Global X Japanが“テーマ型ETF”を上場する理由
日本で唯一のETF専門資産運用会社Global X Japanに聞く・前編
日本初のETFが誕生してから25年の間、日経平均株価やTOPIXといったメジャーな指数に連動するものが主流だった。しかし、ここ数年、特定のテーマに沿ってピックアップされた銘柄で構成された“テーマ型ETF”が登場している。
日本において、国内株で構成したテーマ型ETFを積極的に上場しているのが、2019年9月に設立されたGlobal X Japan。その背景やテーマ型ETFの魅力について、代表取締役社長の金村昭彦さんに聞いた。
「テーマ型ETFのパイオニアになりたい」という思い
――Global X Japanは2019年9月に設立された新しい運用会社ですが、その成り立ちから教えていただけますか?
「我々はETF専門の運用会社として設立しまして、株主の5割がアメリカのGobal X社、4割が大和アセットマネジメント、1割が大和証券グループ本社となっています。
大和アセットマネジメントという運用会社を持つ大和証券グループが、なぜGlobal X社との合弁会社を作ったのかとよく聞かれるのですが、その理由は、ETF市場が盛り上がっているアメリカのノウハウをいち早く吸収したかったから。そして、近い将来に日本でも普及が進むであろう“テーマ型ETF”のパイオニアになりたいという思いから、先行投資をしたという部分があります」
――金村社長は、もともとGlobal X社と関わりがあったのですか?
「いえ、私は昭和58年に大和証券に入社しまして、Global X Japanに入る前は大和アセットマネジメントに籍を置いていました」
――大和証券グループからGlobal X社に移られたのですね。
「そうなんです。大和証券に入社してからの12年間は国内の債券本部に在籍し、その後、7年間ロンドンにおりました。東京に戻ったのが、ちょうど証券仲介業が銀行に認可されたタイミングで、1年だけ三井住友銀行に出向しまして、主に法人営業の方への商品説明を担当しました。大和証券に戻ってアジア地域の担当を務めてから、大和住銀投信投資顧問(現:三井住友DSアセットマネジメント)に移り、初めて運用の世界に身を置きました。そして、大和アセットマネジメント、Global X Japanとつながっていったのです」
――運用の世界に入ってから、ETFとの接点もあったのですか?
「大和アセットマネジメントにいる頃は直接の接点は限定的でしたが、日本のETFは売り買いするためのプロダクトという位置付けでした。一個人として、ポートフォリオの構成銘柄の1つとして長期間持てるようなETFをもっと作るべきだ、という思いは持っていた気がします」
日本とアメリカで異なる「個人の投資意識」
――先ほど「アメリカのノウハウを吸収する目的もあった」という話がありましたが、アメリカの投資に関する知見は、日本の市場でも役に立つということでしょうか?
「ETFに限らず、そうだと思います。1つの例ですが、私が大和証券に入社した昭和58年当時、日本の個人の金融資産は約500兆円で、アメリカは約1000兆円でした。ところが、直近では約1900兆円の日本に対し、アメリカは1京円に届くまでに成長し、その差は4~5倍まで広がっているのです。
その理由を調べてみると、国民の資産形成に対する考え方にあることがわかりました。アメリカでは401k(確定拠出年金)の登場で、株式や債券への投資がより定着したのです。一方、日本はいまだ現金保有されている人が多い。その結果、個人の資産に差がついたのだと考えられます」
――日本でもiDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC(企業型確定拠出年金)が広がりつつありますが、アメリカのように変わっていくと考えられそうでしょうか?
「老後の資金問題やコロナ禍がきっかけで、ネット証券を中心に証券口座数が増えてます。投資に対する知識を増やしたいという考えが強まっており、今後国内の金融リテラシーのレベルが上がっていくのではないかと考えています。それに伴い、資産形成の方法も、貯蓄から投資へと変わっていくことが期待されますね。
投資の面でいうと、ここ3年くらい、日本の個人投資家は米国株に集中する傾向が見られます。しかし、日本株もすべてが不調というわけではありません。最近は、海外の投資家から日本株に対する問い合わせが増えているのです。過去数年間で増やしてきた中国株のウェイトを通常に戻し、その分日本株を買う流れも見られます」
高い成長率を見込める「テーマ型ETF」
――米国株への投資が進むなか、Global X Japanでは日本株で構成したETFを上場していますが、まさに日本株の成長性に期待しているのでしょうか?
「その通りです。当社では、『eコマース』『ロボティクス&AI』など、成長性のあるテーマに絞って銘柄を選択し、1つのパッケージとして提供する“テーマ型ETF”を中心に上場しています。これまで公募投信で行われてきた運用を、ETF運用で行っているのです」
――ETFというと日経平均株価やTOPIXといった指数に連動する商品というイメージですが、テーマ型に特化させている理由はどこにあるのでしょう?
「日経平均株価、TOPIXなどと比べると、S&P500といった米国株指数の方が成績がいいため、米国株投資の流れが来ているといえます。しかし、テーマごとに銘柄を分けてみると、米国株より成績がいいテーマ型投資もたくさんあるのです。
もちろん日経平均株価やTOPIXは重要な指数ですが、数百から数千の銘柄が組み込まれているので、すべてをモニタリングすることは困難です。その点、当社のテーマ型ETFであれば、ほとんどが数十銘柄、多いものでも125銘柄で構成されているので、個人投資家の方もモニタリングしやすいというメリットがあります」
――テーマで分けられていると、興味のある分野に投資しやすいですしね。ところで、成長性のあるテーマは、どのように選別しているのですか?
「我々は、さまざまな国の政策をチェックしています。政策や公的な国の発表などを見ていると、自ずとテーマは絞られてくるのです。例えば、2016年にロボットやAIの力を借りて快適な生活を目指す『Society5.0』が日本政府から提唱されたことで、国内のロボット開発やAI活用は活発化しています。政策に関係する業界が盛り上がるというわけです。
また、政策になると、税率が緩和されたり金融機関が融資を好条件で出したりするなど、対象となる業界が成長しやすくなるという側面もあります。そのため、テーマ型ETFを組成するうえで、さまざまな国の政策は重要な指標になるのです」
――日本では、現状どの程度のテーマ型ETFが上場されているのでしょう?
「2021年6月末時点で、国内の株式ETF(債券・不動産・商品ETFを除く)約180本のうち、成長性の見込まれる特定のテーマに絞って投資対象を選定するテーマ型ETFは10本未満です。アメリカでは、株式ETF約1300本のうち、170本超がテーマ型なので、国内上場のテーマ型ETFはかなり少ないといえます。だからこそ、最初にも話したように、我々がテーマ型ETFのパイオニアとなり、市場を盛り上げていきたいという思いがあります。」
投資家のために、より選びやすく、より成長性を見込めるETFを展開しているGlobal X Japan。その熱い思いをより深く知るべく、後編では具体的な商品の話と今後の展望について伺う。
(有竹亮介/verb)