【日経記事でマネートレーニング17】相場ニュースを読む~個人投資家は大好き、テクニカル分析とチャート~
提供元:日本経済新聞社
このコーナーでは日経電子版の記事を読むことで資産形成力のアップを目指します。実際のニュースやコラムを引用し、初心者には難しく思えるような用語をかみくだき、疑問点を解消していきます。金融・経済ニュースをどれだけ読みこなせるかは投資のリテラシーそのものです。日々の情報にリアルタイムで動ける実践力を養いましょう。
17回目は相場の「先読み」のヒントとして頻繁に用いられるテクニカル分析について取り上げます。株式や債券、為替など金融マーケットでは今後の相場がどう動くかが共通の関心事です。的中率や方法の是非はさておき、個人投資家の間では人気が高く、オンラインでも多くの「スクール」が開講されているほどですから驚きです。
「テクニカル分析」は相場や価格の動き方そのものに着目
本コラムでは理解しやすいように株式相場をイメージして解説します。株式相場の分析・評価には大きくファンダメンタルズ分析と需給分析という2つの手法に分かれます。
ファンダメンタルズ分析は景気や企業業績などの状況から結論を導き、需給分析は投資動向や資金需要などをもとに先行きを論じます。
一方、テクニカル分析はマーケットの状況そのもの、相場の動き方そのものにスポットライトを当てようとするやり方です。たとえば、「8日連続で株価が上がったので過去のリズムからは翌営業日は高確率で下がる」、あるいは「いまの株価水準は過去の株価の平均的な動きからズレすぎているので高(安)すぎる。ゆえに修正の動きが始まる」、というような考え方です。
テクニカル分析には名前を聞いただけ退きたくなるような難しそうなものから、なんとなく与しやすそうなものまで多彩です。日経記事で掲載されるのは基本的な手法や内容が多いので、イメージぐらいはつかめるようになりましょう。
ではサンプル記事をみてみましょう。
テクニカル分析でもっともポピュラーなのがチャート分析です。いまさら説明の必要はないかもしれませんが、ある現象についての推移や流れをグラフ化したものです。見えにくい現象が「視覚的」にとらえられるようになり、その動き方から「この先はどうなる」という気づきや推測の根拠を探り出すわけです。
チャート分析にも移動平均、トレンドライン、一目均衡表などこれまたいろいろなアプローチがあります。日経記事に頻出するチャートの1つは移動平均(「移動平均線」ともいう)です。毎日毎週、過去一定期間の平均値を出して作るグラフです。75日移動平均は過去75日間の平均値で、25日移動平均は過去25日の動きをならしたものです。株価は日々変動するのでグラフはジグザグになりますが、移動平均を使えば波のようなうねり型として描かれ、株価が大局的に上向きなのか下向きなのか、わかりやすくなります。
移動平均は短期・長期を組み合わせて勢いや含み損益を推測
移動平均には平均値を出す期間がポイントになります。比較的期間が短い短期線は過去5~25日、長期線は75~200日などを使うケースが多いようです。13週線と52週線というもっと長い期間を使って10年20年単位の動きをみることもあります。
移動平均は売り手と買い手の約定値、投資家の売買コストの推移を表しているともいえます。75日移動平均が1000円であれば過去2,3カ月の投資家の買いコストが1000円という意味です。25日移動平均なら直近1カ月間の投資家の買いコストといえます。
仮に25日移動平均が1000円で足元の株価が950円から1050円に抜け上がったとしたらどうでしょうか。過去1カ月間で買った多くのひとが含み損から含み益に転じたことを示すわけです。逆に上から下に抜けると含み損発生になるので投資家心理は悪化しやすくなります。
移動平均は短期線と長期線を組み合わせる応用的な使い方があります。短期線が長期線を下から上に抜け上がる際にできる交点を「ゴールデン・クロス」といい、株価や相場に勢いが増し、これから上がるというサインになります。
ピンときませんか?中学生や高校生のテストを思い出してください。仮に毎日毎週、英数国3科目のテストを受けたとします。過去3カ月の平均では100点満点で50点でしたが直近1カ月は80点まで上がりました。なぜでしょう?もちろん勉強して頑張ったからです。「学力」はどうみても先行き上向きですね。逆にいままで80点の得点率が足元では50点に下がってきたらどうでしょう。スランプでしばらくは低迷しそうです。腑に落ちましたか?
①上値=現在の値段より高い水準。株価で「上値を追う」とは今より高い株価が期待できるのでその高値を追いかけるように買いを入れる投資姿勢を指す
②75日移動平均=過去75日間の価格の平均値で移動平均線ともいう。ジグザグの動きをならすことで相場の方向が見えやすくなる。より短期の移動平均線と、より長期の移動平均線を組み合わせることで市場心理を測るモノサシにもなる
③チャート=株価や通貨、金利などの動きや推移をグラフ化、視覚化したもの
④節目=方向性や流れが変わる蓋然性が高い水準。分岐点的なもの
⑤テクニカル分析=サイコロジカルライン、新値足、RSI(相対力指数)、ボリンジャーバンド、MACD、ストキャスティクス、P&F、パラボリックなど多彩な分析手法がある
では、いつものようにかみくだいて直した記事をみましょう。
株式投資の場合ですと本来は経営方針や財務状況を読み解く作業などが求められますし、インデックス投資であっても世界の景況感などを吟味する必要があります。そのような作業をすっ飛ばして通貨でも債券でもおよそマーケットならなんでも短絡的に結論を出していくチャート分析を敬遠する意見も少なくありません。
とはいえ、近年はアルゴリズム取引など、機械的に売り買いするファンドはチャートからみた発注タイミングがプログラミングされているので相場や株価が特定のゾーンに達すると一斉に売り注文や買い注文を浴びせます。自分自身がそういった取引をするかどうかはともかく、テクニカル分析のあらましを知っておいて損はないでしょう。
(日本経済新聞社 コンテンツプロデューサー 田中彰一)