住宅ローン大解剖、借りる前・借りた後

もっとも重要なポイントは「売れる家を買うこと」!

住み替えるなら「買い先行」と「売り先行」どっちがお得?

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住宅ローンの返済中に、現在の自宅より魅力的で自分や家族の希望に合う物件を見つけてしまった場合、「住み替え」を考える人もいるだろう。

では、返済しながら新しい家を購入することはできるのか? 先に古い家を売ってからの方がスムーズなのか? 住み替えに関する疑問点と「買い先行」「売り先行」それぞれのメリット、デメリットについて、住宅ローンの専門家・千日太郎さんに聞いた。

引っ越しが一度で済む「買い先行」

「住宅ローンの返済を行いながら、新しい家を購入して住み替えることは可能です。これを『買い先行』と呼びます。ただし、古い家と新しい家の2つの住宅ローンを返済する『ダブルローン』になるため、新たに借りる住宅ローンの審査が厳しくなります」(千日さん・以下同)

多くの人は「買い先行」で住み替えをするとしても、いずれは古い家を売却してローンを完済し、新しい家のローンだけを返済する形を目指すだろう。しかし、古い家が売却できていない状況だと、売却までの期間にわたってダブルローンの支払い継続が可能かという点について、金融機関は保守的に判断するため、審査が厳しくなってしまうのだ。

「『買い先行』になりやすいのは、家を売却する前に次に住もうと考えている物件が決まっているケースです。希望の物件を購入するため、できるだけ早く古い家を売却しようと焦るあまり、売却価格が低くなってしまう傾向があります。これも1つのデメリットといえるでしょう。家の買取を保証してくれる業者もありますが、その場合は買取価格が一般的な相場より少し低くなることが多い印象です」

ただ、「買い先行」にもメリットはある。引っ越しが、古い家から新しい家への一度で済むという点だ。新しい家の購入や契約、引っ越しにかかる費用を最低限に抑えられるといえる。

「買い先行」の特徴
・新しく借りる住宅ローンの審査が厳しくなる
・売り急ぐため売却価格が低くなりやすい
・引っ越しが一度で済む

住宅ローンを組みやすい「売り先行」

「一方で、今住んでいる家を先に売却する『売り先行』の場合は、新たな家を購入する時点でローンが0円になっているため、審査は通常通りに行われます。不動産会社に住み替えを相談すると、『家を売却してから、新しい物件を探しましょう』と言われることも多いでしょう」

「売り先行」の場合、住み替え先の物件が確定していなければ、急いで売る必要がないため、納得のいく金額で売却しやすくなる。

「ただし、古い家と新しい家の間に仮住まいが必要になります。二度の引っ越しが必要になり、仮住まいの家賃や敷金、礼金などを支払う必要が出てくるため、出費が多くなりやすいというデメリットがあります」

「売り先行」の特徴
・新しく借りる住宅ローンを満額で借りられる可能性が高い
・古い家を納得のいく価格で売却しやすい
・二度の引っ越しが必要になる

「買い先行」ならチェックするべき「フラット35」

「買い先行」だとデメリットが目立ってしまうが、現在住んでいる家を売る前に理想的な物件を見つけてしまうことはあるだろう。そのようなときに役立つ住宅ローンがあるという。

「古い家の売却前であれば、住宅金融支援機構が提供する『フラット35』の利用をおすすめします。現在住んでいる家を売るための契約を不動産業者と結んでいて、さらに売却代金でローンを完済できることが確定している場合、現在の住宅ローンは完済したものとして審査してもらえるからです」

つまり、「フラット35」であれば「売り先行」と同じ状態で審査してもらえるため、古い家を売り急ぐ必要がなくなり、新しい家も早い段階で価格交渉や契約ができる。引っ越しも1回で済むのだ。

「『フラット35』には、現在住んでいる家を売るのではなく貸して、新しい家を買うという『機構住みかえ支援ローン』という住宅ローンもあります。移住・住みかえ支援機構(JTI)が古い家を借り上げて転借人に貸し、その賃料で古い家のローンを返済しつつ、新しい家のローンも返済していくというものです」

家を手放すわけではないうえに、JTIに借り上げてもらえるため、貸す人が見つからないといったことにもならない。住み替えをする人にとっては有意義な手段といえそうだ。

「ただし、ローンが返済できるくらいの家賃で借り手が見つかる物件かどうかの審査はあると思われるので、どんな物件でも使える制度というわけではありません。『フラット35』はお金を借りる人の職業や収入に対する審査はやさしいのですが、物件に対する審査は厳しいという特徴があります。確実に売れる物件、貸せる物件であることが、住み替えでの『フラット35』利用の条件といえそうです」

住み替え前提なら「売れる家」を買うことは必須

「フラット35」に限らず、将来的に住み替えを想定しているのであれば、土地や家の選び方が重要になるという。

「住み替える前提で家を買うのであれば、売れる家を買うことを重視しましょう。そこを意識しておけば、いざ売りたいと思った時にすぐに買い手が見つかり、『売り先行』で新しい家の購入を進められるかもしれません。ちなみに、家は売りに出してから50日程度で売れるケースが多いようです。高すぎる価格をつけなければ2カ月弱で売れると考えると、意外と早い印象なので、焦って悲観的にならないことも大切だといえます」

千日さんは、「住み替えは必要があってやむなく行うことが多いものですが、生活環境の変化に伴って気分転換にもなるので、資金さえやりくりできれば、いい選択肢の1つだと思う」と話す。ただし、注意も必要だという。

「近年は住宅価格が高騰しているので、売却益が出やすくなっているといえます。その反面、新たに買う家も割高になっている可能性が高いので、『高く売れそうだから住み替えよう』と安易に考えるのは危険です。住み替えの見極めは難しいので、慎重に進めましょう」

新しい家での生活を想像してワクワクする住み替えだが、楽しい未来を実現するために考えなければならないこともたくさんある。家を売るタイミングや買うタイミングは今でいいのか、引っ越しなどにかかる費用は捻出できるか、冷静な判断も必要だろう。
(有竹亮介/verb)

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