「医療費控除」の申告がラクになるかもしれない!?
マイナンバーカードを「健康保険証」利用する5つのメリット
2020年9月に始まったマイナポイント事業をきっかけにマイナンバーカードを作った、という人は多いのではないだろうか。実は、2021年3月からマイナンバーカードにさらなる便利な機能が追加されている。「健康保険証」として利用できるようになったのだ。
ただ、現在は一部の医療機関や薬局に限られていて、本格的に使えるようになるのは10月からとなる予定。本格始動を目前に控えた今、健康保険証利用のメリットについて、『得する会社員 損する会社員』の著者でファイナンシャルプランナー・社会保険労務士の川部紀子さんに聞いた。
「健康保険証利用」の5つのメリット
「マイナンバーカードが健康保険証利用できることによるメリットは、『2枚持ち歩かなくていい』ということだけだと思う方もいるかもしれませんが、実は他にもあると厚生労働省が発表しています。その内容を紹介していきましょう」(川部さん・以下同)
(1)就職・転職・引っ越しをしても健康保険証として使える
「住む市区町村や勤める会社が変わった際には健康保険証の切り替えが発生するため、健康保険証が手元にない時期が出てきます。その間もマイナンバーカードは変わらず使えるため、普段と変わらずに病院や薬局にかかれるようになります」
(2)自分の特定健診、薬、医療費の情報が確認できる
「『マイナポータル』というサイトやアプリのマイページに、過去に受けた特定健診の結果や処方された薬、支払った医療費に関する情報が蓄積されていきます。自分の健康や受けた医療について、いつでも確認できるようになるのです」
(3)同意をすれば医師や薬局に情報を共有できる
「被保険者であるご自身の同意がある場合に限って、過去の特定健診や処方された薬の情報が医師や薬局に共有されます。わざわざ病院経由で情報を引き継いでもらう必要がないので、迅速かつ正確な診断につながるといえそうです」
(4)医療費控除がラクになる
「『マイナポータル』に医療費の情報が蓄積されるため、確定申告で医療費控除を申告する際に、領収書を整理する必要がなくなるといえます。また、『マイナポータル』からe-Taxに情報連携できるようになるようなので、オンラインでの申告がさらに簡単になるでしょう」
(5)高額療養費制度の対象となる支払いがラクになる
「これまで高額療養費制度を利用する場合は、自身で医療費を立て替えてから請求するか、限度額適用認定証を発行する必要がありました。しかし、マイナンバーカードを健康保険証利用し、情報共有に同意すれば、新たに手続きなどをしなくても高額療養費制度の限度額を超える医療費は自動的に免除されるようです」
不慮の事故の際に役立つ可能性あり
医療費控除や高額療養費制度に関するメリットは、病院にかかる頻度が高い人にとっては大きく影響しそうだ。また、病院を受診する機会が少ない人にとっても、メリットとなる部分があるという。
「『(3)同意をすれば医師や薬局に情報を共有できる』という部分です。まだ制度が本格始動していないので、わからない部分もあるのですが、例えば、予防接種などの場で『今飲んでいる薬はありますか?』と聞かれた際に薬の名前を把握していなかったとしても、処方されている薬の情報を共有すれば、医師が問題ないか判断できます。また、事故に巻き込まれて近隣の病院に搬送された際に、ご自身がしゃべれない状況でも情報を共有できれば、現地の医師や看護師が診断や治療を進めやすくなると考えられます」
1カ所に医療情報が集約され、自身の判断で情報共有の許可を出せるとなれば、これまで以上に自分の命や健康を守ることにつながりやすくなるかもしれないのだ。大きなメリットといえるだろう。
「マイナポータル」での利用申し込みが必須
「ただし、注意点があります。マイナンバーカードを持っていれば、自動的に健康保険証利用できるようになるわけではありません。『マイナポータル』での利用申し込みを行うことで、健康保険証利用できるのです」
「マイナポータル」での利用申し込みの方法を確認していこう。
(1)「マイナポータル」アプリから「マイナンバーカードが健康保険証として利用できます」の下の「申し込む」を選択
(2)表示の指示通りに進み、マイナンバーカードの「利用者証明用電子証明書のパスワード」(数字4桁)を入力
(3)スマートフォンでマイナンバーカードを読み取る
上記のステップを踏めば、健康保険証利用の申し込みが完了。多少手間取ったとしても、1~2分で終わるだろう。ICカードリーダーがあれば、パソコンでも「マイナポータル」サイトから申し込み可能。
「10月から、マイナンバーカードを利用できる医療機関や薬局には『マイナ受付』と書かれたポスターやステッカーが掲示されるようです。かかりつけの病院や薬局で貼られているか、確認してみましょう」
利用可能な医療機関や薬局では、専用の顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードをかざすだけで自動的に受付完了となるようだ。マスクをしていても顔認証可能で、人との接触も避けられるため、コロナ禍においても重要な機能となるだろう。
制度内容を確認すると、メリットが大きいことに気づくマイナンバーカードの健康保険証利用。家で簡単に申し込みできるため、今のうちに手続きしておいて損はなさそうだ。
(有竹亮介/verb)
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川部紀子
FP・社労士事務所川部商店代表、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。日本生命保険相互会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・プランニングに携わる。2004年、30歳の時に起業。個人レクチャー・講演の受講者は3万人を超えた。最新の著書に、貯蓄や投資の基礎知識を掲載した『得する会社員 損する会社員』がある。