労災保険に特別加入できるフリーランスも

ウーバーイーツも労災保険加入可能に。保険料や補償の対象は?

提供元:Mocha(モカ)

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2021年9月1日からの法改正で、「自転車を使用して貨物運送事業を行う者」と「ITフリーランス」が労災保険に任意で入れるようになりました。自転車を使用して貨物運送事業を行う者といえば、ウーバーイーツ(Uber Eats)ですね。食事を届けてくれるサービスです。

ウーバーイーツは、コロナ禍において巣ごもり需要を後押しするサービスです。働き方もアプリでオンライン化し、好きな時間に稼働したり、週単位で収入が得られたりするお手軽さが注目され広がりました。では、ウーバーイーツが加入可能となった労災保険とはどのような制度なのでしょうか。補償や保険料を詳しく紹介します。

労災保険ってそもそも何?

労災保険の正式名称は「労働者災害補償保険」といいます。労災というのは、労働中に負ったケガや病気のこと。具体的には、業務中と通勤途中のケガや病気を指します。労災保険では、そうした労働中のケガや病気で治療する際、障害が残った際、死亡した際などに、労働者災害補償保険法で決められた運用ルールにより、保険給付が行われます。

労災保険は、社員を一人でも抱える会社が加入するよう義務付けられ、保険料もすべて会社が負担することになっています。労災保険の保険料は、会社が提供している事業の種類ごとに決められています。

労災保険の対象者となる労働者は、会社から働く対価として賃金が支払われる正社員・パート・アルバイト・派遣社員・契約社員などの人々すべてが含まれます。そして、労災が発生したときは等しく補償されます。ただ、言い換えれば、賃金が支払われない会社の役員や、会社から直接仕事を請け負うフリーランスなどの個人事業主は労働者から外れます。

労災保険に特別加入できるフリーランスがいる

労災保険は労働者を保護するための制度です。しかし、労災保険が補償される対象から外れてしまうフリーランスや個人事業主の場合、たまたま雇用形態が違うというだけで、実際の業務は労働者とほぼ同じということもあります。そうなると、業務上で負ったケガ、病気にかかるリスクは同じと考えられるでしょう。

このような場合、労災保険の「特別加入」をすることで、労災保険の対象として補償を受けられるようになります。

特別加入の対象になる職業はいろいろあります。今回のウーバーイーツとの兼ね合いでいうと、たとえば、個人タクシー業者や個人貨物運送業者は特別加入ができます。自らが保有する自動車やトラック、原付バイクなどを使用し業務を行います。ウーバーイーツの配達員も、自身が持つ自転車、原付バイクなどを使ってサービスを行うため、業務内容が似通っているといえます。

また、ウーバーイーツの配達員は、業務の性質上、注文を早く届けなくてはならないという点、1日のうちで非常に多くの配達をこなす点など、交通事故のリスクにさらされています。そのため、ウーバーイーツの配達員も、労災保険の特別加入の対象に含めることになったようです。

ただし、労災保険の特別加入は任意。フリーランスや個人事業主が自ら保険料を負担することになります。

労災保険の保険料と補償内容

労災保険に特別加入した際の保険料や補償内容を見てみましょう。

特別加入する際の保険料は?

労災保険の保険料を計算する際には、フリーランスや個人事業主である加入者があらかじめ3500~2万5000円の範囲で「給付基礎日額」を設定します。保険料の算出は、以下の計算式を用います。

・保険料の計算式=設定した給付基礎日額×365日×業種ごとの料率

業種ごとの料率は、ウーバーイーツのような宅配代行業は1.2%。ちなみにITエンジニアは0.3%です。

労災保険に特別加入することで年間にどのくらいの保険料を負担するのか計算してみましょう。

(1)給付基礎日額5000円の場合

保険料=給付基礎日額5000円×365日×1.2%=2万1900円

(2)給付基礎日額1万円の場合

保険料=給付基礎日額1万円×365日×1.2%=4万3800円

(3)給付基礎日額2万円の場合

保険料=給付基礎日額2万円×365日×1.2%=8万7600円

このように、給付基礎日額を低く設定したり、高く設定したりすることで、保険料の負担は調整することができます。

●労災保険の補償内容は?

〈1〉療養補償給付

日常生活における病気やケガで健康保険を利用したなら、病院での治療費や薬代は3割の治療費がかかります。しかし、労災で業務中、通勤中の病気、ケガの場合、かかった治療費や薬代が無料になります。

〈2〉休業補償給付

労災により仕事ができない場合の収入保障となります。休業補償は、保険料を計算する際に設定した給付基礎日額を基に支払われます。実際は、給付基礎日額の8割が支払われます。

〈3〉障害補償給付

労災でのケガ、病気が治ったとしても、身体に障害が残った場合に、その障害の程度に応じて障害年金や障害一時金が支払われます。

〈4〉遺族補償給付

労災で亡くなった方の遺族に対し、遺族年金や一時金が支払われます。

〈5〉葬祭料・葬祭給付

労災で亡くなった方の葬祭に要する費用が支払われます。

〈6〉傷病補償年金

労災が原因のケガ・病気となり、治療を開始し1年6ヶ月経過しても、治っておらず、決められた傷病等級に該当した場合に給付金が支払われます。

〈7〉介護補償給付

障害年金・傷病補償年金の受給者のうち、一定の要件を満たし、現に介護を受けている場合に給付金が支払われます。

なお、タクシーの個人事業主、個人貨物運送業者は、住居と就業の場所との往復が不明確なので、通勤途中の災害は適用されません。ウーバーイーツ配達員についても同様となる可能性が高いといえます。しかし、交通事故などのリスクにさらされているウーバーイーツ配達員が労災保険に特別加入すれば、多くの補償が得られます。保険料は自己負担にはなりますが、補償の幅広さは大きなメリットといえるのではないでしょうか。

まとめ

労災保険の特別加入は任意の制度であるため、実際に保険料を個人負担する立場の配達員がどのような選択をするのかは不透明です。

とはいえ、ウーバーイーツが社会に浸透すると同時に、事故に巻き込まれるリスクの大きさも感じられます。労災保険の特別加入の改正は、配達員が安心して業務に取り組めるようにするためのもの。業務中の万が一に備えるためにも、労災保険に入ることが望ましいといえるでしょう。

[執筆:ファイナンシャルプランナー  舟本美子]

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