マネ部的トレンドワード

中小企業から大手まで、攻めの採用活動を支援「リクナビHRTech転職スカウト」

テクノロジーで採用の“負のスパイラル”を解消

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少子高齢化による労働人口の減少で人材不足が深刻になる中、その煽りを受ける可能性が高いのが中小企業だ。知名度の高い大手企業は、求職者の目に触れる機会も多いが、知名度に劣る小さな会社は、どうしても求職者の目に留まりにくい。加えて、大企業は採用業務に十分な人を割けるが、小さな会社は人手が少なく、人事担当者1人で採用や経理など、さまざまな業務を掛け持ちするケースも少なくない。結果、採用に力を入れられなくなる。

つまり、人手不足は中小企業の採用にとって「負のスパイラル」を生みかねない。

そんな課題をテクノロジーで解決するサービスがある。「リクナビHRTech転職スカウト」だ。機能はシンプル。リクルートが持つ求職者データベースの中から、AIが毎日その企業が求めている条件にマッチする人をおすすめの候補者として紹介。担当者は○△×をワンクリックで評価する。○なら求職者に通知が行き、求職者が承諾すれば面接へと進む。AIのレコメンドをもとに企業がスカウトを送る形だ。

さらに、毎日おすすめの候補者を評価するうちに、AIの精度は上がり、より企業の求める人物をレコメンドするという。

このサービスを開発したのは、リクルートの藤原暢夫氏。誕生の背景には、彼が新人時代に出会ったある企業の採用担当者とのエピソードが関係しているという。最近注目のキーワードに迫る「マネ部的トレンドワード」。HRテックを特集する本連載では、リクナビHRTech転職スカウトを取り上げる。

企業から興味があることを伝えたところ、応募率が平均2倍に

2016年にローンチされたリクナビHRTech転職スカウトは、AIが毎日企業に条件に合う求職者をレコメンドし、企業側がその人物を評価。○をつけるとメールを自動作成して送信し、面接へと進む。きわめてシンプルな設計だ。

「名の知れた企業は待っていても応募が来るかも知れませんが、そうでない企業は求職者の目に留まらず、応募が来なくて悩むことがあります。であれば、逆に企業が求職者へ向けて『あなたに興味があります』と伝える仕組みを作った方が良いのではないかと考えました」

面白いのは、企業が求職者に興味を伝えることで、応募率が平均約2倍になったこと。「知らない企業でも、自分を評価されると求職者は好印象を持ちますし、何より自分を必要としてくれる企業に行きたい人は多い」と藤原氏はいう。

人材スカウトの仕組み自体は、決して新しいものではない。企業と求職者の間にエージェントという“人”が入り、両者を引き合わせる人材紹介など、一般的なサービスとして普及している。しかし、人が紹介できる範囲や量には限界がある。その役目を一部AIが担うことで、ボリュームが飛躍的に増えた。「相思相愛になり得る企業と求職者について、両者の出会いの機会損失を少しでも減らしたかったのです」。

「 AIがおすすめする候補者は毎日5人まで。そして候補者に対する評価を見ながら、AIは傾向を分析していきます。たとえば○がついた人のキャリアにおける共通項目を探るなど。基本的には、評価した人の数が増えるほどAIの精度が上がっていきます」

裏側でテクノロジーを活用しながら、機能はシンプルで簡単なのが特徴だ。もともと小さな会社に届くよう作られたサービスであり、そのような会社は「パソコンの操作が苦手な方や、人手不足で仕事に忙殺されている担当者の方も少なくない」と藤原氏。だからこそ、「人にやさしい形を追求した」という。

テクノロジーを使うサービスは、得てして高度な設計に目が行きがちだが、藤原氏はあくまで「サービスの使いやすさ」を心がけた。「外から見た客観価値よりも、実際に使う人の体感価値を重視しました」と続ける。

このサービスの誕生を生んだ、ある町工場の担当者の苦悩


今までの話からも分かるように、このサービスは、一貫して中小企業を見据えて設計されている。その背景には、藤原氏が新人の頃、ある中小企業の担当者から聞いた切実な悩みがあった。

「新卒入社から2年ほど、関東圏で求人関連の営業をしていました。あるとき、埼玉と栃木の境にある町工場に行ったのですが、採用担当者は1人で人事や総務、経理を全部兼任しているような状態。そして、その方が郷里に帰るため『3カ月以内に代わりの誰かを採用しないと、決算期の作業に間に合わない』と焦っていました。すでに求人をかけていましたが、まったく反応がない。これが『中小企業のリアルなんだ』と感じましたね」

しかし、本当の問題はここからだった。応募がないことを聞き、藤原氏はこの企業への求人紹介を増やすよう営業担当に連絡しようとした。すると、担当者はそれを止めたのである。

「担当者の方は『そんな要望を出して、ウチがリクルートから嫌われたら困る』と……。こちらの要望を押し付けて、もしリクルートの担当者に面倒な企業だと思われたら、ますます人材を紹介してもらえなくなると、本気で危惧していたんですね。信じられない感覚ですが、本当の話です。この企業は、リクルートにとってお客さまのはずなのに、逆に企業がリクルートに気を使うほど採用弱者になっている。その現状を痛感したんです」

この光景を目にした藤原氏は、採用で困る中小企業を救う仕組みを模索する。そうして生まれたのが、リクナビHRTech転職スカウトだった。実は当時、藤原氏は別のプロジェクトを引き継ぐ予定だったが、会社に直談判して急遽このプロジェクトをスタートしたという。

そんな物語を経て誕生したサービスは、導入企業2万3000社以上を超える。それに伴い、数多くの出会いも生まれてきた。あるベンチャー企業では、このサービスにより12人にスカウト。うち6人と面接し、1人採用できたという。そのとき入社した社員は、選んだ決め手を「最初の希望とは違う求人内容だったが、企業側から『会いたい』と言ってくれることに感動して応募した」という。

さらにこのシリーズとして、「リクナビHRTech採用管理」というツールもリリースしている。最初の出会いを生むスカウト機能は「一定の完成に近づいている」とのことで、その後の採用管理をフォローしていく。これも、人手不足に悩む中小企業の担当者をサポートするツールだ。

採用における「負のスパイラル」をテクノロジーで解決する、リクナビHRTech転職スカウト。それも、あくまで使いやすい、やさしい形にこだわっている。そのこだわりの起点になったのは、新人時代に見た中小企業の採用担当者たち。目の前の人が直面していた課題を真摯に解決しようとしたからこそ、すべての人にやさしいこのサービスがある。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2021年6月現在の情報です

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