ポイントは「家計の見直し」と「つみたてNISAの活用」

FP解説! おとな女子のマネー不安解消法~貯金ゼロ編~

TAGS.


より現実的に老後を意識し始める40~50代。定年までの残りの期間で、いかに備えていくかが重要になってくるだろう。

「実は、オーバー40歳女性のおひとりさまで貯金ゼロという方が、意外と多いんですよ」

そう教えてくれたのは、オーバー40歳のおとな女子が老後に向けて準備しておくといいことをまとめた書籍『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)の著者で、ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士の井戸美枝さん。

もし、40歳を超えて貯金ゼロの場合、どのように老後の準備を始めたらいいだろうか。井戸さんに具体的な解決策を聞いた。

貯金ゼロ脱出の第一歩は「収入と支出の見直し」

「オーバー40歳で貯金ゼロの女性は、実家住まいで生活費を親任せにしていたという方が多い印象です。実家住まいは決して悪いことではありませんが、家賃などがかからないため、収入がすべて自由に使えるお金になってしまい、貯める必要性を感じにくいのです。また、食費や水道光熱費を把握していないことも問題といえます」(井戸さん・以下同)

実家住まいで貯金をしてこなかった人が不安を感じるタイミングは、両親のどちらかが病気になったときが多いとのこと。

「いずれ親はいなくなるということを実感して、不安を覚える人は多いと思います。そうなったら、まずはお金の使い方を改めるため、収入と支出を見直すことが大切です。4つのステップで確認しましょう」

(1)使えるお金を書き出す
月々の給与と税金・社会保険料など控除されるお金を書き出し、ひと月で使える金額を確認する。

(2)暮らしに必要な額を知る
日々発生する食費や水道光熱費、通信費などをメモしていき、1カ月分の生活費を把握する。

(3)自分に合ったお金の使い方を考える
使えるお金と生活費を照らし合わせて、ひと月の予算を立て、節約できそうな項目を検討する。

(4)大きな支出があることも予定しておく
日々の生活費以外に、通院や入院、親の介護、家のリフォームなど、想定される大きな支出に備える。

「浪費を続けたまま定年を迎えると、収入は減るのに支出を減らせず、老後破綻のリスクを高めてしまいます。生活を見直し、収入と支出のバランスを取ることが重要です。実家が持ち家であれば、親の死後も家が残るので住居費はかかりません。しかし、日々の生活費や家の修繕費は発生するということを意識しましょう」

現役で働いている現在は貯金がなくてもなんとかなるとしても、いずれは貯えが必要になるときが来るという。

「定年前後で収入が減ったり、病気になって働けなくなったりするリスクは誰にでもあります。そのような事態に備えて、お金はストックしておくべきなのです。支出を見直して節約できた分のお金は、貯金に回しましょう」

貯金を継続させるコツは「先取り」

貯金ゼロのおとな女性が、老後の資産形成のためと思い、ついついやってしまうことがあるそう。

「老後に不安を覚えると、なぜか医療保険に入る方が多いのです。いざというときのために医療保険はあっていいものですが、貯金がないのであれば、保険よりも貯金を優先すべきといえます。医療保険は、入院や手術をしなければ保険金が下りませんが、貯金であれば医療費以外にも使えます。あらゆるリスクに備えるためにも、保険に加入する前に貯金をしましょう」

月々の貯金額は多いに越したことはないが、無理をすると続かなくなるため、まずは収入の15%程度を貯金に回せるといいとのこと。例えば、月々の手取り額が20万円であれば、3万円を貯蓄に回すイメージだ。

「給与が振り込まれたら、貯蓄に回すお金を先に引き出して分けたり、別の口座に移したりする『先取り貯蓄』をすると、継続しやすくなります。また、貯金用のお金から5000円や1万円でもいいので、『つみたてNISA』を始めるのもいいでしょう。個人年金保険などでもいいのですが、税金がかかってしまうので、非課税の『つみたてNISA』の方がメリットが大きいと考えられます」

低コスト・低リスクで始めやすい「つみたてNISA」

「つみたてNISA」とは、最長20年間、年間40万円まで非課税で積立投資ができる制度のこと。日本在住の20歳以上が対象となるため、40代でも50代でも今後20年間利用できる。

「老後の資金を形成するのであれば『iDeCo(個人型確定拠出年金)』の方が向いているのですが、積み立てられるのは60歳までで、60歳以前は引き出せないという制限があるので(※)、投資に慣れていない方であれば『つみたてNISA』の方が始めやすいでしょう。投資というとリスクが高いと感じるかもしれませんが、『つみたてNISA』で投資できる商品は金融庁が定めた基準を満たした比較的低コスト・低リスクの投資信託に限定されているので、そこまで心配しなくても大丈夫です」

※2022年5月から「iDeCo」の加入可能年齢が65歳までに引き上げられる予定。

「つみたてNISA」は、少額から運用できる投資信託が揃っているため、毎月数千円から始められる。そして、投資で得た運用益にかかる税金(20.315%)が発生しないため、将来的に金額が大きくなることも期待できる。

「投資初心者であれば、日経平均株価やTOPIXといった指数と同じ値動きを目指す“インデックス型”の投資信託から始めるといいでしょう。市場全体に分散投資するものなので、リスクが比較的低いと考えられます。『つみたてNISA』の口座を開く金融機関も、インデックス型投資信託が充実しているところをチェックしましょう」

ただ貯金するよりも、非課税で運用益がプラスされる可能性がある「つみたてNISA」の方が老後の備えとして安心感があるといえるだろう。「ポイントは投資であることを意識しないこと」と、井戸さんは話す。

「購入した商品の日々の価格の変動を気にすると、心配になってしまいますが、『つみたてNISA』は毎月決まった日に定期的に積み立てていくので、購入タイミングを見計らわなくていいという特徴があります。購入する日が決められているので、逆に狙った価格で購入することができませんし、その時の価格がいくらなのかは徐々に気にならなくなっていくものです。積立貯蓄と同じだと思えば、肩の力も抜けるでしょう。また、お金が必要になればいつでも必要な額を引き出せるので、ライフプランに合わせて資金を活用できます。最初は先取り貯蓄のすべてを投資に回すと不安に感じるでしょうから、貯金も確保しつつ、その一部のお金で『つみたてNISA』を活用するといいでしょう」

オーバー40歳でも、仕事を続けて家計を見直し、余剰金を貯蓄や投資に回すことができれば、老後の生活を過度に不安視しなくても良くなるかもしれない。まずは、貯金ができない理由を明確にするところから始めてみよう。
(有竹亮介/verb)

用語解説

"※必須" indicates required fields

設問1※必須
現在、株式等(投信、ETF、REIT等も含む)に投資経験はありますか?
設問2※必須
この記事は参考になりましたか?
記事のご感想や今後読みたい記事のご要望などをお寄せください。
(200文字以内)

This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

注目キーワード