いち早く復職することで「収入」&「年金」UP!

FP解説! おとな女子のマネー不安解消法~介護離職編~

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将来の生活に対して、漠然とした不安を抱いている人は多いだろう。特に女性は男性に比べて子育てや親の介護などで仕事を離れる期間が多い傾向にあり、男性ほど金銭的な余裕が持てないケースが見受けられる。

そこで、オーバー40歳のおとな女子が老後に向けて準備しておくといいことをまとめた書籍『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)の著者で、ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士の井戸美枝さんに、おとな女子が抱えがちな不安とその解消法を教えてもらった。

おとな女子が抱える問題の1つ「介護離職」

「おとな女子、特に50代に入った方だと、親が70~80代になって介護が必要になることで、仕事を辞めてしまうケースが多い印象です。2017年のデータではありますが、総務省の『労働力調査』によると、年間の介護離職者約10万人のうち、女性が約7割を占めていました。男性と比べて、女性の介護離職は多いのです」(井戸さん・以下同)

親の介護のためとはいえ、50代で職を失うことはリスクが大きいという。

「20代から30年ほど働いてきて『そろそろ休みたい』と感じたり、迷惑をかけた親のためにという思いを抱いたりして、介護をきっかけに仕事を辞めたくなる気持ちはわかります。しかし、そこで辞めてはダメ。『親のために』と思いすぎるのも良くありません。なぜなら、介護はゴールが見えないからです」

子育ても、介護と同様に仕事を辞める理由として挙げられるが、子どもは成長とともに進学や自立のときを迎えるため、復職などの予定を立てやすい。しかし、介護は終わりが決まっているわけではないため、その後の生活をスケジューリングしにくいのだ。

「親の介護が終わった先には、自分だけの生活が待っています。それを考えたら、介護と仕事を両立して、自分のためのお金も確保しなければいけません。親の介護が始まる前に、50~60代にかけてどう働いていくか考えないと、後々になって自分が困ってしまうかもしれません」

そのためにも、情報収集が必要とのこと。お金にまつわることは、自分で情報を集めにいかないことには知識も増えていかないもの。

「インターネットが普及して情報が手に入りやすくなりましたが、一方でネット上の広告などは自分の興味に紐づけて表示されるため、偏った情報しか入ってこなくなっています。なるべく幅広く情報を得るためにも、新聞に目を通すなど、工夫しましょう。働きに出て、自分と考えの違う同僚と話すことも、新たな知識を仕入れるきっかけになります。受け身にならずに自ら動くことを意識すると、自分を取り巻く環境も変わっていくでしょう」

介護と仕事を両立するための“備え”が重要

現在30~40代で、今後親の介護をする可能性がある場合、介護と仕事を両立できるように準備することが重要とのこと。

「介護休業や介護休暇を取得しやすく、その後の復職もしやすい職場を選ぶことが第一です。今なら、副業もいいでしょう。副業を認める会社も増えていますし、なかにはタニタのように社員の個人事業主としての仕事を支援する制度を整えている会社も出てきています。会社で働きながら、会社以外のつながりの仕事を見つけていくことで、親の介護が必要になったときにフルタイムで働いている会社を辞めることになったとしても、ほかの収入を確保できる可能性が高くなるのです」

井戸さんの相談者のなかには、経理の仕事をしながら理学療法士の資格を取り、40代でリラクゼーションサロンを開業した女性がいるという。その人はサロン開業後も、経理の仕事を外注で請け負っていたため、コロナ禍でサロンの売上が伸びないなかでも、収入がゼロになることはなかったそう。

開業や起業と聞くと大変そうに感じるかもしれないが、そこまで大規模なことでなくてもいい。例えば、会社で働きながら週末だけ地元のPR活動を手伝う、趣味で作ったアクセサリーをオンラインショップで売る、隙間時間に料理写真をSNSに投稿して広告収入を得るなど、収入を得る方法はいくらでも考えられるのだ。

「介護離職をして収入がゼロになるのと、小さな仕事を続けて月数万円でも入ってくるのとでは、しんどさがまったく違います。会社に雇われることだけを考えるのではなく、できることややりたいことにチャレンジしてみることも大切です。ちょっとでもお金が入ってくると不安感が解消されるので、親の介護が始まる前にいろいろなことを試してみましょう」

働き続けることで“年金UP”を目指す

既に介護離職してしまっている場合は、とにかく
仕事を探すことを優先すべきとのこと。

「正直なところ、40~50代になってからの再就職は難しいものです。選り好みせずに、職種の幅を広げて探しましょう。パートからでもOKなので、将来的に正社員になり、70歳まで働くという覚悟を持ってほしいところ。親の介護は介護保険サービスや自治体独自のサービスなどをフル活用して、仕事との両立を目指せるとベストです。担当のケアマネージャーに相談し、仕事との両立が可能なケアプランを作ってもらうことが、復職の第一歩になるでしょう」

50代以降だとしても、復職することで老後の年金額を増やせるメリットもあるようだ。

「日本の公的年金制度は、『国民年金』と『厚生年金』の2階建てで、ポイントとなるのが『厚生年金』です。『国民年金』は国民全員が20歳から60歳までの40年間加入するもので、未納期間さえなければ満額受け取れます。一方、『厚生年金』は会社員や公務員が加入するもので、収入が多く加入期間が長いほど、65歳以降に受け取る年金が増えます。また、『厚生年金』は70歳まで加入できるので、定年後も会社員として働き続ければ、年金額を増やすことができるのです」

定年後も年金を増やすことができるため、井戸さんは「70歳まで働くという覚悟を持ってほしい」と話していたのだ。定年後も働き続けることで老後の年金がどの程度増えるか、計算した目安がこちら。

定年後に働く年数と年収に応じて増える年金額の目安
※60歳以降、会社員として働き、厚生年金保険に加入したケース

出典/『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』井戸美枝

「働くことは、今現在の収入を増やすだけでなく、将来の年金を増やすことにもつながります。会社員として厚生年金に加入し、できるだけ長く働き続けることが有効な手段だといえます。家族を理由に仕事を辞めてしまうのではなく、介護と仕事を両立できる道を探し、将来の自分自身をサポートできるといいでしょう」

収入ゼロでも生活していけるほどの貯えがあれば別だが、少しでも老後に不安を覚えるようであれば、働くことは必須といえるだろう。得意なことややりたいことを仕事につなげられるよう、さまざまなことにチャレンジする姿勢も大切といえそうだ。
(有竹亮介/verb)

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