【日経記事でマネートレーニング18】相場ニュースを読む~ローソク足、資金の動きや投資動向を見える化
提供元:日本経済新聞社
このコーナーでは日経電子版の記事を読むことで資産形成力のアップを目指します。実際のニュースやコラムを引用し、初心者には難しく思えるような用語をかみくだき、疑問点を解消していきます。金融・経済ニュースをどれだけ読みこなせるかは投資のリテラシーそのものです。日々の情報にリアルタイムで動ける実践力を養いましょう。
18回目は「ローソク足」を取り上げます。投資経験者なら誰もが目にしたことがある、白と黒の四角形で描かれた独特のグラフですね。証券会社店頭のボードなどで目にすることが多いと思いますが、株式や為替に限らず、資金性商品の推移はローソク足チャートがよく使われます。ローソク足を使わなくても投資は可能ですが、知っておくとさまざまなマーケットの理解に役立ちます。
「ローソク足」はテクニカル分析ではなく需給指標
ローソク足は初心者や未経験者には「とっつきにくい」「専門的」というイメージがつきまとい、テクニカル分析のたぐいだと思われがちです。実際、そう紹介しているメディアやサイトも少なくありません。結論をいうと、テクニカル分析ではなく、ローソク足は買い方と売り方の姿勢、つまり1日のマネーの動きをみる需給分析の指標です。
サンプル記事をみてみましょう。
日経電子版の記事は親切で易しいほうですが、通常の株式サイトではローソク足の知識は所与のものとして書かれています。記事のニュアンスぐらいはつかめるよう最低限の知識を押さえましょう。
ローソク足は四角形と上下に突き出た線(ひげ)を組み合わせて描きます。火をともすローソクに似ているのでそう呼びますが、この回では話をシンプルにするため上下の線の解説は割愛し、四角形の色と大きさだけに着目してみます。
株式相場を例にとります。通常は平日に取引があり、午前と午後それぞれに取引時間帯があります。ただ、午前と午後はそれほど重要ではなく結局「1日を通して相場は上がったのか下がったのか?」がニュースになります。仮に日経平均株価が前日比100円高の2万8000円で取引を終えたとすれば「上昇」なので強いという結果が導かれます。
さて、本当に相場は強いのでしょうか?いまの例で日経平均株価が600円高の2万8500円で取引が始まったのに、時間を追うごとに上げ幅を縮めてその結果2万8000円まで下げて取引を終えたらどうでしょう?
「終日、売りが優勢だった」といえますから、むしろ相場は「弱い」という評価が適切かもしれません。明日以降、相場はどうなるか、と問われれば「下がる蓋然性が強い」という答えが正しいでしょう。終値だけの比較とは真逆の結果が導かれるわけです。ローソク足を少しかじっていると、このような見方や分析が可能になるということを知ってください。
四角形が大きいほど勢いが強く、節目・転換点のサインにも
もう1度まとめると、マネーの動きから相場の強弱を知るには前営業日との終値の比較では不十分で、その日の始値と終値を比べたほうがわかりやすいということになります。
ここで、ローソク足が登場します。ローソク足は終値が始値より高いときに白い四角形で描きます。陽線と呼び、需給では買い優勢を意味します。反対に終値が安くなると黒く塗りつぶして四角形を描きます。文字通り暗くて陰になっているので陰線といいます。
陽線が大きいほど取引開始後の上げ幅が大きく、1日を通して資金流入が多かったことを意味します。陰線が大きいと取引開始からの下げがきつく、売り圧力が強いことを意味します。
さらに応用的な話をしましょう。相場全体が下落基調にあるときに毎日、陽線が続くとどういう状態を意味しているでしょうか?
答えは投資家の押し目買い意欲が強い、ということです。資金需給が良好なので相場が反転するサインです。逆に相場が上げ局面で陰線が続くと売りたい人が多いというシグナルになります。相場は上昇力を失い、下げに転じる公算が大きくなります。
①下値支持=買いが増えて下がりにくくなる価格水準、またはその価格帯
②ローソク足=取引開始時の価格(始値)と終了時の価格(終値)で四角形を描く。次に取引時間(期間)中の高値と安値を線で付け足して作るろうそくの形に似たグラフ
③終値が始値を上回る=終値>始値の場合は取引時間中に買いが売りを上回って価格が上昇したことを意味し、②の四角形を白色で描く。終値<始値の場合は売り優勢で価格が下がったことになり、四角形を黒く塗りつぶす
④陽線=③のローソク足で白い四角形を指す。反対に黒いローソク足を陰線という
⑤日通し=1日を通して、という意味。日通しのローソク足を日足という。週足、月足、5分足などがある
では、いつものようにかみくだいて直した記事をみましょう。
ローソク足は視覚的にマネーの動きを伝えるため、慣れると初心者にもわかりやすい解読指標になります。今回は割愛したひげを加味したり、連続するローソク足を組み合わせたりするとさらにマーケットの空気感や相場や屈折点などがみえてくるようになります。
(日本経済新聞社 コンテンツプロデューサー 田中彰一)
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