テーマで分類することで“身近に感じられる金融商品”に
日本で唯一のETF専門資産運用会社Global X Japanに聞く・後編
2019年9月の設立以来、特定のテーマに沿った銘柄で構成される“テーマ型ETF”を上場しているGlobal X Japan。前編では、「成長性の高い日本株を再認識してほしい」という思いからテーマ型を展開していることを、代表取締役社長の金村昭彦さんが教えてくれた。
後編となる今回は、注目度が高まっているETFについて聞くとともに、これからETFを通じて実現したいことや市場に対する期待など、未来についての話も金村社長に語ってもらった。
「ゲーム&アニメ」「eコマース」など馴染みのあるテーマも
――Global X Japanが国内で上場しているテーマ型ETFを見ると、「グローバルX ゲーム&アニメ-日本株式ETF」(2640)など、投資経験のない人でも興味が湧きそうな銘柄がありますね。
「2017年からのデータを比較すると、もっとも好調に推移しているのが、その『ゲーム&アニメ』で、2021年7月時点では、S&P500よりもパフォーマンスが良いんです。グローバルに見ても、日本のゲームのハード会社、ソフト会社はマーケットのリーダーだと思いますし、今後も期待できる業界だと感じています。
アニメーションに関しては上場企業があまりないという事実があるのですが、日本のアニメは世界トップクラスだと思いますし、今後アニメ制作会社や配信会社が上場するのではないかと予測しています。そうなれば投資対象になる可能性がありますし、さらにアニメ業界が盛り上がっていくだろうと思いますね」
――「グローバルX eコマース-日本株式ETF」(2627)も、馴染みのあるテーマといえそうですよね。
「意外に感じる方も多いと思うのですが、先進国の中で日本はeコマース比率が低いんです。もっとも普及している中国やイギリスと比べると、日本は初期段階にあります。だからこそ、期待値があるといえるのです。国際的な平均レベルに達した場合に、eコマースの市場が現状の数倍に膨らむという試算ができますし、今まさに伸びてきているという話も聞きます」
――ネット通販だけでなく、オンラインでの金融商品の取引も進んでいるので、これからさらに注目ですね。テーマで分類されていると、投資初心者でもETFを始めやすそうな印象です。
「テーマ型となると、業界が今後どう推移していくかという分析も必要になりますが、興味のある分野であれば情報も入ってきやすいですし、何より身近に感じてもらいやすいのではないかと思っています。
そして、テーマ型ETFはポートフォリオの中核を成すものとして、5年、10年と中長期的に保有できる資産だと考えています。低コストでいつでも売買できるというETFそのもののメリットもあるので、認知度が上がって広まっていってほしいです」
――現状は、どの程度の認知度と捉えていますか?
「国内では、まだまだだと思いますね。日本のETF市場は、日経平均株価やTOPIXなどマーケット全体の指数に連動するETFが圧倒的なので、テーマ型ETFはこれからの段階だと考えています。こういう場を通して、個人投資家の方々にも知ってもらえたらと思います」
今後さらに展開していきたい「ESG投資」
――テーマ型ETFを見ると、日本企業の魅力を再確認できそうですよね。
「そうなんです。テーマ型はもちろんですが、ほかの観点からも国内株に注目してほしいですね。2021年6月に上場したばかりの『グローバルX グローバルリーダーズESG-日本株式ETF』(2641)は、グローバルな視点から見て成績上位に入る日本企業を、ESGのファクターも加味して選別し、構成しているETFです。
この『グローバルリーダーズ』もいいパフォーマンスで推移していますし、主に機関投資家ではありますが、問い合わせの数も多いですね」
――ESG投資の観点も取り入れているのですね。
「私もかつて在籍していた大和証券グループが、ESGという言葉が国連で紹介された2006年頃からいち早く取り組み始めていたこともあり、ETFでも取り入れられたらという思いがあります。現時点で当社のESG関連のETFは3本しか上場していませんが、これから積極的に上場していきたいと考えています。
ニュース番組で日経平均株価などの指数が紹介される流れで、ESG関連の代表的ETFの価格も1つの指数として紹介される時代になるといいなと思うのです。数値として見えると、自然と国民の意識も高まり、SDGs達成にも近づくのではないでしょうか。そういう願いも込めて、ESGは継続して力を入れていこうと考えています」
――現在の日本のESGに対する姿勢は、どのように捉えていますか?
「ESGという言葉ができて約15年の間に、ヨーロッパではどんどん意識が高まり、アメリカでもここ数年で急激に意識が変わってきています。その点、日本は2006年頃にいくつかの金融機関が動き出したものの、慎重な国民性も影響しているのか、国全体としてはなかなか浸透してこなかったところがあると思います。
しかし、最近は、当社から金融機関の方々にESG関連のETFのご説明をすると、『より詳しく内容を説明してほしい』と話を聞いていただける機会が増えてきています。一歩一歩、着実に意識が上がっていることを感じますね」
――日本もSDGsとともに意識が高まり、ESGに配慮することが企業活動の前提となる時代が来るかもしれませんね。
「個人投資家の傾向も変わってきているので、そのような流れになると思います。数年前は、ESG関連の商品を買うお客様というと、医師や弁護士、学校教諭といったESGの考え方につながりやすい職業の方が多かったのですが、ここ半年くらいで職業に関係なく、多くの方が興味を示すようになってきたと感じています。
これは公募投信の話ですが、脱炭素のエッセンスのある投資信託を販売する際に、お客様が一生懸命聞いてくれるようになったという流れが出てきているのです。ETFでもESG関連の銘柄を出せば、同じように興味を持ってもらえると信じています」
ETFが“資産形成の選択肢の1つ”と認識される社会に
――先ほど「テーマ型ETFはまだこれから」というお話がありましたが、今後の日本のETF市場にどのような成長を期待していますか?
「アメリカでは2020年までに、円に換算すると1400兆円ものお金が公募投信からETFにシフトしました。なぜ、人々がETFに移行したかというと、コストの低さだけが理由ではなかったようなのです。
別の理由として、販売会社が取引手数料を取るのではなく、お客様のポートフォリオ全体での収益に対してフィーをもらうスタイルに変わりだしていることが挙げられます。このスタイルであれば、当然手数料の低い商品に人は集中しますし、販売会社としても手数料の低い商品を提案しやすくなります。そういった点から、コストが低く売買しやすいETFの使い勝手の良さが注目されたのだと考えられるのです。
そして、日本でもこの流れが起こるのではないかと感じています。大手の証券会社では、『収益に対してフィーをもらうスタイルに変更していく』といったコメントも出始めているので、ETFがさらに盛り上がる時代が来るのではないでしょうか」
――個人投資家のコスト意識も高まりそうですね。
「そうなってくるでしょうね。ただ、日本の投資している人の割合は先進国のなかでもっとも少ないので、投資そのものを遠く感じる方はまだまだ多いだろうと思います。そして、個々の資産形成の方法は、一人ひとりが自分で決めていくものです。
だからこそ、我々はわかりやすいETFを提供することで、少しでも身近に感じていただき、資産形成の選択肢の1つにETFを加えてもらえたらと考えています。ETFは構成されている銘柄も運用方法もすべて開示されているので、非常に透明性の高い商品です。皆さんの資産形成のお役に立ちたいと強く思っておりますので、まずはETFに興味を持っていただけたらうれしいですね」
具体的なテーマや指数を示すことで、投資家の関心に寄り添うGlobal X JapanのETF。気になる業界や企業で構成されたものなら、投資を始める入り口にもしやすい。各テーマの構成銘柄を知るところから始めると、さらに興味が湧くことだろう。
(有竹亮介/verb)