手軽に分散投資ができて、分配金が年4回受け取れる!?
数万円から始められる不動産投資「REIT(リート) ETF」を知ろう
2001年に国内にJ-REITの市場が開設されてから、20年の時が経った。新聞紙面や日銀の買い入れのニュースで目にするREITだが、そもそもREITとは何なのか、きちんと把握できているだろうか。不動産投資ということはなんとなくわかっていても、どのような仕組みか理解していない人もいるかもしれない。
そこで、REITとそのREITに投資するREIT ETFについて、ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんに教えてもらった。
低コストで比較的安定した分配金を受け取ることができる「REIT」
「REIT(リート)は『Real Estate Investment Trust』の略で、不動産版の投資信託のこと。一般的な投資信託は、投資家から集めたお金を主に株式や債券で運用するものですが、REITは集めたお金で不動産に投資し、賃料収入や売却益などを投資家に分配する商品です。投資対象はオフィスビルや商業施設、賃貸マンション、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設など、多岐にわたっています。J-REITは、日本(Japan)のREITという意味です」(深野さん・以下同)
実物の不動産投資では、不動産そのものを取得しなければならないため、数百万~数千万円の資金が必要になり、一個人として投資するのはなかなかハードルが高い。しかし、投資信託であるREITならば、少ない資金でも不動産投資が可能になるという。
「東証に上場しているREITの場合、価格が低いもので数万円、高くても70万~80万円程度で購入できます。また、不動産の管理はプロの資産運用会社が行ってくれるので、実物不動産を持つことと比べると、はるかに始めやすいといえるでしょう。ほかにもREITならではのメリットがあります」
(1)いつでも売買できる
「投資信託ではありますが、REITは取引所に上場されているため、株式と同様にリアルタイムでの売買が可能です。指値注文を利用することによって、あらかじめ指定した価格で取引することもできます」
(2)利回りが高い
「2021年8月現在、国内で上場されているREITの平均利回りは3%を超えています。株式は平均1~2%なので、REITの方が高いのです。J-REITは、利益の9割超を分配金として還元することで法人税が免除される仕組みが取り入れられていて、投資法人が内部留保を持たずに投資家にほとんど分配するため、利回りが高くなりやすいといえます」
(3)元本を毀損するリスクが低い
「株式の場合、投資している企業が倒産すると、元本がゼロになるリスクがあります。しかし、REITは不動産を所有する投資法人が倒産したとしても、不動産そのものの価値は残るため、元本がゼロになるリスクは低いといえるのです」
これらのメリットを踏まえると、株式投資よりも利益を期待しやすいといえそうだが、注意点があるとのこと。
「株式であれば、会社の利益が増えることで株価が数倍に上がるということがあり得ますが、REITで同じような状況を狙うことは難しいといえます。一般的に、景気が良くなったからといって、賃料が倍に上がるということはないからです。一方で、REITは賃料収入が半期ごとに分配されるので、値上がり益を狙うものではなく定期的に配当収入を得るものと考えましょう」
より少ない資金で分散投資ができる「REIT ETF」
実物不動産を持つことと比べると、低コストで手間もかけずに不動産投資ができるREITだが、さらに手軽に始められる金融商品が「REIT ETF」だ。
「REIT ETFは、REITが発行する投資証券に投資するETFで、具体的には、東証REIT指数やS&P先進国REIT指数などのREITに関する指数に連動するETFです。例えば、東証REIT指数というのは、東証に上場するREIT全銘柄を対象とした時価総額加重型の株価指数です。REIT ETFはREITとはまた違ったメリットがあるので、紹介しましょう」
(1)分散投資ができる
「REIT ETFは、1つの銘柄で複数のREITに投資する商品なので、分散投資の効果が期待できます。例えば、オフィスビルやホテルに投資するREITは景気の影響を受けやすく、賃貸マンションに投資するREITは影響を受けにくいといえますが、これらに分散して投資することができれば、それぞれの魅力を享受しながら、安定的な運用を目指せるのです」
(2)REITより少ない資金で投資できる
「REIT ETFの多くの銘柄が、1口1万~2万円程度で購入できます。なかには10口~100口以上でないと購入できないものもありますが、REITの銘柄1つに数十万円投資することと比べると、より気軽に始められるのではないでしょうか」
(3)分配金を年4回受け取れる
「REITは半期ごとに利益が分配されますが、銘柄によって決算月が異なります。そのため、複数のREITに投資をするREIT ETFでは、分配金を留保しないように年4回分配されることが一般的。銘柄によっては、年6回分配することもあります」
「資産形成」ではなく「定期的な収入」のための手段
2021年9月現在で20銘柄のREIT ETFが東証に上場しており、日本だけでなく海外のREIT市場に投資する商品もある。投資する銘柄はどのように選ぶといいだろうか。
「信託報酬という手数料がかかるので、コストが低いものを選ぶことは大前提ですが、あわせて銘柄によって異なる売買高にも注目してみましょう。いつでも売買できるというETFの強みを生かしたいのであれば、売買が活発な銘柄がいいので、売買高が多いものがおすすめといえます。より利回りの高いものを求めるのであれば、高利回りREIT指数に連動する銘柄も選択肢に入れてみましょう」
そして、「値上がり益を狙うのではなく、定期的に利益を得るものと考えることが大事」と、深野さんは話す。
「REITは『資金を内部留保して会社を成長させる』という概念がない投資なので、長く積み立てたからといって大きな成長が見込めるわけではありません。そのため、若い世代の方が資産形成の目的で投資するなら株式の方がいいと考えられます。REITは定期的な収入を得るための味つけとして、株式や債券での資産形成にプラスするイメージで考えましょう。リタイア世代の方が、定期的に収入を得る手段の1つとして活用するのもいいと思います」
株式投資のように大きな成長は期待できないものの、定期的な収入を得るにはうってつけのREIT。多様なREITやREIT ETFが上場しているので、ぜひ一度利用を検討してみてはいかがだろうか。
(有竹亮介/verb)
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深野康彦
ファイナンシャルプランナー。ファイナンシャルリサーチ代表。FP業界歴33年を誇る。メディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、税金、年金などのお金まわり全般についての相談業務や啓蒙を行っている。著書に『55歳からはじめる 長い人生後半戦のお金の習慣』など。