住宅ローン大解剖、借りる前・借りた後

住宅ローンの利息を国が肩代わりしてくれる制度

10年間の減税制度「住宅ローン控除」のキホン

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多くの人にとって、これまでに経験したことのない大きなお金を動かすことになるマイホームの購入。そんな一大決心を後押しする減税制度が、「住宅借入金等特別控除(通称、住宅ローン控除)」だ。

住宅ローンを組んで家を買った人が10年間(※)、ローン残高の1%を上限に税金の還付を受けられる減税制度だが、住宅ローンを組めば自動的に適用されるわけではない。そこで、制度内容と適用条件について、家と住宅ローンの専門家・千日太郎さんに聞いた。

※「令和3年度税制改正」により期間限定で13年間に延長されている。

「ローン残高の1%」が還付される制度

「『住宅ローン控除』は10年間、毎年12月末時点の住宅ローン残高の1%が、所得税と住民税から還付される制度です」(千日さん・以下同)

以下の条件で住宅ローンを組んだとする。

●借入金額3000万円
●固定金利1.38%
●35年元利均等返済ボーナス払いなし

「住宅ローン控除」を利用すると、最初の10年間の年末残高の1%が還付されるため、最大261万円のキャッシュバックとなる。大きな金額といえるだろう。

「『住宅ローン控除』を受けるには、確定申告をしなければいけません。自営業の人は、毎年行う必要があります。サラリーマンや公務員などの給与所得者は、控除を受ける最初の年は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。2年目以降の簡易な手続きのための書類が税務署から届くので、勤めている会社に提出しましょう」

「住宅ローン控除」を受けるための条件

「住宅ローン控除」は大きな減税効果のある制度だが、住宅ローンを組んだ全員が対象となるわけではない。

●住宅ローン控除の条件
(1)控除を受ける人の条件
・居住する目的で住宅を取得
・取得の日から6カ月以内に住み、なおかつ12月末まで住み続けていること
・合計所得金額が3000万円以下

(2)家屋の条件
■新築・中古に共通の条件
・床面積50平方メートル以上の家屋
・総床面積の半分以上が自己居住用の家屋
■中古住宅特有の条件
・築年数20年(マンションなど耐火建築物は25年)以下であること。そうでないときは耐震性能証明が必要
・同居の親族などから買ったものでないこと

(3)借入金の条件
・10年以上の返済期間であること
・借入金を住宅の購入または増改築などの資金にあてること

「注意が必要なのが、(2)の床面積。『住宅ローン控除』の条件は壁の内側の面積のみで計算した内法面積を指しますが、マンションのパンフレットなどに載っている専有面積は壁の厚みの中心線から内側の面積で計算した壁芯面積であることが多いのです。壁芯面積で50平方メートル台前半の場合、内法面積では50平方メートルに満たない可能性があるので、注意しましょう」

すべての条件を満たしたとしても、「住宅ローン控除」の対象にならないケースもあるという。

●「住宅ローン控除」の対象にならない借り入れ
・サラリーマンが会社から住宅資金を借りており、それが無利息または利率0.2%未満の場合
・サラリーマンが会社から利息相当の手当(利子補給金)を受けるなどして、実質的に利率が0.2%を下回る場合

「有利な借入条件で家を購入している場合は、控除の対象になりません。ただし、『会社』が金融機関で、本業として貸し出している住宅ローンを借りるのであれば、『住宅ローン控除』の対象になります」

控除額の「上限」に要注意!

還付される税金について、多くの人が見落としている注意点があるという。

「『住宅ローン控除』には上限が設けられているので、その上限ギリギリまで還付されるように住宅ローンを組む人がいます。しかし、控除はあくまで減税制度であり、キャッシュバックキャンペーンではないので、自分が払った税金以上は返ってきません。そして、一般的な給与所得者の場合、『住宅ローン控除』の上限に到達するほど税金を払っていない場合が多いのです」

控除の対象となる所得税・住民税は、年収に比例して決まる。そのため、自分の年収を確認することで、「住宅ローン控除」を最大限活用することができるのだ。

●「住宅ローン控除」の上限
・一般の住宅…40万円(売主が個人の中古住宅等の場合で消費税が非課税なら20万円)
・認定長期優良または低炭素住宅…50万円(売主が個人の中古住宅等の場合で消費税が非課税なら30万円)

●各年収で住宅ローン控除を受けられる上限の目安
・年収200万円→6万9000円
・年収300万円→13万6000円
・年収400万円→18万6000円
・年収500万円→27万6000円
・年収600万円→34万円
・年収700万円→45万6000円
・年収800万円→50万円
※扶養家族の人数などによって上限は変わる

例えば、年収500万円の人が最大40万円の控除を受けるため、4000万円の借り入れを行ったとしても、実際の上限は約27万円。「住宅ローン控除」の恩恵を最大限受けるには、2700万円程度の借り入れが目安となるのだ。

ちなみに、所得税額は源泉徴収票の源泉徴収税額の欄、住民税は住んでいる自治体の税務課で発行してもらえる納税証明書を見ればわかる。自分が払った税額を参考にすると、より具体的に借り入れの計画が立てられるだろう。

「各年収の上限の目安に100をかけた金額が、妥当な借入額といえます。その額に収めてもいいですし、できる範囲で頭金を入れて、当初の借入残高を目安の額まで減らすという方法もあります。税法は毎年改正されるので、正確な情報を知りたかったり判断に迷ったりした場合は税務署に問い合わせることをおすすめします」

「住宅ローン控除」を活用する際は、適用条件や控除の上限をしっかり把握したうえで、マイホームの計画を立てるのが良さそうだ。
(有竹亮介/verb)

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