まったく新しいプラットフォームづくりに迫る
東証ETF向けRFQプラットフォーム「CONNEQTOR」とは?(後編)
リーンスタートアップ・アジャイルという開発手法
――前回の記事では、東証が銀行などの地域金融機関のETF取引を効率化するために、RFQの電子プラットフォーム「CONNEQTOR」を開発した背景をお聞きしました。その開発手法として、リーンスタートアップ・アジャイルを採用したということですが、詳しく教えていただけますか。
リーンスタートアップ・アジャイルとは、仮説をもとに製品を作って早い段階でユーザーに使ってもらって検証するリーンスタートアップという手法と、機能を一つずつ追加的に開発していくアジャイルという手法を組み合わせた開発手法です。これによって、未知のものでも速度を上げて作り上げることを狙いました。
――東証が通常行うシステム開発とは違うのでしょうか?
東証の大きなシステム、たとえば株式の売買が行われているシステム「arrowhead」などでは、システムを作る前に作りたい内容を詳細に決めてから、その通りに作り上げます。
一方、今回のプラットフォーム開発は、今までにない全く新しいものを作りあげようということでしたので、我々の思い込みで“きっとこういうプラットフォームなら使ってもらえるはずだ”と突き進んでも使いにくいものになってしまう可能性があると思いました。また、できるだけ早く新しいプラットフォームを作ってETF市場を活性化させたい、という思いもあったので、予備調査に長い時間もかけられない。そこで、少しずつ作っていき早く失敗に気づいて修正するという方法を取ったのです。
早く失敗する
――早く失敗するというのは初めて聞きました。具体的にどういうことなのでしょうか?
地域金融機関の方からお話を聞く中で、きっとこういうものならニーズに合うのではと想像はするんですが、我々の想像力というのはどうしても限界があったり、思い込みで判断してしまったりすることもあるわけです。そこで、こういうことができれば使いやすいのではないかという“仮説”を立てて、それを検証していく、その繰り返しで精度を上げていくという手法を採用しました。デザイン思考という言葉が最近はやりですが、我々も同じような問題解決方法を採ったのです。
――聞くと簡単そうに思えますが、リーンスタートアップ・アジャイルによる開発は、実際は難しいものなのでしょうか?
そうですね、短時間で本当に使いやすいものを作るには、まずはデザイン思考にのっとり、できるだけ筋のいい仮説を作って検証していくことが必要ですし、しっかりとご意見をくださる利用者の皆様のご協力が欠かせません。
さらに、失敗に気づけばすぐ作り直せる技術力も必要です。そこで、今回は約10名からなるCONNEQTOR開発専任チームを作り、このチームで、仮説の立案・検証、提供する機能の決定、プログラミング、テストまでをすべて行いました。これにより、2019年11月の開発着手から約1年でサービスを開始することとなりました。金融市場を支えるシステムとしては、非常に短期間でできたと思います。
未完成のシステム
――なるほど、チーム作りから新しい手法を採用し、それにより、無事にCONNEQTORは完成したんですね。
いいえ、実はCONNEQTORは未完成なのです。ローンチから6カ月経ち、利用者も増えてきましたが、実際にご利用いただく中で、様々なご要望をいただいています。我々のミッションはCONNEQTORをもっと多くの方にご利用いただいてETF市場を拡大させることですから、そのための改善は今後も引き続き図っていきます。
実はローンチ後も毎月のように新機能をリリースしていてどんどん姿は変わってきているのですが、まだまだ進化させられると思っています。1年後にはCONNEQTORの形はすっかり変わっているかもしれませんね。
こういった開発手法は社内でも広がってきていて、今話題のデジタル・トランスフォーメーション(DX)をどんどん社内でも進めているんですよ。
――それは楽しみですね。これからも一緒にETF市場を活性化させて行きましょう。
(東証マネ部!編集部)
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