住宅ローン大解剖、借りる前・借りた後

「収入の傾向」と「今後の住み方」が判断のポイント

住宅ローン組むなら「固定金利」と「変動金利」どっちがいい?

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住宅ローンとは、マイホームの購入代金を金融機関から借りる借金のこと。そのため、借入金に利息を加えた額を毎月返済していくことになる。

一般的に住宅ローンの金利は「固定金利」と「変動金利」の2つのタイプに分けられるが、それぞれどのようなメリットがあるのだろうか。家と住宅ローンの専門家・千日太郎さんに、それぞれの金利がどのような人や家庭にマッチするか、教えてもらった。

好景気だと上昇、不景気だと下降する「金利」

住宅ローンは、銀行や信用金庫、モーゲージバンク(住宅ローン専門会社)、生命保険会社などの金融機関が貸し出すもの。金融機関は金融市場から調達したお金を住宅ローンとして貸し出しているため、金利が発生する。

「金融機関は調達金利というコストを払って、資金を調達しています。そのコストを補うため、住宅ローンに金利をかけているのです。調達金利は好景気だと上がり、不景気だと下がるため、住宅ローンの金利も景気の影響を受けて同じように変動します」(千日さん・以下同)

住宅ローン金利は、日本銀行の金融政策に大きく影響される。2021年5月現在、長期金利はゼロパーセント前後で推移するよう誘導されており、短期金利も低位で安定している。この状況が、現在の住宅ローン金利の低さに影響している構造だ。

固定金利・変動金利の判断基準は「ライフプラン」

住宅ローンの金利は「固定金利」と「変動金利」の2つに大きく分けられるが、まずはその違いを確認しよう。

●固定金利
借入期間にわたり金利が固定されるタイプ。世の中の金利水準が変動しても金利は見直されないため、借入時点で返済額が確定する。「元利均等返済方式」の場合は、月々の返済額も一定となる。

●変動金利
金融機関が必要に応じて金利を変動させるタイプ。一般的に「元利均等返済方式」の場合は、返済額の変更は5年ごとになる「5年ルール」、返済額が上がるとしても前回の125%までという「125%ルール」がある。ただし、これらのルールはあくまで返済額が急激に上がるのを防ぐためであり、借入額を軽減するものではない。最終回までに返済する必要がある。

「固定金利」より「変動金利」の方が金利が低く設定されていることが多いが、景気動向によっては後々「変動金利」の方が高くなる場合もある。その見極めは難しいところ。どのように金利のタイプを選ぶといいだろうか。

「1つ目のポイントは『自身の収入タイプ』です。好景気だと収入が増え、不景気だと収入が減るような仕事の人であれば、『変動金利』の方が負担を一定にしやすいのです。金利が上がったとしても、好景気によって収入も増えていれば負担は変わりませんよね。一方、公務員など収入が景気の影響を受けにくい人は、『固定金利』の方が適当と考えられます」

もう1つ、ポイントがあるという。購入したマイホームでの「保有方針」だ。

「『固定金利』は金利が高めに設定されている分、金利変動リスクを避けることができます。そのため、長く(一生)住み続け、長い時間をかけて返済するのであれば、マッチしているといえます。逆に、近い将来に家を売る可能性がある人であれば、『固定金利』だと金利が高すぎるかもしれません。長く返済するつもりがないのであれば、『変動金利』の方が得になるケースも多いでしょう」

●固定金利がマッチしやすい人
・収入が景気の影響を受けにくい人
・購入した家に長く(一生)住み続ける予定の人

●変動金利がマッチしやすい人
・収入が景気の影響を受けやすい人
・近い将来に家を売却する可能性がある人

金利の低さだけを判断基準にせず、ライフプランに合わせて選ぶことで、自分にマッチした借り方ができるのだ。

「固定期間選択型」は固定期間が終わった後のイメージが重要

金利のタイプには「固定期間選択型」というものもある。

●固定期間選択型
3年、5年、10年など、あらかじめ決められた期間のみ金利が固定されるタイプ。一般的には固定期間が短いほど金利が低い。固定期間が終わったら、改めて金利タイプを選び直す。

