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さまざまな分野で類似事例は増えていく?

コロナ禍で注目。技術者を育成する「VR研修コンテンツ」とは

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コロナ禍で“現場研修”が思い通りにできない中、それらをVRで補う取り組みがスタートしている。VR画像を駆使し、現場に近いリアルな研修を行うサービスが出ているのだ。

そのひとつが、建設技術研究所とエドガが開発した“橋梁点検”のVR研修コンテンツ。実在する橋梁の画像をVRに落とし込み、現実の点検のように、さまざまな地点から橋梁を見て損傷箇所を確認できるという。

VRを使った研修システムとはどんなものなのか。建設技術研究所インフラマネジメントセンターの山根立行氏と大塚篤生氏に、詳しい話を聞いた。

VRで橋の上や下を移動し、損傷のある箇所を探していく

現場での研修が難しさを増す中、今回取り上げるVR研修コンテンツは、構想1カ月、制作2カ月ほどの短期間で作られたという。まずはプロトタイプとして、実在する1つの橋梁をモデルに採用。VR画像を見ながら模擬点検ができる。

さっそく体験させてもらった。コンテンツを起動すると、橋上、橋下、橋の両端に設けられた点検箇所に移動できる。点検箇所は全部で30カ所あり、そのうち10カ所で損傷がある。まずは損傷のある箇所に移動し、実際にどれほど損傷しているかをクイズ形式で答える仕組みになっている。

「橋梁点検で重要なのは、1個1個の橋梁において、どの部分に損傷が起きやすいか予測を立てること。橋の構造や作られた年代、橋の上を走る車の交通量や周辺環境を見ながら、損傷しやすい部分をある程度予測し、実際にその箇所をチェックする作業が求められます。このVRコンテンツでは、まず全30カ所の移動地点のうち、10個の損傷箇所が橋のどの辺にありそうか、予測の訓練ができる仕組みとなっています」(山根氏)

今回のVRコンテンツでは、モデルとなった橋梁の竣工日や仕様、使用年数、交通量や断面図といったデータが用意されている。まずはこの情報をもとに、橋のどの部分に損傷が起きていそうか予測する。そしてその地点へ移動し、損傷部分をクリック。すると、クイズが出現する。

「損傷箇所は黄色く表示され、クリックするとクイズがスタートします。クイズは、実際の画像を見ながら、損傷の度合い・程度を最大5段階で回答するもの。国内には各機関が定める点検要領があり、今回は国土交通省の要領をもとに制作。画像の損傷箇所について、国交省の要領で定められている損傷程度のどれに該当するか選択していきます」(大塚氏)

たとえば、河川にかかる橋には、橋上にたまった雨や水を橋下に下ろす管がある。この管はサビなどの傷みが発生しやすい。今回のVRコンテンツでも、この管の損傷度合いを5段階で評価する。回答後は、正解・不正解とともにその理由が表示され、学びにつながる。

「さらに、各クイズの最後には、損傷箇所を適切に修繕した後の写真と、その修繕内容も表示されます。損傷箇所の度合いを学ぶだけでなく、それに対する処置の仕方も知ることができるのです」(山根氏)

コロナ禍で技術者の育成が滞れば、インフラの安全性にリスクも

道路やトンネルといったインフラには「定期点検」が付き物だが、その中でも特に橋梁の点検量は膨大だという。「橋梁は国内に72万橋ほどあり、5年に一度は点検が義務付けられています」(山根氏)。それだけの量をこなすためには、数多くの技術者を育てなければいけないが、コロナ禍で現場研修が難しくなった。このまま技術者の育成が進まなければ、膨大な橋梁点検に支障が出るかもしれない。そんな隠れた社会課題が芽を出し始めた中で、この取り組みは生まれた。

「VRを使った研修ツールを作れないかと考え、まずはVRの制作実績がある企業に相談。その中でエドガさんと出会い、一緒に組むこととなりました。モデルとなった橋梁の現場に行き、360度カメラで32カ所ほど撮影。それらを結合してVR画像が作られましたね」(山根氏)

コンテンツが完成しプレスリリースを出すと、橋梁の管理者や点検を担う機関から多数問い合わせが来たという。「思った以上に反応がありました」と大塚氏はいう。

単純に故障箇所を見るだけでなく、クイズ形式にして楽しく学べる内容にしたのもポイントだ。

「ゲーム性があるので、研修だけでなくインターンシップなどで学生に体験してもらうのも良いのではないでしょうか。リクルート活動にも使えると考えています」(大塚氏)。

今後は、モデルとなる橋梁を増やしていくとのこと。また、現在は鉄の橋梁のみだが、今年度中にはコンクリートの橋梁も追加する予定。さらに、橋梁だけでなく、さまざまな構造物でも同じようなVRコンテンツを作りたいと考えている。

「そのほか、現場作業員の安全学習にも応用したいですね。こういった点検は、高所作業時の転落や交通規制時の事故等のリスクをともないます。VR画像を使いながら、確認すべきポイントや危険なケースを学べたらいいですね」(大塚氏)

現場での研修が難しくなる中、その課題を突破する方法として誕生したVR研修。今後こういったサービスは、あらゆる分野で増えていきそうだ。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2021年7月現在の情報です

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