世界共通語「ESG/SDGs」

【日経記事でマネートレーニング20】投資ニュースを読む~なぜ「ESG」運用が大事なのですか?

提供元:日本経済新聞社

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このコーナーでは日経電子版の記事を読むことで資産形成力のアップを目指します。実際のニュースやコラムを引用し、初心者には難しく思えるような用語をかみくだき、疑問点を解消していきます。金融・経済ニュースをどれだけ読みこなせるかは投資のリテラシーそのものです。日々の情報にリアルタイムで動ける実践力を養いましょう。

20回目は「ESG」を取り上げます。このところ、日経媒体にESGの3文字が出ない日はないのではないかと思うほど毎日のように関連記事や広告が流れています。ESGは前回19回目のIRと裏表の関係に当たるキーワードなのであわせて理解を深めましょう。

少し前の話になりますが、ある大手消費者金融会社が破綻に追い込まれました。法外な金利で高収益をあげていましたが、法改正で過払い金返還を迫られ、資金繰りが行き詰まりました。社会のためにならないような企業は退場してもらうという国策につぶされたといえるでしょう。

運用の目的は「老後の資産形成」ではなく、持続的な社会発展!

反社会的な企業行動はもちろん、環境汚染を招く素材の使用、健康を害する商品の販売、人権無視の労働体制――こういった動きすべてが社会の健全な発展には阻害要因になります。そこで、将来も世界が栄え続けていけるように国際社会全体で協力しあいましょうという指針が国連で採択されました。SDGs(持続可能な開発目標)です。これを投資・運用のジャンルに置き換えたのがESG(環境、社会・企業統治)となります。サンプル記事をご覧ください。

現象面しか書かれてないのでわかりにくいですが、次のフローで理解してみましょう。

① 世界が将来も永続的に発展できるように加盟国が力を合わせよう
② ①の目標へ気候変動防止や人権尊重などに向けたルールを整備しよう
③ ②に貢献できる企業こそ、社会にとって重要なはず
④ ③の企業を強く、勝ち残らせていくように投資家も考えないといけない
⑤ ④の達成には当該企業の価値が増加(株高)し、金利調達コストが低くなればよいのでは
⑥ ⑤の実現へ機関投資家はもちろん個人投資家も貢献していくべき
⑦ ⑥の促進へ専用のファンドを作れば個人マネーも集まりやすくなる

つまり、ESG関連投信を買うということは個人マネーがめぐりめぐって(⑦から①へ)世界の持続的発展に貢献していくわけで、「老後の備え」という個人的利害の投資とは一線を画します。いまのESGファンドの人気は個人の投資モラルに響いたことが一因でしょう。

20年前から存在、「仮面」を付け替えてきた嘆かわしい歴史

もう少し追いかけてみましょう。このたぐいのファンドは20年以上前から存在しています。日経記事のデータベースをさかのぼると、1999年ごろには地球環境に役立つ企業に投資する「エコ・ファンド」が花盛りでした。名を変え品を変え、「ESG的」ファンドは登場しましたが、人気がなくなったり、相場が下がったりすると人知れず消えてしまう嘆かわしい歴史を繰り返してきました。

筆者が約10年前に書籍で取り上げて反響を呼びましたが、TOPIX連動型投信も成長企業ファンドも、ESGファンドも組み入れている主要な銘柄は6~8割が同じなのです。

理由は大きく2つあります。ひとつはESG型経営を世界戦略で展開するにはネットワークや資金力に長ける大企業に偏ります。2つ目にESGの特徴は「見えざるサービス・見えざるコスト」にあり、企業のメッセージ発信力が重要になります。これが冒頭申し上げたIRとつながります。企業活動を炭素排出量に換算する場合、調査・開示には膨大なコストがかかります。実現できるのは大企業に限られ、ESG銘柄として括られるのは大企業に集中します。これがインデックス運用と中身はほとんど同じになる理由です。でもESGという冠を付け替えるだけで商品が売れ、手数料も高くもらえるのであれば、運用会社にとってこれほどおいしいものはありません。

①ESG=Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字。2015年に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)を運用・投資の視点に置き換えた指針といえる

②ESG関連ファンド=ESGに積極的な企業を中心に運用する投信

③設定=投信の最初のスタート額

④個人マネー=投資家には自ら資金を出していない見かけ上の投資家と、実質的に資金を投じている「最終投資家」に分かれる。前者が投信(の運用会社)、後者が個人で株式市場では売買代金シェア3割、外国人に次ぐ存在感を示す

⑤通常の投信=一般的なアクティブ型投資信託

⑥信託報酬=主に運用にかかる手数料で、ファンドマネジャーの人件費、調査費、オフィス維持費、事務管理費などにも充てられる。投信協会で統計を公表している

⑦アクティブファンド=運用会社固有の投資判断によって、東証株価指数などの相場全体の指標を上回るリターンを目指す投信

では、いつものようにかみくだいて直した記事をみましょう。

筆者は個別株投資こそがESG投資の最高の実践方法だと考えます。ひとまかせにしないで、社会貢献を果たしていそうな会社を自ら探し、検討し、選び、そして株主になって経営戦略をともに考える――こうした作業、資金投下の過程にSDGsに向けた本当の価値があるはずです。

(日本経済新聞社 コンテンツプロデューサー 田中彰一)

 

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