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投資の視点:中国の規制強化と金融市場

2021年10月号「投資環境レポート」

提供元:野村アセットマネジメント

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野村アセットマネジメントでは、毎月、世界経済や金融市場の注目点を投資環境レポートとしてお届けしています。

10月の投資の視点は、「中国の規制強化と金融市場」です。

<注目点>
●中国の一連の規制強化への懸念から、株式市場を中心に混乱が見られた。規制の対象は幅広いが、その目的は(1)ニューエコノミーへの適応、(2)ビッグデータの管理強化、(3)社会福祉・所得格差の是正、に分類できる。
●特に、社会福祉・所得格差の是正が強調されているのは、中国が政治・経済の両面で転換点にいることを反映している。長期的には規制だけでなく、税制・社会保障を含めた政策の方向性に影響を与える可能性がある。
●経済・金融市場の先行きを考えるうえでは、政府が目指す社会の方向性を見極めることが、これまで以上に重要になるだろう。

中国株式市場の混乱

中国の規制強化への懸念が強まっている。当局の規制懸念による株価下落はこれまでも散発的に見られてきたものの、7月以降も規制強化の流れが続いたことで、国内外の中国関連株に混乱が波及した(図2参照)。
とりわけ厳しかったのは、7月24日に発表された教育セクターに対する規制である。党中央と国務院(内閣)は「義務教育段階の児童の課題負担と課外教育負担減少に向けた意見」という通知で、課外授業を行う学習塾の営利目的での営業を禁じた。この「意見」一つで、1,000億米ドル規模のセクターのビジネスモデルが否定され、米国上場の関連企業株価は暴落した。
その後も、音楽配信企業や食品デリバリー企業に対する独占禁止法違反での罰金・罰則や、国営紙によるオンラインゲームへの批判などを受け、規制強化の対象が次々と拡大することへの懸念が強まり、インターネット関連企業を中心に株価が下落した。

規制強化の目的

突如はじまった規制の波が一時的ではないと捉えた株式市場は正しかったようだ。
8月、党中央と国務院はいわば「規制・統治の5ヵ年計画」である法治政府建設実施要綱を発表した。要綱は、国家安全保障、イノベーション、公衆衛生、文化・教育、民族・宗教、バイオセキュリティ、環境保護、金融リスク防止、独占禁止、外国関連などを規制強化の重要分野として列挙し、今後数年にわたって制度強化を進めるとした。
規制の対象範囲は幅広いが、その目的によって、大きく3つに分けることができよう(図1参照)。

1つ目の目的は、ニューエコノミーに規制を適応させることである。例えば、伝統的産業を念頭に作られた独占禁止法は、プラットフォーム企業がビッグデータを用いて消費者ごとに異なる価格を提示したり、出店企業に他のプラットフォーム企業への出店を禁じるなどの行為を十分に規制することができない。要綱は、既存の規制にはこうした「欠点」があると指摘し、デジタル経済、インターネット金融、人工知能(AI)、ビッグデータやクラウドコンピューティングの法的枠組みの研究を進めると表明している。

2つ目の目的は、企業が抱えるビッグデータの管理強化である。オンラインサービスの拡大によって、一部のプラットフォーム企業は巨大な消費者データを抱えるようになった。これらのデータは国家安全保障の観点からも重要であり、当局は管理の強化に動いてきた。すでに、6月にデータ・セキュリティ法、8月に個人情報保護法が成立しており、2017年6月に施行されたサイバー・セキュリティ法と合わせて、データ関連の法律整備が進んでいる。

3つ目の目的は、社会福祉と所得格差の是正である。当局は、こうした社会問題の解決に規制を活用していく意向のようだ。前述した教育セクターへの規制は、教育コストの高騰に伴う所得格差の問題や社会の不満に対処するものだ。オンラインゲームへの規制も、依存による健康問題の解決を目的としている。これらの規制は、潜在的に多くのセクターが対象になり得る点に注意が必要だろう。

2021年10月号「投資環境レポート」の続きは、こちらからご覧ください。

当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社の見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。

(提供元:野村アセットマネジメント)

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