「固定期間中は変動金利並みに金利が低く設定されていることが多いのですが、固定期間以降も金利を同水準に保てるとは限りません。『固定期間選択型』を利用するのであれば、固定期間が終わった後の状況を考えるべきです。例えば、30代前半で小さな子どもがいる方が10年固定にした場合、10年後は40代前半、子どもは中高生でまだまだ教育費がかかります。そのタイミングで金利変動リスクを負うのは、厳しいかもしれませんよね」

別のケースで、40代後半で10年固定にした場合。10年後は定年間近、子どもも社会に出ていれば、繰り上げ返済などで早めの完済の計画が立てやすくなるため、「固定期間選択型」も選択肢の1つとなるだろう。

「『固定期間選択型』は、固定期間が終わった後をイメージできる人でないと活用が難しいタイプです。固定期間が終わると金利が上がるケースが多く、『5年ルール』や『125%ルール』も適用されないので、イメージできないままローンを組むと、後になって不安ばかりが募ってしまいます。少なくとも、『とりあえず』で決めてしまうことは禁物です」

借りやすく引き下げ制度もある「フラット35」

固定金利の1つとして、住宅金融支援機構が扱う「フラット35」がある。最長35年間、金利が固定される住宅ローンだ。民間の金融機関の住宅ローンと比べて、審査が通りやすいという特徴があるそう。

「ほとんどの民間の住宅ローンは勤続3年以上や最低年収200万円などの審査基準があるのですが、『フラット35』は勤続年数と最低年収の縛りがありません。そのため、転職したばかりの人や派遣社員など勤続年数が長くなりようのない人、節税のために所得を低くしている自営業の人でも借りやすくなっています」

民間の住宅ローンでは、契約者が亡くなったり重い障害を負ったりした場合に残高を肩代わりしてくれる「団体信用生命保険(通称、団信)」への加入が必須だが、「フラット35」では「団信」に加入しないことを選択し、金利をその分低くできるという特徴もある。若い人はあえて「団信」へ加入せず、年齢が若いほど保険料が安くなる民間の掛け捨て生命保険に加入することで、住宅ローンの金利が下がるため、「フラット35」に優位性が生まれる場合もあるだろう。

「フラット35」には、条件を満たすことで金利を引き下げられる制度もある。

●フラット35S
省エネルギー性や耐震性などに優れた質の高い住宅を購入する場合に、当初10年間または5年間、金利が0.25%引き下げられる制度。

●フラット35地域連携型
子育て世帯や地方移住者などが住宅を購入する場合に、当初5年間、金利が0.25%引き下げられる制度。

●フラット35リノベ
中古住宅を購入して一定の要件を満たすリフォームを行う場合、もしくは一定の要件を満たすリフォームが行われた中古住宅を購入する場合に、当初10年間または5年間、金利が0.5%引き下げられる制度。

「『フラット35S』と『フラット35地域連携型』は併用も可能なので、両方の条件を満たせば、当初5年間は0.5%引き下げの可能性があります。『フラット35』の金利が1.3%だとすると、0.8%になるというわけです。引き下げ期間が終わった後は、本来の固定金利に戻るだけなので、返済計画も立てやすいでしょう」

メリットの多い印象の「フラット35」だが、注意点もあるという。

「『フラット35』を利用するのであれば、少なくとも借入額の1割の頭金を入れたいところ。頭金なしでもローンを組めますが、支払う利息の総額が増えてしまいます。なるべく低い金利で借りるためには、頭金の準備が必須です」

目先の金利の低さではなく、長く返済していくことを踏まえて選ぶべき住宅ローン。ライフプランを立ててから、そこにマッチする金利タイプを選ぼう。
(有竹亮介/verb)

用語解説

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