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プロ向けのリサーチレポートに手が届く

野村證券のリサーチ力をスマホで。投資情報アプリ「FINTOS!」

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スマホ証券の登場や、100円・1000円単位で株を購入できる少額投資サービスの充実により、最近、株式投資にチャレンジし始めた人も多いはず。そんな人が直面する悩みといえば、「どんな銘柄を買っていいかわからない」というものだろう。もし、その解決策として、投資のプロや専門家のアドバイス・情報を聞ければうれしいものだ。

そんな投資情報を届けるサービスが、野村證券からリリースされた。スマホアプリの「FINTOS!」である。

野村證券といえば、90年以上の歴史を持ち、経済情報分析のプロであるアナリスト、エコノミスト、ストラテジストなど約430名を抱える。そんなプロたちのリサーチは、これまで、大量の資金を扱う機関投資家など、一部の人しか触れる機会がなかった。個人投資家、まして投資を始めたばかりの人がリーチするのは難しかったといえる。そんなプロの情報を見られるのがFINTOS!である。

「FINTOS!を見れば、その人にカスタマイズされた投資情報がつねに入る。デジタル・ファイナンシャル・アドバイザーのようなアプリを目指しています」。こう話すのは、野村證券 常務 未来共創カンパニー担当の池田肇氏。FINTOS!の具体的な機能から、同社が証券業界で起こそうとするデジタル化の展望まで、池田氏に詳しく聞いた。

難しくなりがちな投資のニュースを、読みやすくアレンジ

FINTOS!は、投資情報に特化したアプリであり、主な機能は3つある。1つ目は投資に関する「ニュース配信」。野村オリジナルのニュースや他メディアからの厳選記事など、FINTOS!編集部がチョイスしたものを日々提供する。2つ目は、登録した銘柄の値動きや決算、ニュースなどの情報を手軽にチェックできる「ウォッチリスト」だ。

そして3つ目は、野村證券のアナリストが作成した「オリジナル・レポート」の閲覧機能。機関投資家など、一部のプロが目にしていたレポートに手が届くようになった。

ニュース配信とウォッチリストは無料であり、オリジナル・レポートは月額4900円(税込)で閲覧できる。また、有料会員は今後、会員向け投資セミナーを受けられるなどのサービスも予定されている。

月額4900円というと、高いと感じる人もいるかもしれない。ただし、無料のニュースに加えて、野村證券の独自記事があり、アプリ専門の編集部によって、難しくなりがちな投資のニュースを、わかりやすく、読みやすい形にアレンジしているという。まずはそれを見ながら、より本格的な情報が欲しくなったら有料契約をする流れが一般的になるだろう。

「FINTOS!の価値のひとつは、無数にある投資情報の中から、信頼の置ける記事や調査に裏打ちされたニュースを提供することです。さらにこのアプリで目指すのは、お客さまの保有銘柄やセクターにカスタマイズされた情報をタイムリーに届け、投資のアドバイスを行うこと。今後は、お客さまの関心ある銘柄の決算予想を事前にお伝えするなど、つねに近くにいるアドバイザーのような存在を目指しています」

デジタルを活用し、限られた人しか受けられなかったアドバイスをスマホで得られるようになる。それが野村證券の目指す「デジタル・ファイナンシャル・アドバイザー」のあり方だ。

進む野村のデジタル戦略。資産管理アプリを開発した意味とは

FINTOS!を開発した背景としては、少額投資サービスなどが出てきたことで、人々の「投資の一歩目」の踏み出し方が変化した点が関係しているという。

「100円、1000円で株を買えるサービスが増えたことにより、とりあえずやってみようと口座開設する人が増えたと思います。とはいえ、どんな銘柄に投資しようか考えた時に、あまりにネットの情報が多すぎて迷ってしまう、場合によっては面倒になってやめてしまう人もいるでしょう。そういった状況では、信頼が置ける厳選された情報が欲しいはず。FINTOS!の役目のひとつは、そこにあります」

最近は、ロボアドのように、全自動の投資一任サービスもある。もちろんそれも良いが、自分のお金を預けるだけに、完全な“おまかせ”は不安な人もいるはず。「自分で投資の仕組みや知識をつけたい人は多い」と池田氏はいう。

「仮におまかせで投資するにしても、自分の全資産のうち、いくら投資に回せば良いのか、老後や将来の資金確保のために、投資の目標額をどこに設定すれば良いのか、こういった投資額や目標は本人が考えなければなりません。そして、この答えがわからないまま投資を始めている方も多いのです」

野村證券では、「OneStock」という資産管理アプリも提供している。マネーフォワードとの共同開発で、銀行口座に預けた預金や、投資している株式・FX、さらには不動産など、バラバラだったさまざまな資産を一元化し、可視化できるアプリだ。

「このアプリでは、現在の資産状況から自分の『資産寿命』が計算できます。質問に答えると、何歳頃まで資産が持つか計算し、その結果をもとに今後必要な投資額や投資プランが提案されます。実はこれも『そもそもいくら投資すれば良いかわからない』という一歩目の悩みに応えるものです」

OneStockで資産寿命を計算し、まず自分の資産が何歳まで続くのかを知る。そうして、投資に回す金額を大まかにイメージする。その上で、実際の投資においては、FINTOS!の情報を参考にする。この流れを理想としている。

さらに次のステップとして、取引アプリも「開発を検討中」だという。①資産の現状把握:OneStock ⇒②情報収集と投資検討:FINTOS!⇒③取引という一連の流れを、すべてデジタルで完結できる形を目指す。

一方、デジタルで完結できない複雑な資産の問題、たとえば相続の相談などは「電話やオンライン面談で行う形になるのでは」とのこと。加えて「同じ悩みを持つ参加者が真剣に話し合うことができる、資産運用のコミュニティがあればいいと思っています。そういった場つくりも考えていきたい」と展望する。

日本の証券会社の先駆けとして、歴史とノウハウを蓄積してきた野村證券。投資の世界がデジタル化を迎える今、野村證券は、この領域でも本気で改革を起こそうとしている。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2021年7月現在の情報です

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