アメリカに行かなくても、いま、アメリカが買える
東証上場の米国ETFが変貌中!
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昨今、個人投資家の間では米国株式への関心が高まっています!
ETFを使って米国株に投資するには、「東証上場の米国ETFを購入」「米国市場に上場するETFを購入」の2種類の方法があります。
「東証上場の米国ETF」は日本時間に円で取引できること、「米国市場に上場するETF」は現地時間に現地通貨(主に米ドル)で取引できることが強みです。(下表)
どちらの手段で米国株に投資するかを決めるうえで、最も考慮したい要素の一つが取引コストですので、本記事では、一定の仮定を置いてトータルでのコストを計算してみました。
今回、実は「東証上場の米国ETF」にも徐々に優位性が現れてきていることをご紹介したいと思います。
(米国市場に上場するETFの動向については、こちらの記事も併せてご参照ください。)
板の厚みが増している?!スプレッドコストは低下
昨今、米国の各指数に連動する東証上場のETFの多くは、板の厚みが増し、売り買い価格差(スプレッド)が改善しています。
その背景にあるのが、2018年に東証が導入したETFのマーケットメイク制度ver1.0(対象銘柄はこちら)です。ETFを取引する際には流動性、つまり、「買いたいときに買いたい値段で買える」「売りたいときに売りたい値段で売れる」状態が確保されていることが重要です。
制度導入前には、米国指数に連動するETFの中にも流動性の低い銘柄が存在しており、投資家にとって利便性があまり良くない状態でした。
この課題を解決するべく、マーケットメイカーと呼ばれる「投資家の取引相手となる」専門業者、それもアメリカでも多くの銘柄で投資家の取引相手となっている世界有数の業者を誘致し、彼らが買い注文と売り注文を出し続けることで、多くの銘柄で、投資家はいつでも売買ができるようになりました。
東証は、一定の効果が見られていることを確認した後、さらなるETFの利便性向上策として、個人投資家だけでなく機関投資家であっても十分なサイズの取引が出来るよう、各アセットクラスを代表する銘柄を育成するべく、2019年に東証はマーケットメイク制度Ver2.0(対象銘柄はこちら)を導入しました。
マーケットメイク制度Ver 2.0では、マーケットメイカーに対し大き目のサイズを提示するオブリゲーション(義務)を設定しており、例えばS&P500に連動するETFにおいては、常時1億円以上かつ、0.2%以内のスプレッドで注文を提示する義務が課せられています。
それでは、実際のデータを見ていきましょう。
こちらは2021年10月8日10時時点の2521上場インデックスファンド米国株式(S&P500)為替ヘッジありの板の状態です。非常に流動性が高いことがお分かりいただけるかと思います。
最良気配における提示数量は売り買い合計で150万単位、23億円を超えており、買い気配・売り気配の差、すなわちスプレッドは、呼値の最小単位である1円となっています。
これは、10億円を超えるような注文でも、売買したいときに希望する値段で売買できることを意味し、板として理想的な状態であると言えます。
トータルコストではどちらが有利?
それでは、コストの観点では「東証上場の米国ETF」、「米国市場に上場するETFを購入」、どちらに優位性があるのでしょうか。
ETFに投資をした際にかかるトータルコストは、スプレッドコスト+信託報酬等の保有コスト+売買手数料(+為替手数料:海外上場ETFのみ)の合計となります。
為替手数料とは、円をドルなど外国の通貨に交換する時に金融機関に支払う手数料であり、海外市場に上場するETFを売買する際に必要となります。
一例として、S&P500に連動するETFを50万円分買い付け、1年間保有する場合のトータルコストをそれぞれ試算・比較してみたいと思います。
東証上場の米国ETF(1)の場合、スプレッドコスト(0.104%)・信託報酬(0.12%)・売買手数料(0.059%)の合計0.283%となり、50万円を買い付けた場合、1年で1,415円のコストがかかります。
一方、海外上場の米国ETF(VOO)(2)の場合、スプレッドコスト(0.004%)・信託報酬(0.03%)・売買手数料(0.483%)・為替手数料(0.152%)の合計0.669%となり、同じく3,345円のコストを要する結果となりました。
(1)2021年8月20日時点でS&P500に連動する10銘柄を対象とし、スプレッドコストは2021年8月16日から8月20日の間の平均値、信託報酬(年間)は2021年8月20日時点での平均値。売買手数料は、主要オンライン証券8社における約定制プランにおいて、2021年8月20日時点で50万円を購入した際の手数料率の平均値。
(2)スプレッドコストおよび信託報酬(年間)は2021年8月20日時点での値。売買手数料および為替手数料は、主要オンライン証券3社において、2021年8月20日時点で50万円を購入した際の手数料率の平均値。為替レートは同日の値(1USD=109.77JPY)を採用。
このように、スプレッドコストと信託報酬については「海外上場の米国ETF」に分がありますが、売買手数料および為替手数料も含めて考えると、トータルでは「東証上場の米国ETF」に優位性があることがお分かりいただけるかと思います。
上記の例では、同一対象に投資する場合「東証上場の米国ETF」のほうが、50万円あたり約1,930円のコストメリットがあるという結果になりました。
昨今、特に人気が高まっている米国株を分散投資先としてポートフォリオに組み込まれている方、今後の投資をご検討されている方におかれましては、東証上場の米国ETFも選択肢の一つとして検討してみるのもよいかもしれません。