子育てにまつわるお金の話

金融教育を受けた自覚がある人はたったの7.2%!?

子育て世帯必見! 日本と世界の金融教育の現状

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今の子どもたちが大人になり家計を管理する頃には、“お金の知識”は必須になることだろう。日本でも2020年から順次進んでいる学習指導要領の改訂に伴い、学校教育に金融商品での資産形成の視点が加わることになり、金融教育の注目度が高まっている。

つい最近始まった印象の金融教育だが、日本では2005年に学校における金融教育の推進が始まったそう。それから15年以上の時が経ち、日本の金融教育はどの程度進んだといえるだろうか。家庭におけるお金の教育の普及に取り組んでいるファイナンシャルプランナーの原田幸子さんに金融教育の今について聞いた。

より良い生活を送るために必要な「金融教育」

「日本で学校での金融教育の推進が始まったのは、“金融元年”と呼ばれる2005年。ペイオフ全面解禁があった年で、国民自身が情報を得て金融経済に向き合っていかないといけないという流れが生まれ、平等な教育を受けられる学校教育にも金融の観点が組み込まれていったのです。2007年には、金融広報中央委員会が金融教育のフレームワークとなる『金融教育プログラム』を発行しました」(原田さん・以下同)

「金融教育プログラム」とは、小学校・中学校・高等学校における金融教育のあり方や指導計画例を紹介している金融教育の体系書。そのなかで、日本における金融教育は以下のように定義されている。

金融教育は、お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育である。

定義で示されているように、金融教育はただお金の仕組みを教えるものではない。「金融教育プログラム」では、「生きる力」「自立する力」「社会とかかわり、公正で持続可能な社会の形成を意識し行動する力」「合理的で公正な意思決定をする力」「自己責任意識」「お金と向き合い、管理する力」を養うことを目的とすると記載されている。

「現代社会で生活をしていくうえで、お金は欠かせないものなので、より良い生活をしていくためには金融教育が必要だといえます。これらの力を養うため、『金融教育プログラム』では、『生活・家計管理』『金融や経済の仕組み』『消費生活・金融トラブル防止』『キャリア教育』という4つの分野で、小学校低・中・高学年、中学校、高等学校それぞれに学ぶ内容や目標を規定しています」

「金融教育プログラム」は2016年に全面改訂が行われ、2021年3月には新しい学習指導要領に合わせて一部改訂が行われている。

金融教育の時間数は「年間1~5時間程度」にとどまる

「新しい学習指導要領で充実させる教育内容の1つに『消費者教育』が明記され、2022年度の成年年齢18歳への引き下げや、キャッシュレス社会の進行、将来の資産形成といった社会や経済の状況を踏まえた新たな学習項目が追加されました。例えば、中学校でクレジットカードの三者間契約について、高等学校の家庭科で株式、債券、投資信託といった金融商品での資産形成の視点が盛り込まれています。そのため、世の中的にも金融教育が注目され始めたのだと感じますが、実際はそれ以前から推進されていました。ただ、さまざまなデータを見る限り、まだまだ課題は多い状況といえます」

金融経済教育を推進する研究会による、2014年4月の全国の中学校・高等学校の教員4462人を対象とした「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」によると、約4割の教員が「金融教育に関する教科書の記述が不十分(またはやや不十分)」と回答している。

●現在の経済事情と比較して、十分な内容が教科書に記述されていると思いますか。
十分である 14.2%
やや十分 46.5%
やや不十分 32.1%
不十分である 5.7%
無回答 1.5%

ちなみに、特に不十分な内容として「クレジット、ローン、証券など」という回答が多かった。今回の改訂での改善が期待されるところだ。

「2014年のデータではありますが、現在も状況はそこまで大きく変化していないと捉えています。また、同調査で約7割の教員が金融教育を行っているまたは行ったことがあると回答しているのですが、実際に行った時間数は、中学1・2年生で『0時間』、中学3年生から高校3年生で『1~5時間程度』がもっとも多かったのです。教師によっても感覚に差があり、継続的な取り組みができていないという課題が見えました」

一方で、9割以上の教員が「金融教育は必要である」と回答。必要性は感じながらも、教材や時間が不足しているため、金融教育まで手が回らないという現実があるといえそうだ。

「金融広報中央委員会が全国の18~79歳2万5000人を対象に行った『金融リテラシー調査(2019年)』では、金融教育の経験について、日本とアメリカで比較しています。日本で金融教育を受けたことがある人が全体の7.2%にとどまったのに対し、アメリカは全体の21%。金融教育を受けたことを自覚している日本人は少なく、アメリカと比べても遅れていることがわかります」

社会全体で金融教育を後押ししているアメリカ&イギリス

金融教育の経験者が比較的多いアメリカでは、日本とは異なる教育制度となっているようだ。

「アメリカには日本の学習指導要領のような全米共通の教育課程はなく、州や学校によって異なるようです。企業や団体による金融教育支援が活発で、特にNPO法人ジャンプスタートが提供する金融教育のフレームワークを導入する学校が多いようです。ジャンプスタートが広めている枠組みが『パーソナル・ファイナンス(個人資産)教育』で、幼児期から高校卒業までを対象にしています。10歳くらいで、投資をする理由や単利・複利について学ぶそうです」

「パーソナル・ファイナンス教育」は、「支出と貯蓄」「信用と債務」「雇用と収入」「投資」「リスク管理と保険」「金融上の意思決定」という6つの分野に分けて、教育内容や目標が設定されているという。

「アメリカではジャンプスタートをはじめ、多くの企業や団体が金融教育の無料オンライン教材を作成し、学校でも個人でも自由に活用できるようになっているようです。サブプライムローンやクレジットカード破綻などの社会的問題を受けて、生きていくために必要な生活に密着した実践的スキルを身につけることが目標とされています」

アメリカと同様に金融教育が活発化している国が、イギリス。イギリスは日本と似ていて、国で共通のカリキュラムがあるようだ。

「イギリスでは2002年から必修科目となった『シチズンシップ』において、市民として生きていくための基礎の1つとして金融経済が含まれています。2014年に公表された全国共通の教育課程である新ナショナル・カリキュラムでは、数学でも金融教育を取り上げることが示されました。具体的には、利率の計算を行うようです。また、NPO法人ヤング・エンタープライズ・アンド・ヤング・マネーが作成したフレームワークも採用されています。学習指導要領に沿う形で、金融教育プログラムが存在する日本と似た形式といえます」

イギリスのフレームワークでは、「お金の管理の仕方」「批判的な思考のできる消費者になる」「リスクと感情の管理」「金融が人々の生活で果たす役割」という4つのテーマに沿って目標が設定されているそう。

「イギリスでは3歳から金融教育を受けることを推奨していて、3~5歳の時点で『お金の使い方』『商品の選択と支払』といった学習目標が設定されています。日本の『金融教育プログラム』だと小学校低学年で学ぶ内容に近いといえます。また、2009年から小・中学生を対象に、お金の知識やスキルを得るための全国的な活動週間であるマイマネーウィークという取り組みも実施されています。学校を通じて参加できるので、子どもにとってもハードルの低い学びの機会といえます。全体的に日本より進んでいる印象があります」

アメリカやイギリスと比べると出遅れている印象の日本だが、金融教育の成果が出るのはもう少し先の話。学習指導要領の改訂によって、学校での金融教育が加速することを期待しつつ、家庭でも親子でお金の話題を増やし、学びの機会を作っていけるといいだろう。
(有竹亮介/verb)

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