量削減につながります。政府は、アンモニア燃料の使用量を2030年に年300万トンとする目標を設けていますが、石炭火力発電所の燃料としてアンモニアを20%混ぜて使った場合、100万キロワットの大型設備6基分(四国電力並み)の発電容量をまかなえる計算になります。

燃やしてもCO2を出さない燃料として水素を思い浮かべる方も多いと思いますが、アンモニアは既に肥料や化学原料として普及しているため製造や輸送、貯蔵の方法が確立済みで、既存設備を有効利用できるといった利点があります。2030年という時間的制約の下、注目度が高まっている所以です。

アンモニアは主に天然ガスを使う化学合成で製造されます。製造過程でCO2を排出するため製造時に太陽光発電など再エネの電力を使ったり、排出したCO2を回収して貯蔵・再利用したりする技術との併用が検討されています。この分野も有力なテーマとなるでしょう。

アンモニア燃料の活用を巡っては企業の取り組みも加速しています。

東京電力ホールディングスと中部電力が出資するJERAはアンモニアを安定的に確保するため、自ら生産に乗り出しています。同社は国内のCO2総排出量の1割強を占める最大の発電事業者ですが、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げています。

宇部興産と伊藤忠商事は共同で船舶の燃料として使うアンモニアの供給網を整備し、海運における温室効果ガス排出削減の動きに対応します。国内に燃料用のアンモニアタンクなどを設置し、運搬用の小型船を使って主に大型船向けにアンモニア燃料を供給する計画です。宇部興産はアンモニア生産の国内最大手。伊藤忠は取りまとめ役となり、生産から供給までを一貫して手掛ける体制を構築します。

三菱商事は、インドネシアですでに出資している現地企業の肥料・化学原料向けアンモニア工場を燃料用に転換し、製造したアンモニアを日本に輸出する計画を進めています。最大年70万トンの生産量は、日本政府が2030年の導入目標で掲げる年300万トンの4分の1に相当します。

CO2を回収、あるいは再利用する研究開発では、三菱ケミカルが浄水器や排水処理向け中空糸膜の技術を応用しCO2を効率よく回収する実証実験を始めています。また、住友化学はCO2からメタノールを効率よく合成する研究に取り組んでいます。接着剤や合成樹脂などの基礎原料になるメタノールは天然ガスや石炭ガスが原料ですが、CO2から生産する技術が実用化すれば、まさに一石二鳥です。一方、旭化成はCO2からリチウムイオン電池の電解液材料を生産する技術のライセンスビジネスを展開しています。世界的な電気自動車の生産拡大が予想されるなか、電池生産時の環境負荷は無視できない課題で商機は大きいと考えられます。

建設業界では、大成建設がCO2とカルシウム成分を合成してコンクリートを作る技術を開発。清水建設は東京大学などと共同で、工事後などに出る廃棄コンクリートをCO2を使って再生する技術を開発しました。ともに大量のCO2を出すセメントを作る必要がなくなり大気中のCO2も減らすことができる、こちらも一石二鳥です。

アンモニア燃料の活用もCO2の再利用も実用化にはコストという難問が立ちはだかります。ただ脱炭素社会の実現に向け国際的な流れが定まった以上、もはや避けて通ることはできません。「マイナス46%」の強固な壁を打ち破るには日本が培ってきた技術力を総動員して臨むしかないのですから。

(提供元:ちばぎん証券)

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