住宅ローン大解剖、借りる前・借りた後

重要な項目は「金利」だけじゃない!?

住宅ローンを比較するなら“ココ”をチェック!

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金融機関によって金利のタイプや利率、さまざまな条件が異なる住宅ローン。負担の少ないローンを組むには、どのような部分に注目して選ぶといいだろうか。

住宅ローンを比較する際のポイントと注意点について、家と住宅ローンの専門家・千日太郎さんに聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

「各金融機関の住宅ローンの情報をインターネット上で入手するのは、非常に難しいということを覚えておきましょう」(千日さん・以下同)

ネット上での情報収集は「目的意識」を持って行うべし

「住宅ローンの情報を得ようと思ったら、まず金融機関のホームページを見ると思いますが、ホームページは商品やサービスを売ることを目的に作られたものです。なんとなく見ていると、金融機関がプッシュしている住宅ローンに誘導されてしまいます」

変動金利の利率が低い住宅ローンであれば、「変動金利が低い!」と大きく表示されることだろう。低い利率の変動金利を探しているのであれば問題はないが、固定金利を探すつもりでも、目立つ部分だけを見ていると変動金利に誘導されかねない。

「ホームページを見る場合は、目的意識を持つことが大切です。変動金利の利率を比較したいのか、固定金利の情報を見たいのか、引き下げ制度の有無を確認したいのか、目的を明確にしてからチェックした方が自分にマッチする住宅ローンを見つけやすくなります」

住宅ローンのページには「団信0円」と書かれていることがあるが、この記述は要注意だという。

「民間の住宅ローンであれば『団体信用生命保険(通称、団信)』は加入必須ですし、その保険料は金利に上乗せされているもの。あくまで保険料として請求しないという意味で『団信0円』と書かれているだけで、特典というわけではありません。注目すべきは、『団信』にプラスされる特約です」

「団信」とは、契約者が亡くなったり障害を負ったりした場合に、残高を肩代わりしてくれる保険のこと。金融機関によっては「がんになった場合にも残高を肩代わりする」という特約がつくことがある。

「特約も、その分の保険料を金利に上乗せするタイプと、金利はそのままで付帯できるタイプがあります。細かなところまで読み込まないと要件がわからない場合があるので、特約がつけられる『団信』であれば、事前にきちんと確認した方がいいでしょう」

将来の家計に影響を与える「返済方法」

住宅ローンを選ぶうえで重要な項目は、金利や団信だけではない。今後数十年にわたって家計に影響する「返済方法」も、検討するべきだ。返済方法は、2つのタイプが存在する。

元利均等返済
元金と利息を合わせた毎月の返済金額が均等になるように、元金を配分して返済する方法。

元金均等返済
元金を返済期間で均等に割って返済し、利息はその時点での残高に合わせた額で返済する方法。

一般的に、「元金均等返済」の方が残高の減りが早く、利息の負担が少なくなるため、総返済額が少なくなるといわれる。しかし、「実際はそこまで差はない」と、千日さんは話す。

「『元金均等返済の方が総返済額が少なくなる』という説は、住宅ローン控除の減税効果を加味していません。確かに『元利均等返済』は返済初期に利息が多くなり、残高が減りにくいという特徴がありますが、一方で住宅ローン控除は残高が多ければ還付額も多くなるので、利息の負担が相殺される場合が多いのです。控除のメリットが大きい『元利均等返済』と総返済額が少ない『元金均等返済』に、そこまでの差はないといっていいでしょう」

総返済額に大きな差がないとなれば、どちらの返済方法を選んでもいいということだろうか。

「35年ローンを組んで35年かけて完済する想定であれば、どちらでも大きく変わりませんが、『元利均等返済』であれば毎月の返済額が一定になるので、返済計画を立てやすいでしょう。また、近い将来に家を売却し、10年前後で完済する予定であれば、住宅ローン控除の恩恵を受けやすい『元利均等返済』の方がいいといえます」

変動金利の住宅ローンを組み、「元金均等返済」で返済する場合には、意外な落とし穴があるそう。

「『元金均等返済』は毎月返済額が変わるものなので、変動金利タイプ特有の5年ごとに金利が変動する「5年ルール」、金利が上昇しても前回の125%までしか上がらない「125%ルール」は適用されません。あくまで残高をもとに利息を計算するので、その都度変化していきます。返済期間中に金利が大きく変動することを想定すると、『元金均等返済』はリスクが高いといえます」

意外と大きな支出「保証料」「融資手数料」

住宅ローンを組んだら、借入金と利息以外にも支払うお金が発生することを覚えておこう。

住宅ローンの手続きにかかる費用の一例
・保証料、融資手数料
・司法書士報酬
・抵当権設定登録免許税
・印紙税

「住宅ローンにかかる手数料や税金は、決まったものを払うしかありません。保証料や融資手数料は金額が大きく、金融機関ごとに比較しやすい部分ではありますが、カットすることはできません」

保証料と融資手数料のどちらかを支払うことになるが、どちらも借入額の2%程度であることが多いそう。では、なぜ名称が違うのだろうか。

保証料
金融機関のグループの保証会社に支払う手数料。債務者が返済できなくなった場合に、保証会社が代わって返済し、債務者は保証会社から請求されることになる。

融資手数料
金融機関に支払う手数料。債務者が返済できなくなったとしても、保証会社が関わることはない。

「保証料を払った場合、繰り上げ返済をして予定の年数より早く完済できた場合は、その一部が返金されます。片や、融資手数料は早く完済しても返金されません。また、一般的に融資手数料を払う住宅ローンの方が、若干金利が低い傾向があります。違いを知ることで、『繰り上げ返済するつもりだから返金される方にしよう』など、判断の1つになるかもしれません」

ひと口に「住宅ローン」といっても、金利や返済方法、手数料に至るまで、その形はさまざま。自分にマッチするものを見つけるため、一つひとつ丁寧に確認していこう。
(有竹亮介/verb)

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