投資信託のトレンドが分かる!
2021年9月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2021年9月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「国内株式ファンドが7ヵ月ぶりの流出超」
9月の資金流出入動向は10ヵ月連続の流入超となった。流入額は約5,220億円と前月(約4,500億円) から約720億円増加した。
資金流入では、外国株式への巨額の流入が続いており、当月の流入額は約6,660億円と前月(約4,570億円)から2,000億円以上増加した。主に米国株式やグローバル株式ファンドへの資金流入の増加が寄与した。他には、国内債券や複合資産も前月に引き続き資金流入超が継続した。
資金流出では、国内債券を除くすべての債券カテゴリー(外国債券、エマージング債券、ハイイールド債券)、不動産投信、エマージング株式が前月に引き続き流出超となった。加えて、国内株式は前月の流入超(約260億円)から一転して約1,510億円の流出超となった。国内株式市場の上昇による影響から利益確定売りの動きが強まり、アクティブ・パッシブ問わず大幅な資金流出となった。
個別ファンドでは、「アライアンスB・米国成長株投信D」(アライアンス)(約1,127億円)が資金流入で3ヵ月連続の1位となった。2位は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(三菱UFJ国際)(約494億円)、3位は「TRプライス米国割安優良株式ファンド B(ヘッジなし)」(Tロウプライス)(約482億円)と続いた。
(図表1)主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
2.投信市場のパフォーマンス動向
「国内株式カテゴリーが2ヵ月連続首位」
9月の金融市場は、月初は株式・債券とも上昇したものの、各国での景況感の減速が強まったことなどから中旬以降は上値の重い展開となった。
株式市場は高安まちまちとなった。外国株式は、月初には上昇したが月半ばには中国不動産開発大手の債務不履行問題が顕在化したことや、米国政府の債務上限問題や米長期金利の上昇が嫌気されたことなどから、前月末対比で下落した。一方、国内株式は新型コロナウイルス新規感染者の減少による早期の経済正常化が意識されたことや、新政権の政策への期待感などから、前月末対比で上昇した。
債券市場は下落(金利は上昇)した。米欧では、過度な物価上昇の長期化が懸念される中、中央銀行による資産買い入れの縮小が開始されるとの見方が広がり、早期利上げ観測が高まったことから、長期金利は前月末対比で上昇した。一方、国内金利は米金利上昇を受けて上昇したものの、日本銀行により金融政策の現状維持(金融緩和の継続)がアナウンスされたこともあり、米欧に比べ小幅な上昇にとどまった。
為替市場は、米ドル・円は円安、ユーロ・円は円高となった。日米の金利上昇ペースの違いから金利スプレッドが拡大したこともあり、米ドル・円は前月末対比で円安となった。一方、欧州では中国不動産開発大手の債務不履行問題による中国国内の景況感の悪化や域内各国での株価下落などからユーロ売りが進み、ユーロ・円は前月末対比で円高となった。
これらを背景に、当月のリターンは、カテゴリー別では国内株式が2ヵ月連続でリターン首位となった。新型コロナウイルス新規感染者数の減少や、緊急事態宣言解除による経済正常化への期待及び新政権の政策への期待が高まったこともあり、前月よりプラス幅を拡大した。一方、外国株式およびREITは、中国不動産開発大手の債務問題や米長期金利上昇などの影響を受け、前月から一転してマイナスとなった。
(図表2)パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「設定本数は増加するも設定額は低水準」
当月の新規設定本数は18本、新規設定額は約310億円となった。設定本数は前月(26本)と比べ減少したが、設定額は前月(86億円)を上回った。ただし、設定本数、設定額ともに、直近1年間の平均(本数22本、設定額920億円)と比較し低調な水準となっている。
当月の新規設定ファンドで最も資金を集めたのは「TRプライス米国割安優良株ファンドB(ヘッジなし)」(Tロウプライス)で、残高は約480億円となった。
(図表3)新規設定金額、設定本数の推移
最後に、9月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
(図表4)資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)