外国株を買ったら「確定申告」しなきゃいけないって本当?

2020年に東証上場外国株ETF・外国債券ETFに適用された「二重課税調整」とは

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2020年1月の税制改正によって、ETFなどを通じて外国株式などへの投資から得た分配金に対して「二重課税調整制度」が導入されることになった。この制度は、個人投資家にとってメリットがあるという。

具体的にどのような制度なのだろうか。また、なぜ導入されたのだろうか。「二重課税調整制度」の基礎知識について、米国株ブロガーのたぱぞうさんに聞いた。

自動で二重課税が調整される制度

「2020年1月の税制改正までは、外国資産に投資を行い、そこから生じた利益をもとに分配金を支払っている投資信託及びETFは、現地で分配金に対して外国税10%が天引きされ、さらに日本でも配当課税20.315%が引かれる、いわゆる“二重課税”の状態になっていたのです。確定申告で外国税額控除を行えば、現地の課税分を取り戻すことができましたが、かなりの手間がかかります。そこで、外国税が引かれている前提で国内の配当課税を計算するように改正されたのです」(たぱぞうさん・以下同)

2020年以降に組成された投資信託やETFは基本的に二重課税調整制度に対応しており、確定申告が不要になる。ファンド内で自動的に調整されるため、投資家が追加で行うべき手続きなどもないのだ。

「2020年以前にローンチされた銘柄は対応していないこともありますが、比較的新しい銘柄は基本的に対応していると考えていいでしょう。今後は、二重課税調整制度に対応していないと投資家から敬遠されかねないので、対応したものだけが残っていくことが予想されます」

なお、外国資産に投資するETFとひと口にいっても、(1)東証に上場する外国株ETF・外国債券ETF、(2)海外取引所に上場しているETF、と大きく2種類に分けられる。今回の制度改正は(1)の東証上場ETFに関するものである。

東証に上場するETFなどに関しては、下記の日本取引所グループ(JPX)のWEBサイトで対象銘柄を確認できる。

・証券税制について(ページ最下部)

ここ数年で盛り上がりを見せている外国株投資

そもそも、これまで二重課税が調整されていなかったのは、なぜなのだろうか。

「個人投資家にとって、外国株投資が一般的ではなかったからだと考えられます。ほんの4~5年前まではマイナーな投資で、一部のベテラン投資家が一般口座で売買するようなものでした。しかし、ここ最近では米国株に圧倒的なリターンが見られるようになって、外国株、特に米国株に注目する人が増えていったのです」

巨大IT企業のGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)を中心に、アメリカ企業が大きく成長していることは、投資をしていない人でも実感している部分だろう。

「アメリカの代表的な指数の1つであるS&P500は、直近10年間のリターンが年率約17%もあり、ざっくりとした計算ですが資産が約4倍になったのです。同じくアメリカの指数のNASDAQは10年で約7倍のリターン。日本の指数のTOPIXや日経225はそこまでのリターンを示せていないので、投資家の目線が変わってきたのだと思います」

国内での外国株、主に米国株投資が一般化したことを受け、二重課税調整制度が導入されたという見方だ。

「今回の改正で東証上場の外国株ETF、外国債券ETFへのハードルがぐっと下がったので、外国株・債券に投資する人はさらに増えるのではないでしょうか。いままで外国株が気になっていたけど、確定申告が必要だから投資していなかったという人も、始めない理由がなくなったといえます」

恩恵を受けやすくなったのは「各種控除を受けている人」

たぱぞうさん曰く、「今回の二重課税調整制度導入に関して、投資家におけるデメリットはない」とのこと。

「自動的に税金を調整してくれる制度なので、デメリットはまったくないですし、すごく大きなメリットといえるでしょう。特に、住宅ローン控除などを利用している最中の人にとっては、より意味のある制度だと考えられます」

これまでは海外の取引所に上場している外国株などに投資した場合、配当金及び分配金について二重課税となっており、払い過ぎた税金を取り戻すには確定申告で外国税額控除が必要だった。しかし、確定申告で還付される税金は、1年間に支払った所得税が上限となる。そのため、住宅ローン控除などで所得税のほとんどを還付されているとしたら、外国株投資で払い過ぎた税金は申告しても戻ってこない可能性があるのだ。

「改正によってファンド内で二重課税を調整してくれるとなれば、個人の所得税は関係なくなるので、税金を不要に支払わなくてよくなります。ほかにも、外国株投資をしている年配の方で、年金にかかる所得税だけでは少なく、払い過ぎた税金を取り返せないというケースもありましたが、二重課税調整制度に対応した銘柄に投資すれば、その問題も解消できるのです」

これからは安心かつ簡便な外国株投資を行う心得の1つとして、「二重課税調整制度に対応した銘柄を選ぶ」ということも挙げられるだろう。

「税制改正に合わせて、より投資しやすい東証上場ETFが出てきています。例えば、S&P500に連動するものであれば、『iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF(1655)』(※)『MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(2558)』『NEXT FUNDS S&P 500 指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信(2633)』は、信託報酬0.1%以下なので、投資しやすいですよね。NASDAQに連動するETF『MAXISナスダック100上場投信(2631)』は信託報酬が0.22%(税込)ですが、同様の公募投信だと信託報酬が最低レベルで0.4%台なので、ETFの方が魅力的だといえます」

※iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF(1655)は2022年6月22日以降は年0.165%(税抜0.15%)程度となる予定

投資家のニーズに合わせて、制度も銘柄の特徴も変化してきている。外国資産への投資でついて回る確定申告での外国税額控除。この手間が省ける点は投資初心者にとっては大きく、東証上場の外国ETFへのハードルが下がったといえそうだ。

(有竹亮介/verb)

・当記事は、信頼できると考えられえる情報に基づいて作成していますが、内容の正確性や完全性を保証するものではありません。
・当記事は、2021年9月末現在施行されている法令および施行が確定している法令に基づき作成しておりますが、今後の税制改正等により、内容が変わることがあります。
・具体的な税務上の取扱い等につきましては、税理士や税務署等にご相談ください。

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